食農ステイション

食と農に関するお話しを徒然なるままにいたしましょう。

地産地消の全国的動向

2006年06月27日 | 食と農
今日の東京は本当に蒸し暑い一日でした。

7月1-2日,弘前大学で開催される学会シンポで,またまた地産地消について報告することになっています。昨年,北海道大学で学会報告してから,いつのまにか地産地消の「専門家」?!ということになっています。
内容が伴っていないことを重々自覚しておりますので,すこしばかり恥ずかしいです。

さて私は,「地産地消の全国的動向と課題」という課題を座長のK先生から申し渡されました。ほかの報告者の前座として,地産地消の全国的な概況を報告せよと言うことのようです。
しかーし,私は神様,仏様ではないので,全国津々浦々の状況を把握しているわけではないし,能力的にも不可能なのです。(完全に開き直っている。)

そこで,私は既存の研究成果を参考にすると共に,農林水産省や文部科学省から行政資料をもらって,「全国的動向」について報告することしかできません。これって,「他人のふんどしで相撲をとる」ってやつですね。これまた,私の流儀に反します。

刑事映画なら,「事件は,現場で起きているんだー!」と啖呵を切るところです。地産地消もそれぞれの地域で実践されているわけで,東京に住む私や霞が関の省庁には地産地消の実践すべてが把握できてはいないのです。

学会にはすでに報告要旨を送っていますが,どのような報告の組み立てにしようか思案中です。

ちょっと気が重いシンポになりそうです。ハーァ。

柿,食べてますか?

2006年06月21日 | 食と農
今日は夏至です。でも,東京は雨。日照が足りません。

先週,福岡に柿の産地調査に行ってきました。JA全農ふくれんや県庁の方にたいへんお世話になりました。ありがとうございました。

なぜ,いま柿の調査か?
実は2年に1回,柿の主産地が集まって開催される「柿研究大会」が,今年の8月に福岡市で行われるのです。そして,私が基調報告するように依頼されたのです。

福岡とは縁がある私ですが,柿に関してはこれまで正面から研究対象として取りあげたことがなかったので,これもいい機会かなぁーと軽い気持ちで引き受けました。

しかーし,現実はチョー重いのです。最近,柿の需要が伸び悩んでいることを背景にして,生産者価格は停滞もしくは下落傾向にあります。
特に昨年は,少雨傾向で台風による供給調整がなかったことや,秋の果実が一時期に集中し市場に出たこともあり,柿の卸売市場単価は例年の半分以下でした。これには,柿農家も本当に困っています。
産地の状況は別の機会に報告するにして,今日は消費に関してお話しします。

ところで,皆さんは柿を食べていますか?
2-3個ぺろりと食べる奇特な人はごく少数で,大部分の人は柿と同じ時期に出回るミカンやイチゴを食べているのではないでしょうか。

総務省の「家計調査年報」を調べると,高所得者と高齢者は平均以上に柿を食べていますが,若い人や低・中所得者は柿を食べていません。特に問題だと思うのは,いま30-40代の人が20-30年後の高齢者になったときに柿を食べるのかということです。いま食べていない人は,齢を重ねても食べないだろうと推測できます。これでは,柿の需要量は年々減少するばかりです。

産地では,「よい柿を作れば,売れる」という期待があるようです。また,他人まかせの市場対応のような印象を受けました。でも,今後柿産地は,本格的な需要開拓をしなければジリ貧になってしまうように思うのです。

その1つは写真にあるような柿栖や柿チップなどの加工食品です。ただ,柿には香りが無く,加工に適さないという人もいます。また,農協で聞いてびっくりしたのは,加工用柿の生産者価格は,生果の100分の1しかならないとのことです。
規格外の柿は選果時に結構出るそうですが,産業廃棄物としてゴミ処理費を出すよりマシというぐらいの評価しか受けていません。加工用の柿について,もう少しきちんとした評価はできないのでしょうか。

ところで,皆さんが食べているのは,富有柿のような甘柿ですか,それとも平核無(ひらたねなし)のような渋柿を脱渋した柿でしょうか?
岐阜や西日本では前者の甘柿が,東日本ではタネがないこともあり,後者が好まれているようです。人によって果実の硬さの好みも違うようです。

柿の需給問題はとってもディープです。

地産地消で酒造り

2006年06月13日 | 食と農
忙中閑あり。  日韓フォーラムのエクスカーションの続きです。

どきどきで昼食をいただいた後,石岡市の府中誉酒造(http://www.huchuhomare.com/)に行きました。ここの若社長Yさんから話を聞きました。

ここは,安政元年から150年以上にわたって酒造りをしている歴史ある酒蔵ですが,地元で栽培している「渡船(わたりぶね)」という酒米を使った酒造りにもチャレンジしている蔵元でもあります。「渡船」は,酒米で有名な山田錦の親に当たる品種で,昔は,茨城県内でも盛んに造られていましたが,草丈が高く,収穫時期が遅く(10月末),病虫害に弱いため,作付は途絶えていました。

Yさんは県内産の酒米で酒造りを目指し,まず「渡船」の種籾をさがしました。そして,つくば市の生物資源研究所(ジーンバンク)から14グラムの籾をわけて貰ったそうです。1989年春,一坪の田圃に蒔きました。その後,八郷町(現,石岡市)の農家との出会い,昨年は8戸の農家によって4haの「渡船」を栽培したそうです。
この詳しい事実経過は,中田さんの「マイスター通信」(http://www.nakataya.com/jizake16-2.htm)をどうぞお読み下さい。

この話,「夏子の酒」とそっくりですよね。あれも実話を基にしたコミックと聞きましたが,ほかにもロマンあふれるお話しがあるものですね。

食品企業と農業者との提携関係は最近増えていますが,価格形成と需給調整が課題だと思っています。この府中酒造の場合は,生産費保障価格で原料米を買い上げていると思われます。(聞き忘れた!)そして,お酒の売れ具合に応じて,翌年の作付面積を増やしているようです。当分は,このような良好な関係が続くものと思われます。

私も,純米大吟醸「渡舟」(5合瓶)を5100円で買いました。でも,冷蔵庫に大事に保管していて,まだ栓を開けておりません。何かのお祝いまたは嬉しいことがあったときに飲もうと思っています。その時が楽しみです。

でも,品種名の「船」と酒の名前にある「舟」の字が違うのは何故なのか,聞き忘れてしまいました。



全農が直売所!?

2006年06月12日 | 食と農
先週,つくばで開催された「日韓農業経営・情報化フォーラム」に参加しました。回を重ねて今年で6回目だそうです。日本と韓国で交互に開催しています。韓国から5名の研究者が報告されました。わたしも「アン ニュン ハシムニカ」と挨拶すると,流暢な日本語で「はじめまして,こんにちは」と返されました。5名のうち4名が日本語で報告されました。それらの方々は,日本での留学経験がある方でした。
私は日本語で報告。チョット,差が付いた感じ。

さて,今回お話しするのは,フォーラムの翌日に行われた現地見学のことです。茨城県茨城町のポケットファームどきどきと石岡市にある府中酒造を訪ねました。まず,どきどきについて紹介しますね。

どきどきは(http://www.ib.zennoh.or.jp/poket/index.html),全農いばらぎが投資し,運営している農業テーマパークです。場所は,常磐自動車道・岩間I.Cより約9km(約13分)のところになります。敷地面積は約4haで,どきどきの正面には全農農業機械総合センターがあり,全農いばらぎ本部にも隣接しています。これまで全農いばらぎは,どきどきに対して6億3千万円の投資を行っています。

施設は,農産物直売所,花屋(温室),ソーセージ作りの体験教室,家庭料理のレストラン,ふれあい牧場,有機農場などがあります。訪ねたのは金曜日でしたが,大勢の人がいました。特にレストランの人気は高く,女性客で満員でした。
ビュッフェ式のランチは1365円で,好きなものを好きなだけ食べることが出来ます。味もグッドです。
ちなみに,昨年は約100万人の来客があり,全部で13億円の売上だったそうです。スゴーイ!うち直売所は6億円,レストランが2億円とのこと。

これまで茨城県の系統農協(旧経済連)は,青果物の共販シェア3割で,産直や直売にまったく無関心な組織というイメージしかありませんでした。それが,こんなすごい施設を造っていたとはびっくりです。

獣医士でもあるKさんからお話を聞くことが出来ました。Kさんは旧茨城県経済連で20年以上も豚の診療にたずさわっていたそうです。でも,多頭飼育による病気の発生,抗生物質の多投と耐性菌の発生など,何のために仕事をしているのかわからなくなったと言います。そして,「食はいのち」という理念から,1994年「とんとん村構想」を立ち上げます。これには,農家自らが生産した農畜産物に価格を付けられない「下請け産業」からの脱却という目標が込められています。そのためには,生産だけでなく,加工や飲食サービスという付加価値を付けて,もっと楽しい農業をやれないかと考えたそうです。

しかし,構想が許可されるまでに3年という時間がかかりました。全農県本部のうち9割の人が反対していたのですが,賛同してくれた人が農協トップを説得してくれたそうです。ゴーサインが出た後,全国100ヶ所以上の農業公園や直売所を見て回り,試行錯誤の末にいまの施設になったとのことです。

1999年10月に直売所が先行オープンしてから7年目を迎えます。どきどきができてから,地域の農業後継者が8名も出来たことが,Kさんは一番うれしいそうです。全農いばらきの職員10名とパートさん100名の雇用も確保されています。直売所に出荷する会員農家は100名です。これらの人達は,どきどきの順調な運営によって,安心して生活できる場が出来たと言えます。

全農いばらきは二匹目のどじょうを狙って,つくば市周辺に2店目を開設するそうです。
Kさんとどきどきに出会って,久しぶりに温かな気持ちに包まれました。