本日は大学の創立記念日でお休みですが,仕事が片付かない私は出てきています。
大学法人になって唯一の利点とも言える休日増の恩恵を受けていません。
さて先日,農林水産省が主催する地産地消の検討会に参加しました。思ったより大がかりな会議でした。基本計画には,地産地消によって食料自給率を上げるという目標が掲げられているのです。
結構,わが国も本気かも。
ところで,地産地消とは,地域(地場)生産,地域(地場)消費の略称として使われています。地産地消という用語のはじまりは,Sさん(元農林水産政策研究所長)が1987年頃に適地適産や地場生産・地場消費と言う用語から造語したと言われています。
しかし,それ以前に地域主義の思想や有機農業などの分野で,同様な用語は使用されていたのです。特に身土不二とは深い関連があります。これは仏典に出てくる言葉で,身(からだ)と土(つち)は一体であるという意味で,食養道運動をやっている人たちは,自分の住む四里四方でとれた旬のものを正しく食べることを理想としていました。
一方,全国の地方自治体では,地産地消をキーワードとして地域農政の主要な事業と位置づけて,地場農産物の生産拡大と地域内流通を推進しています。また,小中学校の学校給食において,できるだけ地場産または県内産の農畜産物を利用する運動も行われています。
地産地消が行政の特段の関与もなくこれほど広がった要因は次のようなことがあります。
高度経済成長以降,増大する都市人口に食料を供給するために産地は大規模化し,都市周辺部から遠隔地に移動しました。その結果,都市と農村の距離は離れ,大規模広域流通が進展した。しかし,大規模広域流通は,見かけ上の品質にこだわるため選別基準が厳しく,その結果流通コストが高くなり,鮮度も劣るという短所がありました。そのオルタナティブとして地場流通の推進が1970年代から唱えられてきたのです。
しかし,地場流通には次のような長所とともに短所もあるため,それほど広がらなかったのです。地場流通の長所としては,①流通時間が節約され,鮮度が良く,適熟品の取引が可能なこと,②余分な輸送や包装資材を省くことが出来,流通コストが低減できること,③零細農家や高齢農家など農協共販になじまない生産者の出荷先が確保できること,④生産者と消費者の相互信頼が生まれやすいことなどです。
一方,短所は,①生産量と消費量が限られるため,需給調整が困難なこと,②取り引き可能な品目数が限られるため,品揃えが困難なこと,③周年的な取引が難しいこと,④気象変動による出荷量が大きく変動し,価格も乱高下しやすいことなどです。
このような長短所がありながら,地産地消への関心が深まる背景には,他人まかせの食への不安があると思います。それが,農産物直売所や学校給食への消費者や生産者の関心を集めているのではないでしょうか。これは,消費者から食の現場につながる主体への転換であって,地産地消は国に任せていた食と農の仕組みを地方に分権させる運動とも言えると思うのです。
今日も堅くて長いお話になりました。すみません。
大学法人になって唯一の利点とも言える休日増の恩恵を受けていません。
さて先日,農林水産省が主催する地産地消の検討会に参加しました。思ったより大がかりな会議でした。基本計画には,地産地消によって食料自給率を上げるという目標が掲げられているのです。
結構,わが国も本気かも。
ところで,地産地消とは,地域(地場)生産,地域(地場)消費の略称として使われています。地産地消という用語のはじまりは,Sさん(元農林水産政策研究所長)が1987年頃に適地適産や地場生産・地場消費と言う用語から造語したと言われています。
しかし,それ以前に地域主義の思想や有機農業などの分野で,同様な用語は使用されていたのです。特に身土不二とは深い関連があります。これは仏典に出てくる言葉で,身(からだ)と土(つち)は一体であるという意味で,食養道運動をやっている人たちは,自分の住む四里四方でとれた旬のものを正しく食べることを理想としていました。
一方,全国の地方自治体では,地産地消をキーワードとして地域農政の主要な事業と位置づけて,地場農産物の生産拡大と地域内流通を推進しています。また,小中学校の学校給食において,できるだけ地場産または県内産の農畜産物を利用する運動も行われています。
地産地消が行政の特段の関与もなくこれほど広がった要因は次のようなことがあります。
高度経済成長以降,増大する都市人口に食料を供給するために産地は大規模化し,都市周辺部から遠隔地に移動しました。その結果,都市と農村の距離は離れ,大規模広域流通が進展した。しかし,大規模広域流通は,見かけ上の品質にこだわるため選別基準が厳しく,その結果流通コストが高くなり,鮮度も劣るという短所がありました。そのオルタナティブとして地場流通の推進が1970年代から唱えられてきたのです。
しかし,地場流通には次のような長所とともに短所もあるため,それほど広がらなかったのです。地場流通の長所としては,①流通時間が節約され,鮮度が良く,適熟品の取引が可能なこと,②余分な輸送や包装資材を省くことが出来,流通コストが低減できること,③零細農家や高齢農家など農協共販になじまない生産者の出荷先が確保できること,④生産者と消費者の相互信頼が生まれやすいことなどです。
一方,短所は,①生産量と消費量が限られるため,需給調整が困難なこと,②取り引き可能な品目数が限られるため,品揃えが困難なこと,③周年的な取引が難しいこと,④気象変動による出荷量が大きく変動し,価格も乱高下しやすいことなどです。
このような長短所がありながら,地産地消への関心が深まる背景には,他人まかせの食への不安があると思います。それが,農産物直売所や学校給食への消費者や生産者の関心を集めているのではないでしょうか。これは,消費者から食の現場につながる主体への転換であって,地産地消は国に任せていた食と農の仕組みを地方に分権させる運動とも言えると思うのです。
今日も堅くて長いお話になりました。すみません。