食農ステイション

食と農に関するお話しを徒然なるままにいたしましょう。

有機農業の振興のためには

2005年03月28日 | 食と農
30年以上前,安全な農産物を入手したい消費者と自らの農薬被害を減らしたい生産者によって,日本の有機農業の活動は始まった。有機農業において大事なことは,生産者と消費者の相互関係であり,産消提携と言われている。これは生産過程の栽培履歴の公開よりもずっと重視されてきたのである。

しかし,世界的な有機農産物の基準(CODEX)に適合させるために,日本も2000年4月からJAS法の中に有機JAS制度を組み込み,これに適合しないものは有機農産物と表示できないことになった。
そのため,全国の有機農業実践者は制度には反対しつつも,自分たちで登録認定機関を立ち上げてこれを凌いできたのだった。

そして,5年を経過して,農林水産省は有機JAS制度を国内有機農業実践者にとってはより厳しいものに,輸入有機農産物はより流通し易いような改正案が国会に提出されているのだ。

このような情勢を跳ね返すため,3/26に「有機農業振興政策の確立を求める緊急全国集会」が千代田区駿河台の総評会館で開催された。集会の趣旨は,輸入偏重の有機JAS制度を見直し,国内有機農業の本格的振興をめざすことだ。
集会には北海道から鹿児島まで全国の有機農業関係者約300名が手弁当で参加した。皆,この時期に何か訴えたい様子だった。

JAS有機農産物に限れば,国産の有機農産物比率は13.5%(2003年度)と輸入ものが凌駕している。ただ,JAS有機に認定されていない有機農産物もかなり多いと推定される。これら「草の根有機農産物」は,一般市場に乗らずに産消提携(産直)で流通している。

国会議員による「有機農業推進議員連盟」が結成されその活動も期待されるが,国民にこのような現状を知らせ,JAS有機制度の改悪を阻止する必要があろう。
事態は風雲急を告げています。

地産地消と学校給食

2005年03月25日 | 食と農
いま全国で地産地消の運動が活発に行われている。現象形態としては,農産物直売所の活用と学校給食への地場産農産物の利用だろう。
昨日(3/24),(財)埼玉県学校給食会にK先生と一緒に調査に行った。きっかけはNHKの夕方のニュースで見たことだった。同給食会の取り組みは本当にすばらしかった。米飯には埼玉県産米100%利用。パンは県産小麦54%利用,うどんなどの麺類には61%の県産小麦が利用されている。
これら埼玉県内産農産物を利用した給食が,県内の小中学校や定時制高校など約60万人の生徒に供給されているのである。今後,冷凍野菜やにんじんのピューレなどの利用も拡大されるとのことである。
このような学校給食における地産地消の取り組みは,愛媛県今治市や福島県熱塩加納村など市町村レベルの取り組みは多くあるが,都道府県レベルでしかも学校給食会の取り組みは,これまで寡聞にして知らなかった。
埼玉県学校給食会の取り組みが成功している背景は,学校給食への国からの補助金削減と同給食会職員の商品開発力と革新的な活動があった。この事例は,もう少し調べるつもりです。

地域通貨と地域主義

2005年03月22日 | 食と農
 3/18に(財)さわやか福祉財団が主催する「日本地域通貨フォーラム」に参加しました。
 最初,堀田力さんの挨拶に,日銀の福井さんとの話を紹介された。福井さんは「国の通貨には魔物が棲んでいる」と言われたとき,堀田さんは「地域通貨には魔物は棲んでいませんよ」と返したそうだ。すかさず福井さんは「ほんとに棲んでいませんか?」と聞かれたそうだ。面白いやりとりですね。
 さて,基調講演は東大の丸山さんでした。丸山さんのお話を聞くのは2回目だが,興味深かったのは,彼が地域通貨の研究を始めたきっかけだった。大学院を修了して,カナダ・トロント大学に留学したとき,当時の指導教員がポランニーの弟子のDr.ローシュタインだったそうだ。そして,ゼミで,江戸時代の藩札に関する報告すると,バンクーバー島のLETSを紹介されたそうだ。
 また,ゼミの報告に背景には玉野井芳郎の『地域主義の思想』やハイエクの『自由化論』などの読書歴があったという。地域内通貨と地域外通貨の区別など,内と外を分ける思想は昔から重視されていたのだ。私ももう一度,玉野井さんの本を読み返そうと思った。
 午後は全国の活動事例報告とパネルディスカッションだった。これについては,後日紹介しましょう。

春うらら

2005年03月16日 | 食と農
農場にあるアメダスによれば,正午の気温は16℃。春ですな--

キャンパスの木蓮も花が咲き始めました。(写真はピンぼけ)

さて,先日の農業体験フォーラムの感想をひとつ。
画家の基調講演は眠っていたのでパス。
実践報告として,日野市の栄養士さん,高知県の農協女性部の人,そして新潟県村上市の小学校教諭・遠山先生の3名でした。

3名とも優れた実践報告でした。感動しました。ちょっと私はマネできません。
特に遠山先生の報告はすごかった。総合の時間を使って「1日3食すべてを自力で作ろう」という課題を設定したのです。
1年間を通して,献立づくり,食材の生産と調達,塩を海水から造るなど行ったのです。タンパク源確保のために,海に釣りに行っています。
また,味噌や醤油までは造れないので,調味料の購入のために構内で栽培した野菜を販売したというのです。

昨年11月のXdayには,朝から夕方まで班毎に自ら調理し,1日3食,見事に作り味わったそうです。与えられる食ではなく,作り出す食に挑戦することで,給食の食べ残しが減り,教室の社会性が生まれ,作文能力も向上したというのです。

食農教育が各地で実践されていますが,遠山先生のような体当たりの教育者は少ないように思います。後光が差していたように思いました。
総合的学習の時間は,やりようによっては見事に開花する可能性を秘めていますね。勉強になったフォーラムでした。

米国産牛肉の輸入について

2005年03月15日 | 食と農
昨日(3/14),ある畜産団体の委員会に出席した。
会議の後の懇親会で,今話題の米国産牛肉の輸入についてどう思うか,その団体のエライ方(とりあえずKさん)に聞いてみた。

意外や意外,その方は輸入賛成ですと。その理由は次のとおり。

1.全頭検査の費用は税金から賄われているが,どのくらいかかっているのか消費者は知っているのか。(私も知らない

2.変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(以下,vCJD)の原因は異常プリオンとされているが,どのくらい異常プリオンを摂取するとvCJDになるのか分からない。それを,怖がるのか。

3.日本国内の畜産生産者は,米国産牛肉が輸入停止されてから,我が世の春を謳歌している。
つまり,牛肉にしろ,豚肉にしろ,鶏肉にしろ,生産者価格は高価格水準で推移しているからである。といって,生産規模の拡大は出来ないし,取り組もうとしない。供給不足の状態を放っておいて良いのか。

このような,真っ当な意見に遭遇すると,私もたじろいでしまうのである。

しかし,このKさんの発言には次のような事情も隠されている。
牛肉が輸入されればされるほど,関税収益が国を通じて,農畜産業振興機構(http://alic.lin.go.jp/)に入り,各種畜産団体,畜産農家に循環する仕組みになっているのである。
つまり,これ以上米国産牛肉の輸入停止が続くと,畜産業界にカネが回らなくなり新規事業も出来なくなると言うのである。

この話,帰ってからうちのカミさんに話したら,「そんなこと言ったって,安全性がハッキリしなければ買わないわョ」ですと。我が家はリスクゼロを目指すようです。

この議論,奥深いですな。