Qの読書な日々

大好きな本と、毛糸に囲まれる日々の独り言

小暮写眞館

2011年05月29日 | 現代小説
小暮写眞館 (100周年書き下ろし)
宮部みゆき
講談社

5月29日(日)

安心して読める長編が読みたいと思い、思い切って(だって2000円だもん)購入した最新宮部作品。

裏切られることなく、かといって期待以上でもなく、安心して読みきりました。なんと700ページ3こかな。

花菱一家は念願のマイホームを購入。それはシャッター通りとなった商店街の一角にある写真館。ひょんなことから写真館に持ち込まれた心霊写真の謎を、主人公の花菱英一くん、高校1年生が調べることから始まる。

宮部さんが幽霊とか、心霊写真をモチーフとして使うのはお手の物。この作品も小暮さんの思いがたくさんつまった古めかしい写真館という独特な空間が「まあ幽霊が出てもいいか」という気持ちにさせてくれるところはやはり宮部さん。キャラもみな愛らしい。何といっても賢くて年の離れた弟、ピカちゃんこと光。ピカちゃんが4歳で亡くなったお姉ちゃん風子のことで、小さな胸をいためているのがこのお話の中心軸でもあります。

心霊写真のエピソードにはもうちょっとパンチが欲しいところだなあ。最終話で花菱家のタブー、亡くなった風子ちゃんへの家族の思いが明らかになって、さらに英一君のほろにが初恋もあって、非常に爽やかなラストは素晴らしいです。

だけどまあ、宮部さんて「エンタメ!」作品ばっかりになっちゃったねぇ。700ページ、盛り込まれてるエピソードも恋、青春高校生活、いじめ、倒産、戦争体験、幽霊、家族問題、宗教、自殺癖・・・かなりお腹いっぱいのエンタメ作品でした。


風をつかまえた少年

2011年05月26日 | ノンフィクション
風をつかまえた少年
ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー、池上 彰(解説)、 田口 俊樹
文藝春秋

5月26日(木)

素晴らしい!ここ数年間で読んだ本のなかで最も素晴らしい!(テーマがいろいろ違うのでナンとも言えないが・・・)帯に池上さんの顔写真があったので、書店でふと手に取った一冊ですが、池上さんが解説してなくても本当に素晴らしい。

というか、この感動をたくさんの人に伝えたい一冊。「こんな素晴らしい本があるのでみんな読んで!」小説は好みが割とはっきりしちゃうけど、この実話はストレートに誰でも心動かされるんじゃないだろうか。

著者で主人公のウィリアム君は1987年世界でも最貧国のひとつマラウイに生まれる。学費を払えず中学を一年で断念するが、図書室の本で物理を独学。廃品を利用し、風車をつくり風力発電を行う。この風車が後に有名になり、援助する人が現れ・・・なお話。

ウィリアム君のサクセスストーリーなんですが、その志が実にピュアでストレートで、「学びたい」ってこういうことだったんだ!「学ぶ」欲求、教育の力はすごいんだと!とただ素直に感動です。

だって、ウィリアム君の置かれている状況がほんの10年前のことなのに実に壮絶。2001年の飢饉では学校にいけないどころか、明日食べるものがない。そんななか出遭った一冊の物理の本で、彼は電気があれば家族を、村を救えると考えるんです。またウィリアム君は心やさしいんだ。兄弟で唯一の男だから、お父さんを手伝い、お母さんに楽させてあげたいと。

まあね、今の日本の我々にはウィリアム君と同じモチベーションは持てないですよ。でも、日々の雑多なことに疲れ、教育や文明がもたらした幸せな時間や空間に感謝することを忘れている自分を戒めるにはこの本は強烈パンチです。実は今日最後の50ページ、喫茶店でお昼を食べながら読んだのですが、も~涙が出てきてどうしようかと

とくに、子供には読んで欲しいな。中学生なら十分理解できる。さっそく息子に学校の朝読時間に読むように、そして友達にも先生にも宣伝するようにしつこく言うのだ。


追悼児玉清

2011年05月23日 | 日記
寝ても覚めても本の虫 (新潮文庫)
児玉清
新潮社

5月23日(月)

児玉清さん、大好きだったわ。好みの男性は?と聞かれると必ず「児玉清」と答えて、皆に???と思われてたみたい。

でもね、何といってもダンディで、「週間ブックレビュー」でみせる本に対する情熱は、本好きにはたまらなく魅力的。あんなおじ様と読書談義ができたらなんて素敵なんでしょう

あ~、なんでこの本をもっと早く買わなかったんだろう。いまや出版社品切れ。1ヶ月は手に入りそうにない。それでもAmazonに予約しておくべきか。


密会 (新潮クレスト・ブックス)

2011年05月22日 | 小説(海外)
密会 (新潮クレスト・ブックス)
ウィリアム・トレバー
新潮社

5月22日(日)

「密会」って検索したら、ちょっとエロめなDVDとか出てきてビックリ、この本は全くそんなんじゃないです。これは図書館で借りたクレスト・ブックスで、2008年出版。作者のウィリアム・トレバーさんは1928年生まれなので80歳を超えてらっしゃる、イギリス在住のアイルランド人だそうです。世界的にも評価は高いそうですが、邦訳されている作品は決して多くないみたい。

3.5くらいかな。

うまく言い表せないけど、初めてだわこんなカンジ。この本は12の作品が収められた短編集なんですが、どれも暗くて、孤独。登場人物は皆、平凡だし決してドラマティックなわけでもない。でも、作者の視点がすごく鋭くて、味わい深い。

特に表題作の「密会」は、中年の男女がいわゆる不倫関係にあり、何年も逢瀬を続けている。「もう終わりなのね」と女が感じる。何が原因かなんて分からない。二人の間の空気まで感じるような文章、でも感情移入するのとは違い、あくまで遠くから俯瞰する。別れが悲しいのか、切ないのか、それも分からない。ただそこに「別れ」がある。

クレストブックスは表紙に著名人の書評が載ってて、イーユン・リーの文章がこの一冊にとてもふさわしい。「トレヴァーは、やさしく突き放しながらも共感に満ちた筆致で、平凡な人々の孤独、不義、老い、死といった、人生の荒涼とした風景を描き出す。」

この本は、あるいはこの作家は「買い」かもしれない。時を経て読めば、きっとまた印象が違うだろう。読み込むほどにいいかもしれない。


CATS

2011年05月21日 | 日記
キャッツ―ポッサムおじさんの猫とつき合う法 (ちくま文庫)
T.S. エリオット、ニコラス ベントリー、Thomas Stearns Eliot、 池田 雅之
筑摩書房

5月21日(土)

夕べは横浜に「CATS」を観に行ってきました!お恥ずかしながら、ストーリーも知らず、何の予備知識もない初体験。かなりワクワク。

何も知らずに行った私は、最初のほうナンだかストーリーが全く理解できず???要はいろんな生き方の猫ちゃんが登場するんだなと一応理解し、踊りと歌を楽しむことに。いやはや、ミュージカルは夢の時間、現実の世界を離れ、夢見てるような2時間でした。

さて、先ほど調べてみたらこれが原作とのこと。T.S.エリオットさんはノーベル文学賞を受賞されている詩人だそうで、この作品は1939年、なんと70年も前に書かれたそうです。世の中知らないことばかりだなぁ