昨日(11日)夕方,全ての訪問調査が終わりました。多少の到着遅れを別として,順調に調査を行うことができました。
以下,簡単に今回の調査のまとめをメモ的に行っておきます。
1.車窓から見える貧富の格差
路上やガード下には多くのホームレスや子どもたちが暮らしています。渋滞の道路の隙間を縫うように,売り子が水や食べものを売っています。
一方で,ショッピングモールには高級ブランド店が並び,平日にも係わらず多くの客がいました。
そして今回の調査で,はじめて耳にした言葉がありました。「消費者階層のA層,B層~E層」です。世帯月次別の収入でつぎのように分けるそうです。(JICAのKさんの資料から引用)
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A層:5万ペソ以上
B層:3万~5万ペソ
C層:8千ペソ~3万ペソ
D層:3千~8千ペソ
E層:3千ペソ未満
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世帯割合は,A層とB層を合わせて1%,C層13%,D層52%,E層34%となっています。これは日本大手食品企業A社が5年おきに全国100戸の世帯を調査した結果だそうです。下層の世帯を対象とするビジネスをBOPといいます。
ただ,フィリピンは国民の約10%が海外に出稼ぎに行き,その仕送り額はGDPの10%を占めるそうです。通常の収入以上の購買力はここから捻出されるのでしょう。今回調査した企業はどこも,フィリピン独自の市場を対象にして奮闘していました。
2.巨大多国籍企業の挑戦
個別には紹介しませんでしたが,食品会社のN社とビ-ルで有名なS社の訪問ができました。大使館経由の伝手が効いたようです。お手を煩わせたMさんに感謝申し上げます。
まずN社の販売戦略は興味あるものでした。オートバイに屋根付きのサイドカーを着けたトライシクルで,小規模のサリサリストアに小袋の製品を販売するのです。この仕事をするのがBowerです。Bowerの上には商品を中継ぎをするDistributerがいます。1人のDistributerが7人のBowerを管理します。世界展開するN社も,このビジネスモデルはフィリピンだけのものです。BOPビジネスで成功した一例です。
一方,S社は1890年にビール会社を設立してから,食料品以外に電力,石油,高速道路,航空会社など多様な事業を行うコングロマリットになっています。2011年度売上は5,357億ペソです。2014年の予測ではビールなどの食品以外の新事業を71%に増やすそうです。ここで指摘しておきたいは,ほとんどの事業のシェアが高いこと。そして,ビールの流通網は「特約店」を経由して自社の製品が全国を網羅していることです。ビールの国内マーケットシェア90%だそうで,この国には独占禁止法はないようです。
3.流通環境の遅れは何が起因しているのか
以下は,昨晩KG大のFさんとワインを飲みながらの議論です。
戦後独立したフィリピンはアメリカ主導の経済復興政策がとられました。モノカルチャー型農業から工業化への移行を目指しました。しかし,フィリピンは財閥解体と農地解放を経験しておらず,古い体制のまま近代に移行しています。
過去の大統領選を見ても,ポピュリズムに支配され,民主的な政権運営ができたとは言えないようです。ガイドのMさんは,いまの大統領は金持ちだから,不正な蓄財はしないだろうというぐらいです。
流通は無駄を無くして,効率的な社会にする仕組みです。企業が自社の製品を販売するための流通システムを構築するというのは,いまの社会システムに適応しているのかもしれませんが,効率的とは言えません。社会的な分業が発達したとは言い難い状況です。また,国民も多様な商品構成から自分の好みに合った商品を選ぶということもできません。
では,どうしたらよいのか....。
答えは見つかりません。日本に帰ってからも,頭の隅で考えていきたいと思います。
本日,午後2時半の飛行機で帰国します。いまから荷物の整理をします。
昨晩のシーフードが悪かったのか,ワインを飲み過ぎたためか,ちょっと下痢気味です。帰りの道中がちょっと不安です。(^_^;