小暮写眞館 (100周年書き下ろし) | |
宮部みゆき | |
講談社 |
5月29日(日)
安心して読める長編が読みたいと思い、思い切って(だって2000円だもん)購入した最新宮部作品。
裏切られることなく、かといって期待以上でもなく、安心して読みきりました。なんと700ページ3こかな。
花菱一家は念願のマイホームを購入。それはシャッター通りとなった商店街の一角にある写真館。ひょんなことから写真館に持ち込まれた心霊写真の謎を、主人公の花菱英一くん、高校1年生が調べることから始まる。
宮部さんが幽霊とか、心霊写真をモチーフとして使うのはお手の物。この作品も小暮さんの思いがたくさんつまった古めかしい写真館という独特な空間が「まあ幽霊が出てもいいか」という気持ちにさせてくれるところはやはり宮部さん。キャラもみな愛らしい。何といっても賢くて年の離れた弟、ピカちゃんこと光。ピカちゃんが4歳で亡くなったお姉ちゃん風子のことで、小さな胸をいためているのがこのお話の中心軸でもあります。
心霊写真のエピソードにはもうちょっとパンチが欲しいところだなあ。最終話で花菱家のタブー、亡くなった風子ちゃんへの家族の思いが明らかになって、さらに英一君のほろにが初恋もあって、非常に爽やかなラストは素晴らしいです。
だけどまあ、宮部さんて「エンタメ!」作品ばっかりになっちゃったねぇ。700ページ、盛り込まれてるエピソードも恋、青春高校生活、いじめ、倒産、戦争体験、幽霊、家族問題、宗教、自殺癖・・・かなりお腹いっぱいのエンタメ作品でした。