キキリ・キキリ・キキリ

-北海道の昆蟲と自然-

北海道の昆虫の写真を中心に、身近な生き物や自然を紹介しています。

道東採集行(2008.7.4~6) 後編

2008年07月14日 | 採集記・撮影記
●7月6日(日)



AM4:30起床

車中2泊目となれば、結構疲れている。
しかし目覚めは早いのだ。
今日は朝から快晴で、峠の方も雲ひとつ無さそうだ。
最終日なので1種でも多く高地性のハナカミキリをゲットしたいところだ。


その前に泥だらけの車を少し綺麗にしたい。
そう思って、ある林道の河原に降りれるポイントまで行ってみた。


AM5:30


バケツに水を汲み、今朝まで使っていた手ぬぐいで車を丁寧に拭いていく。
冷たい水が気持ち良い。
車を拭きながら、昔から車に積みっぱなしのルアーセットがあることを思い出す。
まだ虫が出てくるには早い時間帯だし、久しぶりに竿を出してみたくなった。

今のように昆虫採集を本格的に始める前は釣り人間だった。
休みの日となれば海に川に湖に・・・。
学生時代は多い年で一年の半分以上は何かしらの釣りをしていたものだ。

タックルはもう十年以上前の代物だが十便使える。
ラインは海用のPEラインであるが問題ないだろう。
スピナーは定番のメップスアグリアTW。
釣り針にはカラー羽毛を巻きつけた自作物。

懐かしい感触

ついさっきまでバケツで水を汲み上げていた場所に良い淵がある。
魚は逃げてしまったと思ったのだが、とりあえず投げてみた。

1投目:何かの魚影が追いかけてくるが、浅瀬でUターンしてしまった。
2投目:再び魚影が追いかけてくる。一瞬リールを止め再び巻きだすと、
魚はスピナーに反応し喰らいついた!

「ググッ、グングン」

手ごたえのある引きを楽しみ釣り上げて見ると・・・



オショロコマ[Salvelinus malma malma](サケ科イワナ属)

25cm位のなかなかの型。
北海道ではアメマス(エゾイワナ)より上流に棲む魚である。
主に道東・道北の河川上流域に分布する。
この後、この魚はリリースして峠に向かった。
久しぶりに気持ちの良い朝がスタートした



AM6:30



峠に到着。雲ひとつ無い天気。
果して最終日に虫神様は降臨するのか?
虫神というより神の虫「カムイ・キキリ」に出会いたい。
「カムイ・キキリ」なんてアイヌ語の単語を繋げただけの私の造語だが、
もしかして、「カミキリ」の語源はアイヌ語から来ているのでは?
などと思ってしまうということは重度のカミキリ病なのだろう。



今日は前日まで全く見ていない林道に入った。
相変わらず林道沿いに花は見当たらないのだが、
日当たりの良い沢があり、その辺を少し詰める事にした。
普段の感覚ならを気にして歩いて入らないのだが、
ドピーカンの天気のせいで恐怖心は全く無い。

「今日が最後。行ってみよう!」

決意して200m位歩い時だったろうか?
日当たりの良い斜面の上の方にショウマの花をやっと見つけた。





「お~っ!虫神は我にチャンスを与えたり!」

しかも花の周りに虫がたかっているのが見える

「神様、どうかカミキリがついていますように・・・」

イラクサだとかハマナスみたいなトゲトゲ植物を掻き分け(これが結構痛い・・・)、
数メートルほど登ると・・・





おお!





ん!わかりづらいですか?



クビボソハナカミキリ[Nivellia sanguinosa]自己初


朝イチで初物ゲット~!この時の時刻、AM8:00です。


あえて写真は撮らなかったが、ホクチチビハナ、チビハナ、ツヤケシハナ、
クロハナ、モモブトハナ、ヤツボシハナ、キタセスジヒメハナなどが次々と飛来する。

飛来するクビボソハナとモモブトハナをちょこちょこ摘んでいると、
これから花に止まろうとする縞模様の虫が視界に入る。


キモンハナかなぁ~?


あっ、止まった!



シララカハナカミキリ[Judolia parallelopipeda]自己初

狙っていた虫がまた来ましたぁ~!
しかし、花は風で揺れ、うまくピントを合わせれない。
もたもたしているうちに、この個体は飛んで行ってしまったのである・・・

その後、30分ほど待ったが、シララカは飛来して来なかった。


気分一転、ここの花を見るのを止め、沢の奥をもう少し詰めてみた。
ところが!というか、やっぱり!というか、花は無かったのである。
「そういう事なら、あの花にシララカは再び戻ってくるだろうし、
もしかして[アイツ]も飛来するかも知れない。」そう考えた。


花の前まで戻った時にもう一度考えた。
「ずっとここに居てもなんだから、アカエゾマツに来るカミキリを少し探してみよう。」




新鮮ではないがこれもアカエゾマツ立ち枯れである。
日差しが強く、正面には何も居なかった。
しかし裏側に回った時・・・




いたっ!




一枚撮影したら、その後、逃げるわ逃げるわで、いつの間にか消えていた。
昨日採ってるから別にいいさ。(ホントは採りたい)

この後、他のアラメもキタクニハナも見当たらないので、先程の花まで戻る。


戻ってみると、どうやら違うカミキリが飛来しているようだ。
再びトゲトゲ植物を掻き分け斜面を登る。
すると・・・


ツヤケシハナ?


クロハナ?


もしかしてアイツ?


いや、カムイ・キキリ?



エゾスミイロハナカミキリ[Nivellia extensa umbratilis]自己初(撮影)


花は風で揺れピントが合わない。

「もういい!」と写真を諦め手を差し出すと、トゲトゲ植物の根元の方に逃げ込んだ・・・。

「ゲッ!」慌てててを突っ込む。

しかし、イラクサに刺されただけで終わってしまった。

「撮影意欲無くなるしぃ~



撮影か、採集か、の狭間で揺らいだ心が、結局どちらも物に出来なかった・・・



暫くショウマに群がるハナカミキリ達を呆然と眺めていた。

そんな自分を慰めてくれるかのようにシララカ君が舞い戻る。



速攻で網採り!


あぁ、さっきのスミイロも網使えば良かった・・・
後から気付いても遅いのである。
シララカを初めて捕らえた嬉しさより、スミイロを逃がしたショックは後を引く・・・。


とりあえずAM10:00までここに居ました。
もっと時間があれば粘りたかったが、次の日は出張なので早々に切り上げです。
カムイ・キキリとの対戦はまたの機会にしたいと思う。





終わり。