六畳の神殿

私の神さまは様々な姿をしています。他者の善意、自分の良心、自然、文化、季節、社会・・それらへの祈りの記。

映画「蝉しぐれ」

2005年10月12日 | 映画
 「蝉しぐれ」を観ました。
 藤沢周平、泣かせてくれます。
 ・・と言っても、この人の本、読んだことは無いんですが 剣にまつわるある種のファンタジーが、この作家の持ち味なんでしょうね。そゆとこ、嫌いじゃないです。

 映像は、自然や農村の風景がとにかく美しく撮られていて、アングルとかも監督のこだわりが随所に感じられ、なかなか見ごたえがあったと思います。美しい日本の景色が堪能できます。
 でも少し凝りすぎかな?みたいなショットも。雷におびえる娘さんは、雨戸をすぐに閉めると思うぞ!みたいな(笑)映像的にはオイシイけどね。

 最後のエンドロールの文字の色が、なぜか目に沁みました。よく覚えていないけど、黒じゃなくて、濃紺みたいな濃緑灰みたいな不思議な色。洗いざらした墨染めの衣みたいな。すごく日本的な色だなぁ、凝ってるなぁ、と、流れていく文字にしみじみと見惚れておりました。
 ・・しかし、キャストの中に「蛭子能収」の文字を見つけたとき、客席のあちこちで、かすかなどよめき(?)が上がったのには笑ってしまった。
 え・蛭子さん、ドコに出ていたの・・? 何の役で・・?
 いろいろお仕事されてるのはいーけど、蛭子さんほどの有名人が、ドコの何役かも分からない形で出演するのって、あんまり意味ないんじゃ・・何か、事務所的なカンケーでもあるのかな?金銭のモンダイ? などなど、野次馬根性が湧いてくる・・

 作品中の小道具や装置、台詞などの細部に、ダーリン曰く《玄人ウケ》するものが折り込んであって、ニヤリとします。たとえば、緒形拳扮する父が、畑から収穫する茄子。あんな小さいのを採ってしまうなんて、と思いますけど、アレは庄内地方特産の茄子で、あのくらいの大きさで収穫する品種なんだそうです。ちゃんと考えてあるんだぁ。

 それにしても、映画の宣伝で、「一人の人を、20年間想い続ける」ってあたりが強調されていたので、そういう映画かと思ったら、ちょっと違いました。
 いや、違わないんだけども。何というか、作品を貫く一番のテーマは、果たしてそれ・・なのか?ってちょっと首をかしげました。
 これから観られる方もいらっしゃるとアレなんで、ハッキリは語りませんが、前回の藤沢周平モノ「隠し剣 鬼の爪」でも、同じ疑問をもちました。「隠し剣・・」では「身分違いの恋」ってところばかりが強調されてたけど、実際の作品は「剣」というひとつの象徴的なものに投影された男の目線、そこに絡みつく幻とも現ともわからない陶酔感としがらみとが、物語のメインテーマだった。「蝉しぐれ」も同じく、そんな「男の」物語なんだろうと感じた。
 でもそこを強調すると、女性客が呼べないとかゆー興行的な問題が? それとも映画関係者の目には、これはやはり「究極の恋愛映画」みたく感じられる作品であって、私の感じ方のほうが変なのかしら・・

 ともあれ、観て損はない作品だと思いました。

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