あとさきになりましたが,12/10-11,恵泉女学園大学で行われた日本有機農業学会大会の報告をします。プログラムの詳細は,学会のホームページをご覧下さい。 http://homepage.mac.com/yuki_gakkai/
私は,2日目の特別セッションの座長を担当しました。でも,報告者のアレンジは大会実行委員長のSさんがすべてされたので,自分で「チーママ」と自己紹介しました。
報告者は,藤沢市で有機農業を実践される若手のAさん,練馬区で風の学校を主宰するSさん,八王子市で酪農と乳加工を行っているIさんの3名です。一度に有名な3名からお話しを伺えるのはとても幸せなことでした。
ここでは,3名の報告を聴いたとと合わせて,私が感じたことを綴りましょう。
最初のAさんは有機農業2世代目の青年農業者です。畑のすぐ隣が住宅地という都市農業のハンディキャップを補いながら,消費者との提携活動を進めています。
しかし,初期の提携とは様変わりしています。大きな要因は,どこでも誰でも有機農産物が買えるようになったことです。提携している消費者も高齢化し,「お気楽モード」に入り,生産者にとって有機農業が重荷になることもあるそうです。
そんな彼はいま,「農・未来塾」を主宰し,若手農業者や学生との学習・交流会を定期的に自宅で行っています。今後提携活動を拡げていくには,「市民が農家に来てもらう」ことが大事だと認識しています。私流に言えば,「閉じた提携から,半開放的な提携へ」の模索でしょうか。
生産者と消費者双方の農業や農地に対する思いを出来るだけ同じかたちになるようにすることが大事だとAさんは考えています。
次は練馬で300年以上農業を続けている農家のSさんです。Sさんは減農薬農業を行っていますが,「有機農業学会で報告するなど,畏れ多い」と冒頭に話されましたが,その農業の実践は有機農業そのものだと感じました。
Sさんは「畑を都市に開き,都市に見合った農業を行う」という方針で,1993年から体験農園を仲間と一緒に始めたのです。それは,「農家が経営し,市民が学ぶ農園」です。生産資材と農具は農家が提供し,市民は受講料を払い,出来た野菜をもらういう仕組みです。受講者は最長5年間の受講更新が出来ます。いわば,農業のカルチャー・スクールです。
農家は市民からの入園料(受講料)として年間3万1千円プラス区役所から1万2千の補助金が入ります。50アールの畑を125区画にしていますので,合計537万5千円の粗収益になります。所得率75%で,農業所得は約400万円となり,まずまずの金額です。
Sさんの畑面積は140アールありますので,体験農園以外は自らが栽培して,庭先販売や農産物直売所に出荷しています。また,地域の小学校の学校給食へも野菜を提供しています。卸売市場への出荷は全体の1%しかないそうです。
彼は「21世紀は農業の時代,都市農業の時代だ」という意欲でがんばっています。パワフルで軽妙洒脱なお話に魅了されました。
最後はIさんです。ホルスタイン種,ジャージー種,ブラウンスイス種などの乳牛を約70頭を飼育しています。これだけの牛がいますと,ふん尿の処理とともに臭いが問題になります。Iさんは周辺住民からの苦情をきっかけにさまざまな臭い対策を行い,現在はカカオ豆の殻とコーヒー豆の微粉を敷料として使い,コーヒーの匂いがする牧場として住民に親しまれています。
また,20リットルの生乳殺菌装置を導入して,牛の名前が入ったヨーグルトを500mlを1300円で販売しています(ちょっと高いような...)。私は食べたことがないので,一度食べてみたいなと思いました。
Iさんは,悪臭問題を契機にして住民や消費者との関係性を大事にしたいと思っています。これはプレミアム・ヨーグルトを広域で販売するためにも重要な戦略だと思います。
以上,3名の先進農家の話を聴いて共通していることは,有機農業も農業も開かれていることが大事だと言うことでした。それも単に開いているだけでなくて,生産者と消費者が関係性を持ちながら,つながっていることが大事です。
とても充実した時間でした。アレンジしてくれたSさんありがとうございました。
(写真は,恵泉女学園大学の有機農業農園です。学生は畳半畳の面積を2人で栽培管理するそうです。)
私は,2日目の特別セッションの座長を担当しました。でも,報告者のアレンジは大会実行委員長のSさんがすべてされたので,自分で「チーママ」と自己紹介しました。
報告者は,藤沢市で有機農業を実践される若手のAさん,練馬区で風の学校を主宰するSさん,八王子市で酪農と乳加工を行っているIさんの3名です。一度に有名な3名からお話しを伺えるのはとても幸せなことでした。
ここでは,3名の報告を聴いたとと合わせて,私が感じたことを綴りましょう。
最初のAさんは有機農業2世代目の青年農業者です。畑のすぐ隣が住宅地という都市農業のハンディキャップを補いながら,消費者との提携活動を進めています。
しかし,初期の提携とは様変わりしています。大きな要因は,どこでも誰でも有機農産物が買えるようになったことです。提携している消費者も高齢化し,「お気楽モード」に入り,生産者にとって有機農業が重荷になることもあるそうです。
そんな彼はいま,「農・未来塾」を主宰し,若手農業者や学生との学習・交流会を定期的に自宅で行っています。今後提携活動を拡げていくには,「市民が農家に来てもらう」ことが大事だと認識しています。私流に言えば,「閉じた提携から,半開放的な提携へ」の模索でしょうか。
生産者と消費者双方の農業や農地に対する思いを出来るだけ同じかたちになるようにすることが大事だとAさんは考えています。
次は練馬で300年以上農業を続けている農家のSさんです。Sさんは減農薬農業を行っていますが,「有機農業学会で報告するなど,畏れ多い」と冒頭に話されましたが,その農業の実践は有機農業そのものだと感じました。
Sさんは「畑を都市に開き,都市に見合った農業を行う」という方針で,1993年から体験農園を仲間と一緒に始めたのです。それは,「農家が経営し,市民が学ぶ農園」です。生産資材と農具は農家が提供し,市民は受講料を払い,出来た野菜をもらういう仕組みです。受講者は最長5年間の受講更新が出来ます。いわば,農業のカルチャー・スクールです。
農家は市民からの入園料(受講料)として年間3万1千円プラス区役所から1万2千の補助金が入ります。50アールの畑を125区画にしていますので,合計537万5千円の粗収益になります。所得率75%で,農業所得は約400万円となり,まずまずの金額です。
Sさんの畑面積は140アールありますので,体験農園以外は自らが栽培して,庭先販売や農産物直売所に出荷しています。また,地域の小学校の学校給食へも野菜を提供しています。卸売市場への出荷は全体の1%しかないそうです。
彼は「21世紀は農業の時代,都市農業の時代だ」という意欲でがんばっています。パワフルで軽妙洒脱なお話に魅了されました。
最後はIさんです。ホルスタイン種,ジャージー種,ブラウンスイス種などの乳牛を約70頭を飼育しています。これだけの牛がいますと,ふん尿の処理とともに臭いが問題になります。Iさんは周辺住民からの苦情をきっかけにさまざまな臭い対策を行い,現在はカカオ豆の殻とコーヒー豆の微粉を敷料として使い,コーヒーの匂いがする牧場として住民に親しまれています。
また,20リットルの生乳殺菌装置を導入して,牛の名前が入ったヨーグルトを500mlを1300円で販売しています(ちょっと高いような...)。私は食べたことがないので,一度食べてみたいなと思いました。
Iさんは,悪臭問題を契機にして住民や消費者との関係性を大事にしたいと思っています。これはプレミアム・ヨーグルトを広域で販売するためにも重要な戦略だと思います。
以上,3名の先進農家の話を聴いて共通していることは,有機農業も農業も開かれていることが大事だと言うことでした。それも単に開いているだけでなくて,生産者と消費者が関係性を持ちながら,つながっていることが大事です。
とても充実した時間でした。アレンジしてくれたSさんありがとうございました。
(写真は,恵泉女学園大学の有機農業農園です。学生は畳半畳の面積を2人で栽培管理するそうです。)