六畳の神殿

私の神さまは様々な姿をしています。他者の善意、自分の良心、自然、文化、季節、社会・・それらへの祈りの記。

ヤブに突っこむ

2009年10月02日 | 自然関連
放鳥のトキ、一羽が飛行失敗、茂みに突っ込む

 新潟県佐渡市で環境省が行っている国の特別天然記念物、トキの第2次放鳥は3日目の1日、開放したケージから飛び立った2羽のうち1羽が飛行に失敗、外敵に襲われるのを防ぐために、佐渡トキ保護センターの職員が保護した。

 この日午前5時44分、ケージの入り口を開放。しばらくして2羽が外に出てケージの上空を旋回したが、うち1羽が茂みに突っ込んだ。大きな声で鳴くが、飛ぶ様子がないため7時、職員が捕獲していったんセンターに戻した。

 環境省によると、2次放鳥予定の20羽のうち2羽が飛行訓練を受けていない。飛行に失敗したのはそのうちの5歳の雌とみられる。


 ・・・ そら、訓練してなきゃ飛べないわな。

 私は一度、このトキ繁殖に関わっている専門家会議の傍聴をしたことがある。
 組織の責任者らしい重厚さを漂わせた50~60歳台のお偉い感じのおじさま方が15人くらい、しかつめらしい顔で、心底からトキの行く末を案じこの鳥の未来をまじめに語っていた。そのギャップというか、贅沢さへの違和感が非常に印象深かった。

 (・・・このオッサンたちは、こうして好きな鳥についての事業にアツく想いを語って、給料とか出張費をいくらくらいもらってるんだろうかな。こういう流れに乗れた、トキやコウノトリは幸せな種だのぅ・・・)

 一事が万事この重厚さで行われたなら、それはそれで良い事だろうけれども、「自然が豊かな恩恵をくれるのはアタリマエ、無料(タダ)だ」と大衆が信じているこの国で、絶滅の危機に瀕し、心ある人が自腹・手弁当で保護に奔走している生物種のすべてにそんな対応をしたら、きっとこの国の財政はとんでもないことになる。

 だからこそ、自然再生事業は単なる「その種の復活」を目的とするだけでなく、自然関連行政や地域社会振興をも視野に入れて、国全体で「この国や地域の未来をどんなふうにしたいのか」とか「いのちや自然とどう向き合うのか」の議論の端緒とすべきである。

 飛行訓練していないヤツをいきなり放せば、飛ぶのに失敗するのはあたりまえ。
 それをあえてやった意図があるはず。あの専門家会議のお歴々の顔を思い浮かべると。

 昨年の冬、冬期の餌やりをさせろというカンチガイ愛護者の意向に沿って環境省の対応に意見書でクレームをつけた県と市。その軋轢に嫌気がさしたりつぶされたりしないために、あの重厚感あるオジサマ方が必要なわけで。
 今回のドジなトキちゃんに関しても「データ取得の目的で、訓練しないで放すなんて動物実験だわ!酷いわ!」とヒステリックに騒ぎ出す愛護者が出ることでしょう。それに対してニッコリ笑って「そうです、訓練が必要なのです。だから、人員と設備のための予算をもっと配分して下さい」・・・とでも、答えるんでしょうかな。

 そういう人間社会のドロドロからあっさり解き放たれて、ひきつづきガンバレ、トキたち。
 つばさの朱鷺色はまるで、泥沼からすぅっと伸び出て一点の汚れもない花びらをひろげる蓮の華のようだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿