食農ステイション

食と農に関するお話しを徒然なるままにいたしましょう。

今回の調査で感じたこと

2012年09月12日 | あついぞ,マニラ

昨日(11日)夕方,全ての訪問調査が終わりました。多少の到着遅れを別として,順調に調査を行うことができました。
以下,簡単に今回の調査のまとめをメモ的に行っておきます。

1.車窓から見える貧富の格差
 路上やガード下には多くのホームレスや子どもたちが暮らしています。渋滞の道路の隙間を縫うように,売り子が水や食べものを売っています。


 一方で,ショッピングモールには高級ブランド店が並び,平日にも係わらず多くの客がいました。
 そして今回の調査で,はじめて耳にした言葉がありました。「消費者階層のA層,B層~E層」です。世帯月次別の収入でつぎのように分けるそうです。(JICAのKさんの資料から引用)

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A層:5万ペソ以上
B層:3万~5万ペソ
C層:8千ペソ~3万ペソ
D層:3千~8千ペソ
E層:3千ペソ未満

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 世帯割合は,A層とB層を合わせて1%,C層13%,D層52%,E層34%となっています。これは日本大手食品企業A社が5年おきに全国100戸の世帯を調査した結果だそうです。下層の世帯を対象とするビジネスをBOPといいます。

 ただ,フィリピンは国民の約10%が海外に出稼ぎに行き,その仕送り額はGDPの10%を占めるそうです。通常の収入以上の購買力はここから捻出されるのでしょう。今回調査した企業はどこも,フィリピン独自の市場を対象にして奮闘していました。

2.巨大多国籍企業の挑戦
 個別には紹介しませんでしたが,食品会社のN社とビ-ルで有名なS社の訪問ができました。大使館経由の伝手が効いたようです。お手を煩わせたMさんに感謝申し上げます。
 まずN社の販売戦略は興味あるものでした。オートバイに屋根付きのサイドカーを着けたトライシクルで,小規模のサリサリストアに小袋の製品を販売するのです。この仕事をするのがBowerです。Bowerの上には商品を中継ぎをするDistributerがいます。1人のDistributerが7人のBowerを管理します。世界展開するN社も,このビジネスモデルはフィリピンだけのものです。BOPビジネスで成功した一例です。


 一方,S社は1890年にビール会社を設立してから,食料品以外に電力,石油,高速道路,航空会社など多様な事業を行うコングロマリットになっています。2011年度売上は5,357億ペソです。2014年の予測ではビールなどの食品以外の新事業を71%に増やすそうです。ここで指摘しておきたいは,ほとんどの事業のシェアが高いこと。そして,ビールの流通網は「特約店」を経由して自社の製品が全国を網羅していることです。ビールの国内マーケットシェア90%だそうで,この国には独占禁止法はないようです。

3.流通環境の遅れは何が起因しているのか
 以下は,昨晩KG大のFさんとワインを飲みながらの議論です。
 戦後独立したフィリピンはアメリカ主導の経済復興政策がとられました。モノカルチャー型農業から工業化への移行を目指しました。しかし,フィリピンは財閥解体と農地解放を経験しておらず,古い体制のまま近代に移行しています。
 過去の大統領選を見ても,ポピュリズムに支配され,民主的な政権運営ができたとは言えないようです。ガイドのMさんは,いまの大統領は金持ちだから,不正な蓄財はしないだろうというぐらいです。
 流通は無駄を無くして,効率的な社会にする仕組みです。企業が自社の製品を販売するための流通システムを構築するというのは,いまの社会システムに適応しているのかもしれませんが,効率的とは言えません。社会的な分業が発達したとは言い難い状況です。また,国民も多様な商品構成から自分の好みに合った商品を選ぶということもできません。
 では,どうしたらよいのか....。 

 答えは見つかりません。日本に帰ってからも,頭の隅で考えていきたいと思います。

 本日,午後2時半の飛行機で帰国します。いまから荷物の整理をします。

 昨晩のシーフードが悪かったのか,ワインを飲み過ぎたためか,ちょっと下痢気味です。帰りの道中がちょっと不安です。(^_^;

 


 


グローバル展開する日系企業

2012年09月10日 | あついぞ,マニラ

今回のスタディツアーの特長は,世界的な大企業を調査することができたことです。これも多くの方々のお陰です。(・_・)(._.)

ツアー5日目で,疲れも出てきましたので,写真多め,文章少なめで紹介します。

1.3年後に50店舗を目指すUQ
 FRフィリピンの社長Kさんの案内で,開店前の朝礼を見ることが出来ました。メンバーの話によれば,みなUQで働けることを誇りに思っているそうです。時給は同業他社よりも多めに設定しているとのこと。スタッフ全員,テキパキと働いていました。
 UQの価格設定は全世界同一価格だそうですが,結構売れているとのことです。現在フィリピンには視察した店が1号店で,今後3年間で50店舗に増やすそうです。品揃えも開店後の1年間はその国が暑かろうが,寒かろうが同じものを売り,その国の特徴を掴むのだそうです。外気温は30度を超えていましたが,店にはダウンジャケットやコートが並んでいました。それにしてもKさんのバイタリティーには参りました。

 

2.フィリピンを拠点にして,世界に出荷するT社
 製造業の工場も見学しました。この工場で主に作っているのはHDとSSDです。2つの工場で1万人が働いているとことでした。技術教育と研修をしっかり行っていて,製造機械は工場内で内製化していました。働いている職員は皆視力が2.0と良くて,細かな仕事を辛抱強くするそうです。安い賃金を利用してフル生産をしているようでした。
 この工場で製造した製品の6割は中国に輸出,加工され,出来上がった製品が日本をはじめ世界に再び輸出されるそうです。私たちが知らないところで,日系企業は頑張っていました。


IRRIは広いぞ,大きいぞと

2012年09月08日 | あついぞ,マニラ

1日遅れの更新になっていますが,お許しを。

2日目の午後はマニラ市南東のロスパニョスにあるIRRIの視察に行きました。
これも予定より早く着いたので,隣のUPLB(フィリピン大学の農学部,日本のT大に当たるエライ大学)のキャンパスを訪問しました。広い。学生が多いし,大学関連産業?で働く人が多くてびっくりでした。

日差しが半端なく熱いので,予定より早くIRRIに行きました。案の定,コーヒーショップで待てとの指示あり。結構,フィリピン人は遅刻はしても,予定の時間には厳しいのよね。

午後2時になると,IRRIの紹介ビデオの映写の後,IRRI博物館を見学しました。これまでは,お決まりのコースのようです。その後,日本人の若手研究者(育種学)による圃場視察です。あの有名なIR8も植えられていました。でも,商学の先生には,「それ,何?」という感じだったで,私は勝手に講釈をたれました。(^_^;

圃場見学の最後に当初のプログラムでオープンディスカッションをしてくれる予定だった,Tさんが現地調査からもどってきて,説明に参加してくれました。日本人の若手研究者が,異国で頑張ってくれている姿を見て,とても頼もしく感じました。\(^_^)/

日本のIRRIへの寄附金はアメリカに次いで2位だそうです。もう少し多くの日本人が研究しても良いかと思いました。

Sくん,Tくん頑張ってね。

通学の足,ジムニーがいっぱい。

 


Farmers' Market という名の卸・小売市場

2012年09月08日 | あついぞ,マニラ

ツアー2日目の早朝,マニラ中心部から十数キロのところにある,Cubao Farmers' Market(以下,CFM)に行きました。渋滞が想定されるので,30分多めに移動時間を取っていたら,なんと30分で着きました。(^_^;

FMと称していますが,中身は卸と小売を行っている市場でした。卸と小売を同時に行うというのは,例えばヤギを1頭買いすると卸で10%程度の値引きをしてくれますが,部分肉の小売だとディスカウントがないということです。

中国に過去行った同様の市場に比べても臭くなく,結構きれいでした。でも,行き交う人の数は半端ないくらい多いです。多くの人に指示されている証左でしょう。

開設者は民間のA社で,周辺のショッピングモールも所有しています。なぜ,FMという名を付けたかというと,創業者がアメリカLAのFMを約40年前に視察して,「これだ!」と思ったそうです。CFMの開設は75年1月です。

開設者の収益は「秘密」といって,教えてくれませんでしたが,542ある場所貸し料と出荷者から徴収する駐車料(入場料)です。帰ってから,計算してみようと思います。

私たち農経の視察メンバーは,肉売り場のブタやヤギの頭が陳列されているのには慣れていますが,商学の先生方はかなり強烈なインパクトがあったようです。

予定を超える時間に対応した,CFMの管理者Bさんと農業省のMさん,そしてCFMの調査をアレンジしていただいたJICAのKさんに心から感謝します。

その後,IRRIに向かいました。

ドリアン,ドリアン,ドリアン。

活魚もありました。king fishという名だそうです。窮屈そうです。

カット野菜を行っている従業員。調理の簡便化の風が...


流通学会スタディツアーinマニラ

2012年09月06日 | あついぞ,マニラ

ブログの更新を60日間以上サボっていたら,テンプレートが変なモノになっていました。皆さんすみません。

書かなきゃならない原稿が2本あって,ブログやFBへの接触を避けておりました。

さて,本日から12日までフィリピン・マニラに来ています。日本流通学会のスタディツアーに参加するためです。メンバーは総勢20名です。日替わりのコーディネータが、視察先を選定し、アポを取るというやり方で仕事をシェアしています。

私は明日のCubao Farmers' Market とIRRIを担当しました。結果は明日以降をお楽しみに。

さて、マニラ国際空港には現地時間で午後1時半ごろ(時差は-1)に着きました。早速、ホテルにチェックインしたのち,近くのデパートに食料や水を買い出しに行きました。

さすが、マニラ!! 高級ブランドのお店もあるのに、コピー商品を売っている店も隅のほうにひっそり、でも客引きは大胆でした。メンバー一同、唖然です。

その後、スーパーマーケットに行きましたが、食品の品数は豊富で、展示の仕方も面白いものばかりです。

これから、近所のレストランで団結式です。明日は午前5時30分にホテル出発です。気が抜けません。