蜩ノ記 | |
葉室 麟 | |
祥伝社 |
1月28日(土)
第146回直木賞受賞作であります。
いや~、泣けますね。こんなに清々しく、思慮深く、慈愛に満ちた男の生き方があるものなのか、素晴らしい時代小説を堪能。
壇野庄三郎は城内での諍いにより親友に怪我をさせるが、切腹を免れ、幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷(しゅうこく)のもとへ遣わされる。
秋谷は七年前前藩主の側室と不義密通の罪に問われ、家譜編纂と10年後の切腹を命じられていた。
秋谷の人柄に触れ、七年前の事件は冤罪ではと疑い始める庄三郎。家譜編纂のなかから浮かび上がる事件の真相と、明らかになる陰謀。だが、無情にも3年の月日が刻々と過ぎていく・・・
てなお話ですが、庄三郎の心の変化・成長がよいですね。もちろん死を覚悟した秋谷の凛とした生き方のお話でもあるし、その横で暮らしながらグッと大人になる青年・庄三郎の記でもあり、命と志を繋いでゆく秋谷の息子・郁太郎の話でもあるわけです。
お恥ずかしながら、時代小説にはあまり明るくないので、葉室さんは今回の受賞で初めて知りました。60代だからこそ書ける作品なんだろうなあ。もうちょっと他のも読んでみます。