Qの読書な日々

大好きな本と、毛糸に囲まれる日々の独り言

悲しみのイレーヌ

2016年02月14日 | 小説(海外)

2月14日(日)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)
ピエール・ルメートル,橘 明美
文藝春秋

ヴァレンタインデイにこの作品はどうよ?ですが、ピエール・ルメートル、凄いです。

昨秋読んだんだけど、今更でも記録しておこう。

まずは、も~この表紙の怖いこと!

二人の娼婦が異様な手口で殺される。かなりエグい現場ですが、どこか芸術的。

小説を模倣した殺人が次々と起こり、カミーユは知性と勘で対決していく。

模倣とは使い古された感もあるけど、キャラクターの斬新さや、事件とは関係ないようにみえる何気ないやりとりが

大きな事件につながっていく様はお見事としかいえない。

 

そう、これは「その女アレックス」より先に書かれたカミーユ警部のシリーズ。

アレックスを読んでいて、題名が「イレーヌ」ときたら、悲しい結末しかないのに。

カミーユ警部が愛する身重の妻を殺害されたのは、「アレックス」の冒頭から登場してるんですから。

それでも「まさか…」と先を読まずにはいられない。

 

うーん、でもラストが残忍すぎるかなあ。

きっとそこがこの作者のいいところなんだろうな。

落ち込んでる時には読むべきじゃない。でも間違いなく面白い。

 


忘れられた巨人

2015年08月31日 | 小説(海外)

8月31日(月)

いや~、お久しぶりです。

3ヶ月ぶりかな?

先週末、社労士の試験が終わりまして、あまりの無残な結果に一週間呆けておりました

でも、これが私の力。しっかり受け止めて、また次に進みましょう。

 

さてさて、3ヶ月間の間に少ーしだけ読書。

忘れられた巨人
Kazuo Ishiguro,土屋 政雄
早川書房

カズオ・イシグロ 日本でもすごく人気ある作家ですね。

私はといいますと、作品によって好き嫌いが大きく分かれてます。

これは…どちらかというと苦手な方かなあ。

時代はアーサー王の頃。鬼が出てきたり、んーー、ファンタジー仕立てなんです。

どんな話か全く知らずに、カズオ・イシグロというだけで購入してしまい、

開いた途端にあれ?ファンタジー?!

どうもファンタジーというだけでアレルギー反応が起きてしまい、物語に入り込めなかった感があります。

 

ファンタジーという着ぐるみをかぶってますが、お話はやはりイシグロ。

深くて、難しい。作品としてはおそらく素晴らしい。

でも、ごめんなさい。私にはさっぱりでした。

 


低地

2015年04月22日 | 小説(海外)

4月22日(水)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)
Jhumpa Lahiri,小川 高義
新潮社

ジユンパ・ラヒリの長編というので、超期待したのですが、期待値が高すぎたかしら。いやいや、そういう書き方はよくないな。
文章、訳、作品は文句なく素晴らしい。テーマに興味が沸かなかった感じです。

インド、カルカッタ郊外で育った兄弟スバシュとウダヤン。成長し、弟ウダヤンは革命運動に身を投じ、殺される。残された身重の妻を兄スバシュは妻に迎え入れ、留学先のアメリカで夫婦として暮らし始める。

生まれた女の子が成長し、子をもうけ、スバシュが老年に差し掛かるまでの家族の時間が描かれます。ジュンパ・ラヒリの描く心の揺れるさまは本当に上手。好きになれるかもと思った瞬間に失望し、失望している自分にまた失望する。長い時間の中で夫婦が壊れていく、そもそもこの二人は最初から夫婦ではなかったか。弟ウダヤンの存在が死んでも離れない、でもウダヤンが生きてたなら、幸せだったというのだろうか。

妻ガウリは結局娘を捨て家を出ていく。仕事をし、地位を得、女性との刹那な関係を持つこともある。小川さんの訳はとても淡々としていて、そうだでも毎日ってこんな風に淡々と過ぎていくものだと思う。事件はは毎日起こるわけじゃなく、日々の小さな心の揺れが積もっていく。

インドの民主化運動が重要なポイントなんですが、そこがようわかってないので、楽しめきれてないんでしょうねえ。うーーん、長い人生を語って、最後がウダヤンの死のシーン。喪失からの再生、失ったものとどう生きていくかといった物語といいますか、難しかったなあ。

まあでもこうして振り返ってみると、読みどころは満載でやはり秀作です。


その女 アレックス

2015年01月19日 | 小説(海外)

1月19日(月)

1月も終わりに近づいていますので
ちょっとは書いておかねば。
今年の幕開けはコレです‼︎

その女アレックス (文春文庫)
橘 明美
文藝春秋

あらためて見ると怖い表紙だなあ。
海外ミステリー関係の賞を総ナメですよね。書店でも山積み!

うーーーん、結論を言うと、とっても面白いんですよ。ノンストップで読めます。

奥さんを殺されてしまった警部カミーユはとんでもなく背が低いというのキャラは素晴らしいし、彼の周りの対照的に大きい上司や、金持ちの刑事キャラも面白い。

ただねえ、後読感はあまり気分いいものではないかなあ。

1部でさらわれるアレックス。2部では死と戦うアレックス。

3部では一気にアレックスの過去の惨劇と罪とが暴かれていきます。

大どんでん返しと言えばそうでしょう。1,2部では想像だにしなかったアレックス像が浮かび上がります。

で、何が気分を害するのかというと、

レイプねた(しかも近親相関)はミステリー小説だと分かっていても面白がれないということ。

復讐ならば生き抜いてほしかったなあ(ネタバレ)。それだけ賢く、周到に準備出来たのなら、幸せになって欲しかった。

そうならないところが、この小説の素晴らしさなんでしょうけどね。

アレックスの人生をかけた復讐劇であるわけですが、追う警部、カミーユの復活劇でもあります。

妻を失い現場から距離を置いていた敏腕警部が、アレックスの事件を追うことで少しずつ自分を取り戻し、見事に真相を突き止める。

カミーユ警部シリーズと書いてあるけど、翻訳されていないのかな?次作が出れば読んでみたい。


2014マイベスト

2014年12月21日 | 小説(海外)

12月30日(火)


11月末からちっとも更新してなかったけど、一年の締めくくりに何か書かねばと思い、一言。

まずは、この1か月に起きたこと。

1.あんなに嘆いた保育士試験に合格⁈

2.ママさんバレーで目標だった地区予選のベスト8に残る

3.今年をしめくくるに相応しいガルシア・マルケスを読み終わる

コレラの時代の愛
木村 榮一

新潮社

年内に読み終わってよかった、出会えてよかった。この本を今年のマイベストに!!

あの有名な「百年の孤独」とは趣が異なる作品。ひとりの女性と、それをめぐる二人の男性の50年以上にわたるお話です。

長年付き添った夫を亡くしたフェルミーナ。その時を51年9か月と4日待ち続けた男フロレンティーノ。その年月はよく言って究極の愛。普通に考えれば変質的。そのギリギリのところがたまらなく滑稽で、ブラボー!マルケス!なんです。

フロレンティーノはフェルミーナだけを思いながら、数えきれない程の女性と関係を持つんですよ。それでも心は彼女だけとか言いながら、一人一人の女性の好みやらなにやらいろいろ記憶していたりするところがさすがラティーノ!性さがってそういうものだなあ。

一方のフェルミーナはウルビーノとの結婚に全く乗り気でなかったんですが、50年の間には様々なことが起き、気持ちが近づいたり離れたり。その年月の描写も素晴らしいんですよ。石鹸があったかどうかでケンカしたことを何十年も根に持っていたり、ひとつひとつ笑える。

とにかくガルシア=マルケスにはすべてが詰まってるとしか言いようがないんだなあ。

人が生きていくすべてのことが詰まってる感じ。

 

今年は量的にはたくさん読めなかったけれど、ちゃんといい作品に出会えたと思います。

アーヴィングの「In One Person」も再読したい作品でした。

また来年も素敵な本と出会えますように。