食農ステイション

食と農に関するお話しを徒然なるままにいたしましょう。

梅雨時に学会?

2007年06月22日 | 食と農

今日は夏至です。私はこの時期一番体調が良いです。でも,湿度が高いのは苦手ですけど。

さて,明日は本学において共生社会システム学会の大会が行われます。今年で2回目の大会です。シンポジウムのテーマは「共生型エネルギー社会の可能性」です。新エネルギーやバイオエネルギーの専門家が一堂に集まって議論します。個別報告もありますよ。

この学会は,人文・社会学系と自然科学系の研究者のほかに,協同組合やNPO/NGOなどの実践家など多様な人々が集まっています。会員も100名チョットのヨチヨチ歩きの学会です。個人的には大化けするのではと密かに思っています。私は裏方として,講演者への依頼や会場準備などを行いました。東京在住で関心がある方は是非ご参加下さい。

そして,来週の土日には,日本農業市場学会の大会が愛媛大学で開催されます。シンポジウムのテーマは,「グローバリゼーション下における地域流通の展開」です。私は地元のN先生と共にコディネーター兼座長を仰せ付かりました。先日,シンポジウムの講演原稿を読みましたが,なかなかおもしろいです。松山市近郊の方はぜひおいで下さいね。

ところで,今週歯科医院に行って毎月恒例の歯石取りをしました。超音波で取る方法で痛みはありません。最初は重傷の歯周病でしたが,手入れの甲斐あってずいぶん改善しました。
その女医さん曰く,「この梅雨の時期に学会とは珍しいですね。」

確かに,大会は春か秋の季節か,大学の休暇中に行うのが通例です。しかし,学会が専門分化し数が増えたため,既存の学会と競合しない時期に開催することが多くなったわけです。なお,日本農業市場学会は春と秋の年2回開催していたのを,この時期の1回に集約したものです。

つぎつぎと学会が増えると,学会費の支払いもたいへんです。今年始めて,最近参加していなかったり,今後報告しないと思われる学会に退会届を出しました。付き合いが悪いと思われそうですが,給料も上がらないご時世では,学会との付き合いも随時見直していかねばと思った次第です。

梅雨の時期に大会を行うのは,開催校としてはいろいろとたいへんです。明日は晴れると良いのですが。


大学の恩師

2007年06月15日 | 食と農
昨日,関東は6日遅れで梅雨入りしました。でも今日はとても良いお天気で,あつ~い一日でした。キャンパス内のアメダスによれば,午後2時の気温は31度でした。ホントに梅雨ですか?

明朝,佐賀市に飛びます。
大学の恩師・K先生の叙勲受章祝賀会に出席するためです。K先生は80歳になられます。最近は年賀状を交わすだけの挨拶になっていますが,在学中からいろいろとお世話になりっぱなしです。卒業後も見合い相手を紹介してもらったこともありました。(その方とは添えずじまいでしたが...。)

いま私は,農産物流通論を専門にしていますが,大学時代は植物育種学研究室に在室し,卒論研究のテーマは「4倍体イネにおける葯培養の培地組成とカルスの発生に関する研究」でした。指導教官は助教授のT先生で,異数体の作出が主たる目的だったようです。

出来るだけ多くの葯培養を行うため,一部のイネは日長処理装置使って短日処理を行いました。カマボコ形のドームを毎日朝と夕方にゴロゴロと動かしていました。今なら自動ですよね。
また,何千本の試験管の培地づくりと葯培養をひたすら行いましたが,カルスの発生はほんの少しでした。トホホ。
でも,規則正しい生活と食器洗いの技術は,この頃に身についたように思います。

また,研究室では,ゼミのほかに週1回の会食があり,3年生はカレーライス作りの当番でした。お米は試験材料の余り物を使い,毎週カレールーや肉の種類を変えて,結構美味しく食べた記憶があります。

当時の研究室は教員と学生の接触は濃厚で,たった1年半の研究室の生活でしたが,学問とは何か,研究の理念は何かといったことを機会がある度に先生方と議論していました。もちろんその10倍以上はたわい無いダベリです。
約30年前のことですが,懐かしくも鮮明に思い出します。

私の現状を見ると,最近の学生との付き合いは,ずいぶんあっさりとしたものになったように思います。なかには酒に酔った私を家まで送ってくれる奇特な学生もいます。

学生諸君とは末長く付き合いたいと思っていますがどうなることやら。

佐賀空港は初めての利用です。研究室の同級生や先輩・後輩達と久しぶりに会えるのも楽しみです。

紫陽花が満開

2007年06月08日 | 食と農
東京は風が強く,晴れたり曇ったりの蒸し暑い一日でした。

いま,学内にある遺伝子実験施設の周りに,いろんな種類の紫陽花が咲き誇っています。
私が紫陽花の写真を撮っていると,同施設長のN先生が出てこられたので,植栽の由来をお聞きしました。

それによれば,この紫陽花は園芸学研究室のH名誉教授が収集されたコレクションの一部を植えたものとのことで,ガクアジサイやヤマアジサイなど珍しい花がたくさんあります。

建物の北側に大部分の紫陽花が植栽されているのですが,ちょっと日当たりが良すぎるのか,葉焼けしているものもあります。
また,近くに不燃物のダストボックスがあるので,景観もあまりよろしくありません。N先生は,ゴミも散らかるので当局にダストボックスの移転をお願いしているそうですが,なかなか実現されないと嘆いておられました。

ちなみ,紫陽花の花言葉は,強い愛情,移り気な心,家族の結びつき,だそうです。

しばらくは,紫陽花の花を楽しめそうですが,今年の梅雨入りは遅くなりそうですね。


変貌する野菜流通

2007年06月01日 | 食と農
今日から6月,水無月ですね。この季節,湿度が高くて苦手ですが,農作物や生活に必要な雨水をもたらしてくれます。チョット我慢。

さて,昨日の創立記念日に苦労して書いた原稿を送りました。何の原稿かというと,JA全農ふくれんが出している「福岡の野菜」の夏季号の特集記事です。タイトルは「これからの野菜流通と産地の対応方向」としました。オリジナルな論点は少なく,野菜生産者や農協の役職員を対象とした総説のようなものです。

最近,地産地消のことばかり書いていたので,野菜流通に関する論文を集めることから始めました。すると,最近は加工・業務用需要に産地はどう対応するかという内容のものが多いことが分かりました。

外食産業総合研究センターの推計によれば,食の外部化率は,2002年には44%になっています。この変化は,食の簡便化志向の高まりや単身者世帯の増加など構造的なものと言えます。

当研究室出身のKさんは,主要野菜の品目別用途別需要量を粗食料ベースで推計しています。それによれば,加工原料用割合が高いのは,トマト(39%),はくさい(37%),にんじん(33%),だいこん(32%)です。これらは主として,ジュース,ケチャップ,漬け物用として利用されます。また,業務用割合が高いのは,さといも(38%),たまねぎ(33%),なす(32%),ほうれんそう(31%),レタス(30%)などです。これらは外食や中食用の調理素材として利用されます。

一方,加工・業務用需要は,定時・定量・定質でかつ低価格が求められます。そのため,周年取引が可能な輸入品の割合が高くなっています。Kさんは1990年度と2000年度の加工・業務用需要の輸入割合についても推計しています。それによれば,従来輸入割合が高かったトマト,たまねぎはさらに輸入割合を高め,これまで輸入がほとんどなかった品目においても全般的に高まっています。

野菜の自給率を見てみると,1975年頃まではほぼ100%でした。しかし。1985年のプラザ合意を契機として,輸入農産物が割安で入るようになり,関税も大幅に下がったことから輸入野菜が急増しました。2005年度の野菜の自給率は79%となったのです。

加工・業務用野菜の国産シェアを高めるためには,野菜産地は従来型の家計消費需要の延長ではなく,加工・業務用需要をはじめから意識した対応が必要だとKさんは指摘します。具体的には,実需者から固有の品種,規格,栽培方法が求められ,提示される販売価格水準と自らの生産費を勘案して,低コストで適質の商品を供給する産地態勢の構築が重要になるのです。

場合によっては,従来の品目別野菜部会とは異なった加工・業務用専門農家とその部会の育成も必要でしょう。昨年,博士課程に社会人入学したTさんの報告によれば,自助努力によって,加工・業務用野菜の産地化に成功した農協も少なからずあるようです。

残留農薬のポジティブリスト制度が導入されてから,加工・業務用野菜は国産に回帰しています。ただ残念ながら,農協はそれに十分対応できていないのが実情です。卸売市場流通では単なる委託取引で良かったですが,加工・業務用野菜の取引では,取引企業と規格や仕様とともに価格と数量など綿密な契約を行う必要があるからです。

つまり,農協の販売力と組織力が決め手となります。農協は事業体としてのリスクを負う覚悟がなければ,加工・業務用野菜の取引は出来ないでしょう。農協が農業生産者の信頼を勝ち取り,組合員にとってなくてはならない事業体に脱皮できるのか否かが課題です。また,実需者からも頼りになるビジネス・パートナーになれるのか,いま農協の真価が問われているのです。

わが家の春野菜も薹が立ちはじめました。そろそろ夏野菜にバトンタッチです。