火のように萌える紅葉 この季節になると必ず思い出し苦笑することがあります
中学二年生 晩秋のある日曜日の朝 奥庭で遊んでいました
相手は聖心女子学院初等科六年生の F ちゃん
当家ご主人のお孫さんである 以前ブログで紹介しましたが
ご主人は 本郷岩崎邸から人力車で 御茶ノ水女子大へ通学な
さった 深窓の元ご令嬢である
奥庭には 松の大木が数本聳え立っていた 緑を着飾った貴公
子の如くであった その他多くの名木の存在があったが それが何と何であったか?定かな記憶はない
何せ 64年ぐらいの昔の事である
重厚感のある苔に埋め尽くされ実に貫禄のある庭園であった
不調法 渋さとか 侘び 寂びなどに無縁の中学生と小学生には
格好のよき遊び場であった
火焔の衣をこれ見よがしに着飾った一本の「楓」これが友達だった その枝振りに惚れていた
横にスーッと伸びた枝は 二人にとって鉄棒として映ったのだ
その日もぶらさがった 飛びつくのを怖がった F ちゃんを抱き上げて 枝を掴ませてあげた 赤 黄の小さな扇たちは 緑の褥に
舞い降りた パラパラと 次々に
足元はあっという間に西陣織をみるような世界になった
緑 褐色などの苔 低くて可愛い半円の竹垣 黒ずんだ土 そこに根を張る老松 自然ならではの一幅の日本画である
そこには引立役 美少女 美少年の姿も(それが余計なんだ)
庭に続く風流なお茶室から声がした 奥様である
「○○くん 今日はお友達をご招待してお茶会をするの お庭は綺麗にして置いてくださいね」でした
「いけない 落ち葉だらけで汚してしまった」二人は竹箒を持ってきて せっせと掃き掃除をし綺麗な庭に戻しました
夕方 お客様がお帰りになりました 奥様が「○○くん あのね
庭のお願いしたでしょう」と笑いながらその意味を話されました
綺麗にしておいて・・・は 掃き掃除はしないで そのまま放置し
ておいてね・・・の意味でした
「自然の美」 「清掃の美」正直言って未だその判断力を持っていませんでした このような小さな事柄が 以後の私の心に強く作用し影響を与えてくれました
一語多義 或いは一義多語 多様な人との交わりの中で 言語
活動の難しさを意識することの大切さ 紅葉の季節に反芻が常の私です
銀杏の黄金色で敷き詰められた公園に魅せられ家を出ました
「付き合ってくれたら 褒美にモンブランを買ってあげる」と言ったら 女房殿ついてきました
ところが 50㍍も行かぬ内に 慌てて赤いものだけ撮って走って帰りました 明日は従兄弟の四十九日で静岡です