Qの読書な日々

大好きな本と、毛糸に囲まれる日々の独り言

どこから行っても遠い町

2012年08月31日 | 現代小説

8月31日(金)

今日で夏休み終わりなんですねえ。毎日暑いので、気がつきませんでしたよ。

さて、今日は健康診断。こまぎれの待ち時間でしたが、たんまり読書出来ました。

最近、気になっていた本が次々に文庫化していて、思わず購入。

どこから行っても遠い町 (新潮文庫)
川上 弘美
新潮社

そのなかの一冊。川上弘美さん。

以前図書館で借りて読んだんですが、全然覚えてない話もあったなあ。11話の連作短編集です。

真ん中くらいの「長い夜の紅茶」に登場する熱血嫌いの主婦都「時江」さんと、義母の「弥生」さんはいいですよ~。

息子の嫁に浮気しろと言わんばかりに「あんまり強いんで剣も抜かず人も殺さずの剣豪みたい」とは。

その次の「四度目の浪花節」がけっこう好き。

ぶどう屋という小料理屋のおかみさん央子(なかこ)と板前の廉ちゃんは、実はくっついたり離れたりを三度繰り返している。

15歳年上の央子さんとの4度目の正直があるのか?っていうところで終わっちゃうのでわかりませんが、廉ちゃんというキャラが川上さんにしては真っ直ぐで応援したくなる。

川上さんのお話には「死」が自然にある。最初と最後をかざる「魚春」のお話は特にそう。

ホラーとか、おばけが描かれるっていうんじゃなく、すごく自然にとなりにある(いる)ような。

キャラがね、いいんですよ。みんなすごく人間なんです。

決して面白かった!という一冊ではないのですが、秋の夜長とか、冬のコタツとかで手に取りたくなる、そんな感じかな。

 

ちなみに他に購入したのは「床屋さんへちょっと」山本幸久、「悪の経典」貴志佑介。

秋の夜長は読書に限る。

 


こころ

2012年08月28日 | 現代小説

8月28日(火)

こころ (新潮文庫)
夏目 漱石
新潮社

夏は名作を読みたくなります。今年は漱石と、又吉さんのPOPにつられて、太宰を購入しました。

やっぱり名著、さすが日本を代表する文豪だなあとうなりますね。

まず、文章が美しい。するすると読めます。

男女の関係とか、就労の在り方とか、現代社会では考えられないような部分もありますが、

生きていくうえでの「悩み」、人と人との関係の在り方なんかを考える上では

今も、漱石の時代も不変ですねえ。

結局、先生もKも何で自殺したのか、正直分かりません。

「罪」の意識か、「絶望」か、はたまたあの時代には「殉死」がまだ生きていたのか。

自殺の美学は文学の世界だけで結構ですしね。

ただ、現代もいじめや、借金、失恋やらいろいろなことで「死」を考える人はたくさんいて、

実際自殺は毎年増えていますよね。

そういう人間の「弱さ」を見つめ続ける、テーマを与え続ける作品なんだろうと思います。

 

ところで、新装本は字が大きくなって読みやす~い

もう昔の小さい字の文庫は読めないわ・・・

全然関係ないけど、先日「アベンチャーズ」を3Dで観たら、焦点が合わなくてとっても疲れた・・・

いつまで眼鏡なしで活字が読めるだろう

 

 


湿地

2012年08月27日 | ミステリ(海外)

8月27日(月)

湿地
柳沢 由実子

東京創元社

海外ミステリ界は北欧ブームだっていうけど、確かにこれも面白かった!!

翻訳ものはややお高いのが難点ですが、どうしても今回の親戚一同熱海旅行のお共に持って行きたくて、購入。

おかげで、伯母たちがベラベラ喋ってる横で黙々と読書に励んだのでした。

 

舞台はアイスランド。

異臭漂う地価の一室で老人が殺された。

「おれ は あいつ」

という謎のメッセージが残されていた。

 刑事エーレンデュルは、捜査を進めるうちに、過去のレイプ事件、さらに家族と血の問題が明らかになっていく。

 

タイトルが「湿地」ですから、かなりじめっとしたお話です。刑事さんもかなりくたびれていて、私生活はボロボロ、離れて暮らしていた子どもたちはジャンキーと犯罪者というお決まりのパターンではあります。

スリリングではらはらドキドキという感じでもないなあ。ヒントが突然降って来るような派手なシーンはなく、長年の刑事の勘と、地道にコツコツな正統派刑事モノですね。

それでも、とっても新鮮なのは、アイスランドという今まで読んだ事ないお国柄だからでしょうか。

ちょっとアイスランドの名前が「エーレンデュル」「エーリンボルク」「ホルベルク」etc.馴染みがなくて、覚えにくいのが唯一の難点でした・・・

 


聞く力

2012年08月21日 | 新書

8月21日(火)

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)
阿川 佐和子

文藝春秋

今日も暑いですねえ。

さてさて、積み上がっている本がサクサクと読み進んでいて、気持ちがいいです。

今日は阿川さん。

内容的には、新書?という気もしますが、アガワさんなら何でもOKでしょ。

例えば、「相手の言葉をオウム返しする」とか、「質問の内容を事細かに決めない」など

営業マン向けのビジネス書なんかにもよく書いてあることで、特に目新しいことはないです。

が、故遠藤周作さんがお父様と友人だったため、幼いころからよく知っている方にインタビューするですとか、

城山三郎さんにしてもお父様がらみのお話で脱線するとか、アガワさんにしか出来ない、聞けないことですよね。

 

「私はこんなにドジで間抜けです」っていうスタンスで書いてらっしゃっていて、

人によってはあんまり謙遜するのも慇懃に感じますが、

アガワさんはいい塩梅。

作家さんですし、今やインタビューもテレビもベテランですし、そんなわけないんですけどね。

それにしても、帯の阿川さんの写真のかわいらしいこと

あの笑顔と好奇心あふれた瞳!しゃべりたくなりますよ。

見習わねば


サラダ好きのライオン

2012年08月20日 | 書評、エッセイ

8月20日(月)

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3
大橋 歩
マガジンハウス

村上ラヂオは力が抜けていいですよねえ。3ページ+さし絵という区切りもちょうどよい。

今回とても気に入ったのが「秋をけりけり」

木山捷平さんという方の詩が引用されています。

 

「新しい下駄を買つたからと

ひよこり友達が訪ねてきた。

私は丁度ひげを剃り終へたところであつた。

二人は郊外へ

秋をけりけり歩いて行つた。」

 

これは若い人の感覚だよなと。友達がフラッとやってくる感覚って。と春樹さま。

高校生の頃、深夜机に向かっていると、窓に小石が当たって、外を見ると友達が手を振っていた。

そのまま海岸まで歩いていって、焚き火をして、火を眺めていた。

なーんていう、暇を持て余していた時代の気持ちの所在感が蘇ってきて、なんとなくいい、とのこと。

 

う~ん、いいよなあ。

時間が無尽蔵にあると思っていた頃の、無邪気さとか、ふわっとした期待感と漠然とした不安とか。

「残念ながら大人になると暇つぶしに付き合ってくれる人の数も次第に少なくなっていく」

って、それもそう、とってもうなずける。

今年はたとえ誰も付き合ってくれなくても、「秋をけりけり」お散歩してみよう。

 

(でもこれって女同士というかオバサンだとピーピーうるさくて、「秋をけりけり」とはならないわ・・・(^_^;))