食農ステイション

食と農に関するお話しを徒然なるままにいたしましょう。

わが家のクリスマス

2006年11月28日 | 食と農
昨日,帰宅したら家中がクリスマスモードになっていてびっくり。奥さんが半日かけて飾り付けしたそうです。クリスマスが過ぎると,また片づけるのに半日かけるのですが....。

わが家は敬虔な(?)仏教徒ですが,世間並みのクリスマスを毎年迎えています。
といっても,娘にサンタクロースに代わってプレゼントすることとイブに手作りのケーキとご馳走を戴くくらいですが。

でも,近年の街の風景を観察すると,正月らしさは年々薄れてきているのに,街のクリスマスの装飾やイベントは年々賑やかになっている気がします。

3年前の11月中旬にベルリン,ブリュッセル,パリを調査で回ったことがあります。当地のクリスマスを迎える準備は半端じゃありませんでした。
デパートを覗くとツリーの装飾品や家のデコレーションの売場が複数階にまたがってありました。また,ビルの壁面や窓の電飾はともてすばらしく,宗教行事してのクリスマスが生活に根ざしていることを実感しました。

翻って日本のクリスチャンの人口は1%未満です。(http://www.academy-nippon.com/html/organization/469.htmによれば1996年現在0.86%)そして,年々クリスチャンは減少しているそうです。

クリスマス・ビジネスの隆盛と裏腹にクリスチャンが減っているのは,何か日本的な感じがします。食文化を見ても「いいとこ取り」をして,何が日本食か正確に答えることは難しいぐらいです。

とはいえ,お祭り好きの私はクリスマス・ビジネスを冷ややかに見ながらも,毎年クリスマスを楽しんでいます。

GAPと本当の農業生産

2006年11月17日 | 食と農
11/14-15,福岡県(福岡市,朝倉市)と熊本県益城町にGAPに取り組む農家を調査してきました。

GAPとはGood Agricultural Practiceの略で日本語では適正農業規範と訳されています。要はきちんとした農業生産を行いましょうという取り決めです。
日本におけるGAPの取り組みは一部の量販店と日本生協連で取り組まれているに過ぎませんが,EUではすでにEurepGap(ユーレップギャップ)が進んでいます。

EurepGapは1997年に誕生したもので,欧州小売業組合(EUREP)が定めたGAPです。法律上の拘束力はなありませんが,食品の安全性を確保し,人間や環境に負荷のない方法で栽培,加工,出荷するための管理ガイドが示されています。野菜,果実部門だけで41箇所,13,000の生産者が認証を受けているそうです。 http://www.eurepgap.org/Languages/English/index_html

言わばGAPは,工場の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice)の農場版なのです。このGMPは安心して使うことができる品質の良い医薬品,医療用具などを供給するために,製造時の管理,遵守事項を定めたものです。閉鎖系の工場と開放系の農場ではそもそも適応範囲が異なりますが,人間が口にする「もの」を生産する上でのルールとしては同様のものと言えるでしょう。

日本で最も先進的な取り組みを行っているのがスーパーマーケットのA社です。今回はA社と取引を行う農家を調査しました。
調査結果は,後日公開されるレポート(ALIC『野菜情報』07年2月号)を参照してもらうことにして,ここでは感想を述べるに留めたいと存じます。

今回の調査で実践農家に出会うまで,私はGAPに対して懐疑的でした。有機JAS制度以上の記帳が求められ,事務作業の増加に見合うメリットはないと思っていたからです。しかし,農家はハウスや倉庫が整理整頓された。農薬や肥料などの生産資材の場所が誰でもわかるようになった。生産管理がきちんと行えるようになった。また,GAPに取り組むことで売上高が拡大したなど,経営上のメリットを次々に述べたことにはびっくりしました。

しかし,いきなりGAPのマニュアルを農家に差し出しても,農家は戸惑い,「こりゃ,せからしかー」と拒絶するのが落ちです。そこで,重要なのはGAPの伝道者というか,インタープリターの存在です。この調査のアポイトメントを取ってくれたTさんがいなかったら,これほど九州域内でGAPは広がらなかったと思います。

Tさんは,A社と栽培委託契約を結び九州域内のA社グル-プとの取引を行う仲買業者N社の統括部長です。TさんはGAPで不可欠なこと,重要危害とは何かについて,農家と話し合いながら少しずつ進めていっています。これには本当に感心しました。

GAPは食品の品質と安全における消費者信用を維持するように主として設計されています。これ以外の重要な目標としては,農作業者への有害な環境の影響を最小にして,農業投入を最適化すること,そして農作業者への健康と安全に関する配慮を保証することです。

これら農家は,最初バイイング・パワーが強い巨大スーパーの指示により,いやいやGAPに取り組んだのですが,現在はGAPを利用して次のステージに進んでいました。また,Tさんの話によれば,50-60代の農家も携帯やパソコンを利用してGAPに取り組んでいるとのことです。何事も意欲次第ということでしょうか。

本当に行って良かった調査でした。

ホップ,ステップ,ビール

2006年11月16日 | 食と農
先週11/8-10の2泊3日,農村調査実習で岩手県二戸市と軽米町に行ってきました。
新幹線「はやて」を使うと自宅から4時間で二戸駅に着きます。天気に恵まれ,カラマツの紅葉がとてもきれいでした。

今回の農家調査はホップ作農家17戸が対象です。ホップ農協の計らいで農家の皆さんは二戸市内にあるホップ農協に来てもらいそこでヒアリングを行うというスタイルです。
戸別に農家を訪問し調査を行うよりずいぶん楽ですが,周りでヒアリングされている農家や農協職員への気兼ねがあるようで,皆さんはなんとも落ち着かない様子でした。

ホップ作の調査は当研究室のO教授の地域特産物研究の一貫ですが,昨年の遠野市に引き続いての2回目です。ビールは日頃飲んでいても,ホップに触れるのは初めての学生ばかりです。

まず,農協のM専務から話を聞きました。Mさんによれば,近年ビール以外の発泡酒や第3のビ-ルの生産量が増えて,国内産ホップの需要量は落ち込んでいるそうです。また,当該ホップ農協はS社と契約していますが,ビール4社の中のシェアでも振るわず,その結果,91年,96年,そして01年から5ヶ年連続の生産調整を行っています。ホップの改植などに合わせて生産調整を行っていますが,当該農協の栽培面積はピーク時(76年)1万4千アールあったものが,昨年は4千アールまで縮小しています。

ところで,ホップ作は装置型農業と言って良いほど固定資本投資が大きい作物です。特に乾燥,調製,加工過程には巨大な施設が必要です。栽培面積が減少しますと,当然ながら施設の稼働率が落ち,日常的な運営経費の負担も残された生産者に重くのし掛かってきます。
また,北東北の冬期は雪に閉ざされるため,多くの男子専従者は4ヶ月間出稼ぎや土木作業に従事し一家の生計を立てています。

このような厳しい農業の現状に改めて接し,日本農業の行く末に不安を感じぜざる得ません。でも,調査に応じてくれた農家のすべてが優しく,親切だったこと。ホップ作以外にアワ,キビ,アマランサスなどの雑穀の生産拡大をめざしていることなどが救いでした。

東京に帰ってきた翌日には木枯らしが吹きました。冬は着実に近づいています。




アップルパイ

2006年11月06日 | 食と農
東京の3連休はともてよい天気でした。
久しぶりに家で過ごすことができました。

と言っても,うちの奥さんは,たまっている家事を次々に私に指示します。
ついこの前出したと思った扇風機3台を掃除して収納します。代わりに電気ストーブと加湿器を出しました。
季節の移り変わりが早く感じます。

また,古紙回収のためダンボ-ル箱や古新聞をヒモで縛るのも私の仕事です。
さらに,グッピーの水槽の水替えも1か月ぶりに行いました。コケがびっしり生えていました。

夕方になると,「生協から紅玉を買ったのでアップルパイを作りなさい」と天からの指示。
昔から,暇なときは娘とパンやお菓子作っていました。そして,リンゴの甘煮づくりはなぜか私の役目です。おだてられて,娘と一緒にリンゴの皮をむき,甘煮を作ります。

パイ生地は昔は手作りでしたが,今は冷凍シートを買ってくるので楽ちんです。
これを伸ばしたものをパイ皿に載せて,甘煮を詰めて,オーブンで焼けばハイできあがりです。娘も喜んで手伝ってくれます。奥さんは「美味しーい!」と食べます。

3連休どこかに遊びに行くでもなく,借りてきたDVDを見て,夜は晩酌をして,ゆっくりと過ごした休みでした。
日常の暮らしの中にこそ,心の安寧はあるのではと思います。

地産地商ビジネス

2006年11月02日 | 食と農
先日,岡山市に行ってきました。岡山駅が橋上駅になり駅ビルも立派になっているのでびっくり!10月15日にオープンしたばかりとか。

さて,地産地消セミナーで講義した翌日,中国四国地域の地産地消シンポジウムがありました。帰りの飛行機の関係で基調講演しか聴けませんでしたが,基調講演者の一人のTさんの講演は迫力がありました。

Tさんは山口県内で営業している食品スーパーAの萩支店店長です。経歴を見ると過去にもいろんなシンポジウムで講演やパネラーを務めた経験がある方です。

最初に,地産地消は店内のコーナー展開で販売したり,マスコミ報道や宣伝するだけでは自己満足であり,ナンセンスと切り捨てます。そして,地産地消はエボリューション事業であり,地域が熱いスピリットをもって生産者,店舗,行政,消費者がコラボレーションすることが重要と総括します。(カタカナが多いのはなぜ?!)

具体的なA社萩店の取り組みは,①店長や担当者の顔写真を店頭や広告に掲載し不退転の決意を表明する。②年間50本以上の広告と商品開発の実施。③毎月1回以上の地産地消イベントの実施などです。

そして,「本日の夜ごはん」と称した献立紹介のチラシを配ったり,料理レシピも作っています。チラシの決めぜりふは「決め技は一杯の愛」。ちょっと照れますナー。

これ以外に,「5A Day」や地産地消米特別プロジェクトも実施しています。地産地消米は「維新伝心米」とネーミングして,観光とコラボレーションしているそうです。

最後に問題点としていくつか指摘されました。特に印象に残ったのは,地産地消だからという「甘えの時代」は終わったということでした。「地産地消なのに何で高いの?」というお客様の声に対して,スーパーマーケットはどう応えるのか苦労している感じでした。

全国各地には,Tさんのように地産地商で頑張っている人も多いんだと元気をたくさんもらいました。

嵐の神無月2006

2006年11月01日 | 食と農
今日から霜月です。お正月まであと61日です。早いですね。

昨年もそうでしたが,10月はホントに忙しい月です。学会や研究会があったり,講演などで出張する機会が多いからです。今年の10月は都外の出張が11日,都内出張は5日です。10月9日以来休みを取っていません。よく体が持つなぁーと自分でも感心しています。
出張先でおいしい食べものとお酒を戴くのが何よりのリフレッシュになっています。でも,その分増体!

M大のHさんから,「あんたー,そんなに出張して講義は無いの?」と聞かれました。後期の講義は,経済学の分担3コマ,農業経営経済演習の分担8コマ,木曜日の午後の研究室ゼミです。そして,分担は11月以降に組んでいますので,講義はこれからです。

忙しさは「心を亡くす」と言います。研究室の大切な学生にぞんざいな対応したりするときもあり,ちょっと反省。

世の中は目まぐるしく動いていますが,しばらく立ち止まって見つめることも必要だと痛感しています。
今度の三連休はゆっくり休もうと思っています。