二銭銅貨

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パゴダの王子/新国立劇場バレエ13-14

2014-06-28 | バレエ
パゴダの王子/新国立劇場バレエ13-14

指揮:ポール・マーフィー、演奏:東京フィル
出演:新国立劇場バレエ団
振付:デヴィッド・ビントレー、曲:ベンジャミン・ブリテン

さくら姫:小野絢子、王子:福岡雄大
皇后エピーヌ:湯川麻美子、皇帝:山本隆之
北の王:八幡顕光、東の王:古川和則
西の王:マイレン・トレウバエフ、南の王:貝川鐵夫
道化:福田圭吾

東西南北の各王は桜姫に結婚を申し込む人達で、米露中アフリカを思わせる衣裳。アフリカは裸で白縦縞の全身刺青。米国は国旗のデザインを使った派手な衣裳、腰に2丁拳銃。ロシアはコサック騎兵風。中国は清の時代を思わせる辮髪の裸闘士。日本に売り込む貢納品は、アフリカが象牙。米国がライフル。ロシアが近頃のエネルギー外交を思わせる石油採掘装置の小型模型、すなわち石油や天然ガス。中国は長いパイプで清の時代のアヘンを思わせる。それぞれ現代の社会問題にかかわるもので、希少動物、麻薬、エネルギー問題、テロや紛争などにかかわるものである。批評的批判的な強い表現があったわけでは無いが、英国式諧謔が健在だと感じた。一方で、おばけのぬいぐるみがコミカルに出て来たり、道化が愉快だったりで楽しい場面が多く、大人も子供も楽しめるようなしかけになっていた。4人の王は悪役の皇后と共に最後に滅ぼされる。これら4人うち3人は日本が過去に戦争をした国々だ。日本人にとっては気持ち良い演出だけれども、相手の国の人々にとってはちょっとどうかな。でも、面白い。あまりナショナリズム的に見てはいけないと思う。

音楽が美しい。踊りも美しい。衣裳も美しい。ガムラン風の音が使われて、インドネシアの伝統衣裳の踊りがバレエにアレンジされる。エキゾチック。ガムラン。金に輝く踊り子の衣裳、静止。夕闇。静寂。小さなパゴダのシルエット。サラマンダー。

和風の音は無いけれども全体に和風の美術・衣裳に良く合っていた。日本の衣裳は裾の長い着物風のもので、和風と言って違和感の無いデザインだった。美術は最初の場面が赤富士のデザインを思わせる白い線で描かれた山に、真っ赤な大きな丸。後半の舞台では大きな花びらが中空に配置されるが、東南アジアの場面ではオレンジの南国風の花を思わせたものが、最後に再び現れた時はピンクの桜色に変る。富士に桜。それに赤い丸。

幕開き数分前から農民風の衣裳の道化が出て来て客席とコミュニケーションを取る。当日午前に行われたワールドカップの試合、日本対コートジボアール戦の途中経過を掲載したスポーツ紙、多分号外をみんなに見せて、負けたのでがっかりして、新聞紙を丸めて蹴ったりとか、いろいろやった。なかなか芸達者。福田圭吾。

小野絢子は軽い。重さを感じさせない宇宙空間の踊り。一方、湯川麻美子は硬質で地に足の着いたしっかりとした踊り。幾つかのキャラクターを踊っていたがそれぞれ迫力があって切れがいい。両方とも良かった。

カーテンコールの最後にビントレー監督が出て来た。赤いバラの大きな花束を4人のぬいぐるみ達から受け取っていた。この日は芸術監督としての最後の公演。カーテンコールが長く何度も続いた。終演後の映像上映が予定されていたので監督が時計を指差したりしたが、それでも最後にもう1回カーテンコールがあった。監督も感激しているようだった。

良いプロダクション。楽しいプロダクション。

14.06.15 新国立劇場オペラパレス


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