ナラノチャイロコガネ[Proagopertha pubicollis]
2009.5.4 檜山支庁南部
分布は北海道、本州、隠岐、四国、九州。
体長は10㎜前後。
今年最初のターゲットはこのコガネ!
一般的には馴染みのないコガネムシだと思う。
なぜ今回、このコガネをターゲットにしたかと言うと、
2007年の同じ時期、河川敷を飛び回る♂を偶然見つけた事に始まる。
初めは同定に自信が無く、当ブログに写真を載せる勇気もなかった。
それは当時持っていた資料の中に北海道に分布している事を示す情報がなかったため。
半年くらい保留にして、クンバンさんを通じてF岡先生に同定してもらったところ、
本種で間違いない事が判明。
そしてほぼ同時期に「日本産コガネムシ上科図説2」が出版され、
それには分布情報に北海道が記載されていた。
「もしかして北海道初記録?」という淡い期待は打ち砕かれたが、
その後、北海道の記録の元となった資料を入手し、よく読んでみると、
自分が採集した場所と同じ河川の記録だったのだ。
その資料にはPTで 14~18.Ⅵ.1997、1♀ 採れた事が載っていた。
また、「北海道南部に生息しているが個体数は少ない様である。」との一文も。
それならば、もう一度自分の目で再確認し、
できることなら分布地をある程度把握したいと考え、
今回の道南ツアーとなった訳です。
この時期、北海道は長い長い冬が終わり、人々は「桜だ、桜だ!」と色めき立つ。
しかもGWと重なり、桜の名所が多く開花の早い道南地方へは大挙して移動する。
それほど時間のない自分にとっては大渋滞に巻き込まれる事を考えると億劫になる。
しかし、今回は渋滞を覚悟して行って来ました!
さて、ナラノチャイロコガネは図説によると以下のように記述されている。
「春先の穏やかな晴天の日中に、♂は地表近くを敏速に飛び回り、
枯れ枝や潅木などに好んで止まる。」
一昨年、採集した時も似たような状況だった。
まずは、前回のポイントで再確認しようと思ったのだが、
車で降りれ、かつ上述の条件を満たすと思われる環境を見つけたので、
早速探索してみた。
時刻はAM9:00を過ぎ、ぐんぐんと気温が上昇。
この時期としては高い気温で、既に16℃以上になっていた。
まずはカメラだけ持って歩くと、
ヨモギなどが生え始めた草地の地上15cmをプ~ンと飛び回る小さな甲虫を発見。
これを追跡するも、なかなか止まってくれない。
急いで車に戻り、網を手にして再び草地歩くと、
地面から湧き出るように小さな甲虫が飛び出てくる。
地面スレスレを飛ぶため、枯れたヨモギの茎などが邪魔で掬い辛かった。
といっても、かなりの数が飛んでいるので、やたらめったら振ると2頭入った!
このコガネ、食葉群のコガネムシの中で最も小さい部類だろう。
マメコガネよりも一回り小さい。
この時期に、こんな場所には中々来る事もないので、
少しだけ多めに採ってみた。
しかし、これが全て♂であった。
しかも全ての個体が頭楯に土をつけている。
発生したばかりだったのだろうか?
それにしても♀はどこ?
まだ発生して居ないのか、飛ばないのか?
とにかく♀は見つからなかった・・・。
採集数は十分満足なので、撮影に専念してみる。
けど、飛んでいる個体を撮るのは難しい。
偶然、地面から飛び出そうとしている個体が居た。
ゆっくり近づき、パチリ!
これもやっぱり♂。
♂♀の違いは、触角片状部の大きさ。
大きいのが♂である。
よく目を凝らすと、地面で結構な個体数を見ることができた。
一度驚くと、擬死行動?し、暫く動かなくなる。
目的は採る事だけではなく、ある程度の分布範囲を押さえること。
撮影はこれくらいにして、一昨年確認したポイントへ。
以前と全く変わらない環境であったが、1頭も飛んでいない。
気温、風、時間帯もさほど変わらない。なぜ?
この後も、同じ河川の河川敷を12時頃まで何箇所か歩いてみたが、
個体を確認できたのは朝に立ち寄った場所だけであった・・・。
午後は10kmほど離れた川の河川敷、
翌日、檜山支庁北部の河川敷もチラ見したけど怪しい影も見られなかった。
結局、この河川以外で産地は確認できず、
♀も採れず、ますます謎が深まった。
当ブログをご覧の皆様で、本種の生態情報など持っていましたら、
可能な範囲で教えて頂けたら幸いです。
♀が採れなかったので来年もチャレンジしようかな?
何れにせよ、大渋滞に巻き込まれず、ターゲットを採れたという、
幸先の良い今シーズンの幕開けとなった。