二銭銅貨

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さまよえるオランダ人/新国立劇場11-12

2012-03-30 | オペラ
さまよえるオランダ人/新国立劇場11-12

作曲:ワーグナー、演出:マティアス・フォン・シュテークマン
指揮:トマーシュ・ネトピル、演奏:東京交響楽団
出演:オランダ人:エフゲニー・ニキティン
   ゼンタ:ジェニファー・ウィルソン
   ダーラント:ディオゲネス・ランデス
   エリック:トミスラフ・ムツェック
   マリー:竹本節子
   舵手:望月哲也

合唱、特に男声合唱の人数が多く迫力があった。3幕目冒頭の合唱では金属板をトンカチで叩き割るような強烈な音がして驚いた。気合の合唱だった。2幕目の女声合唱は柔らかく優しい。美しい。合唱が主役のオペラだ。オランダ人のニキティンは強力な歌で会場全体に響きわたる声。ダーラントのランデスは真面目で落ち着いた感じ。エリックのムツェックはベルカントな感じ。ゼンタのウィルソンはかなり太めな人で強力なソプラノ、オランダ人の強力な歌声や演奏に負けない声だった。

演出は船の場面では豪快な感じ、女性たちの場面では優しい感じでダイナミックな舞台。大きな布を、ある時は帆として、またある時は風や雲や空気として、あるいはミストのような使い方をして多彩だった。

演奏は迫力があって会場全体に強く大きく鳴り響いた。

ワーグナー初期の作品とのことで、イタリアのベルカントっぽい歌がエリックによって歌われるのが面白い。エリックをイタリア歌劇、オランダ人をワーグナー歌劇、ゼンタをワーグナー・ファンと置き換えて考えて見ると、この話が良く理解できる。この演出ではそうではなかったけれど、普通だとゼンタとオランダ人は抱き合って昇天するらしいし。
    
12.03.11 新国立劇場
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フィレンツェの悲劇/スペインの時/新国立劇場オペラ研修所公演2012

2012-03-25 | オペラ
フィレンツェの悲劇/スペインの時/新国立劇場オペラ研修所公演2012

作曲:ツェムリンスキー(フィレンツェの悲劇)
ラヴェル(スペインの時)
演出:三浦安浩、指揮:飯守泰次郎
演奏:東京シティ・フィル
出演:
(フィレンツェの悲劇)
グィード:日浦眞矩
シモーネ:高橋洋介
ビアンカ:今野沙知恵

(スペインの時)
コンセプシオン:上田真野子
ゴンザルヴェ:糸賀修平
トルケマダ:村上公太
ラミーロ:村松恒矢
ドン・イニーゴ・ゴメス:北川辰彦


誰もいない街の片隅に、輪転がしの少女の影が壁に映っているキリコの「通りの神秘と憂愁」の絵をモチーフにしたような美術。絵画と同じように舞台下手が坂になっていて、そこに演劇研修所とオペラ研修所のメンバーが群集として登場し、暫く芝居をする。上手にはボーッとして魂の抜けたようなビアンカ。このビアンカに加えて他の登場人物2人による芝居も始まる。やがて、忘れた頃にようやく演奏が始まる。この「フィレンツェの悲劇」の後の休憩後に、引き続き「スペインの時」が同じセット、群集で始まる。

美術、演出ともに若干シュールな感じだと思ったし、また若干読み替えているような印象も持った。ややけだるく、倦怠感ただよう無機質な殺伐とした印象だ。干からびたような人間関係、見かけだけの優しさや親切、恋愛、友情。前半は悲劇、後半は喜劇だけれども、両方を通してそういった虚無的な印象の残る演出だった。

前半の最後の方の決闘の場面では、坂道に光るファイバーを使った即席のリングが作られて、そこで行われた剣による死闘の場面が面白かった。

ビアンカの今野は魂の抜け殻のようなボーっとした芝居が印象的で、グィードの日浦の芝居は尊大でいやらしさが良く出たものだったが歌は真面目で強いテノールだった。シモーネの高橋は苦悩を過剰に芝居する迫力あるバリトンだった。このオペラの主役として芝居をしっかりと支えた。ニヒルなキャラクターが良く似合う人だ。

後半のコンセプシオンの上田はかわいらしいソプラノのファムファタールで、ゴンザルヴェの糸賀は迫力あるバリトンで芝居も堂々としてベテランらしかった。ゴメスの北川は変態でイタリアンな詩人のテノールで、ちょっと気持ち悪い。トルケマダの村上は真面目な感じ。ラミーロの村松はマッチョで素朴なロバ引きだけれど、これまた変態な感じだった。

黙役として倉本絵里がキューピッド役、林よう子が少年役として登場した。全編にからむ出演であったが、歌をじゃませず適度で効果的な芝居だった。特にキューピッドのロボット歩きが印象的で可愛かった。やたらとカップルを作りまくる普段はちょっとひねくれた、すれからしのキューピッドなんだけれども、どうもラミーロが好きらしく、その時はロボット歩きになってしまうらしい。林よう子も最初から目立つ芝居で、元気のいい悪がきっぽい少年をやっていた。この研修所の歌手の養成では芝居に力を入れている事が感じられた。

演劇研修所の群集の中では彫像役をやった2人が印象的だった。両方とも動き出すまで、そうとは分からなかった。

演奏は間を長めに取る、力強いものだった。

12.03.10 新国立劇場、中劇場
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フィガロの結婚/東京文化会館(日本オペラ振興会)2012

2012-03-20 | オペラ
フィガロの結婚/東京文化会館(日本オペラ振興会)2012

作曲:モーツァルト、演出:マルコ・ガンディーニ
指揮:アルベルト・ゼッダ、演奏:東フィル
出演:伯爵:谷友博、伯爵夫人:清水知子、フィガロ:上田誠司
スザンナ:納富景子、ケルビーノ:松浦麗

薄茶系の壁が舞台の奥行き方向に2枚、舞台前面横方向に1枚、上から降りて来る簡単な構造のセットで、舞台前面の壁はカーテンの役割をしている。この壁で舞台上を区切ることで、各場面の様々な空間を作り出している。とても落ち着いた色合いだった。衣裳も淡い色合いのオーソドックスなもので、このオペラの伝統を感じさせる。ただ、ケルビーノだけは赤や緑の原色が使われてアクセントになっていた。出だしは何もない舞台から始まり、そこへ壁が降りて来て部屋が作られ、さらに歌手たちが家具や荷物を運び込んで舞台セットが出来上がるという演出だった。

序曲はそうでもなかったけれども、中の演奏は元気が良くメリハリがあり、特に弦の音が良く揃って強く美しい演奏だった。歌手もそれに負けずに強い歌を歌っていた。

谷友博の伯爵は迫力ある怒りのこもった歌、清水の伯爵夫人はビブラートの多い装飾的な歌唱、納富は芝居も歌も安定している強いソプラノ、上田はまじめな感じのフィガロで、松浦は高音が美しいメゾだった。

12.03.04 東京文化会館
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ノイローゼ患者の一夜/国立音大2012

2012-03-03 | オペラ
ノイローゼ患者の一夜/国立音大2012

作曲:ニーノ・ロータ、演出:中村敬一
指揮:河原忠之、演奏:国立音大学生の管楽アンサンブル
出演:ノイローゼ患者:小鉄和広
   フロント係:森田学
   退役軍人社長:青柳素晴
   カップル:大間知覚、高橋薫子

国立音大のオペラ演奏研究部門の研究成果発表としての公演で、前半はニーノ・ロータの経歴についての紹介。その中でロータのいくつかの歌曲がソプラノの小林菜美によって歌われた。美しく強いソプラノで、堂々と歌って大拍手を受けていた。「フィレンツェの麦わら帽子」が一番のオペラらしく、その中の2曲が紹介された。ジャンニ・スキッキのラウレッタのような娘役の歌らしい。美しかった。

休憩後に概ね40分前後の短いオペラで、ラジオ放送用に作られたらしい「ノイローゼ患者の一夜」が上演された。神経過敏で眠れない男を主役にしたドタバタ喜劇。演奏は、弦楽器がコントラバスだけの管楽アンサンブルで、ピアノ、チェレスタ、ティンパニが加わったもの。とても軽快でアップテンポな調子の中に、憂鬱そうなメロディーも多用されている。

神経過敏患者役の小鉄和広は、よれよれのパジャマ姿で深刻そうな芝居、森田学は真面目に喜劇をやっている感じだった。学生主体の合唱団が舞台前面に並んで、踊りながら元気が良く歌っていたのが活気に満ちていて良かった。

12.02.25 国立音大講堂大ホール
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ナブッコ/東京文化会館(二期会)2012

2012-03-01 | オペラ
ナブッコ/東京文化会館(二期会)2012

作曲:ヴェルディ 、演出:ダニエレ・アバド
指揮:アンドレア・バッティストーニ、演奏:東京フィル
出演:ナブッコ:上江隼人
   イズマエーレ:松村英行
   ザッカーリア:ジョン・ハオ
   アビガイッレ:板波利加
   フェネーナ:中島郁子

コーラスが円形に密集して、そこだけにライトが当たり、やがて Va, pensiero, sull'ali dorate が始まる。優しく流れるように。最後の和音が長く美しい。大拍手。次にコーラスは散開して舞台上に広がり、大きな長方形の隊形となって、舞台も場内もやや明るくなってアンコール風に2回目が歌われる。また、大拍手。会場では誰も歌っていないように思われたけれど、イタリアだと歌われるのかも知れない。パルマ王立歌劇場との提携プロダクションなのでイタリアでも同一の演出である。

出だしは舞台前面に大きな壁があって、その前でのコーラスに迫力がある。全般に歌手が激しく動き回るような演出では無くて、歌がしっかり聴ける、歌を大事にした演出だった。

板波のアビガイッレはあまり芝居っけは感じられなかったが強力なソプラノで迫力があり、強い演奏に負けていなかった。上江のナブッコは、娘に裏切られてオロオロする真面目なお父さんの感じ。ザッカーリアのハオは、落ち着いた良く通る綺麗な声で安定していた。松村と中島は情熱的で強いテノールとソプラノだった。

演奏はメリハリと勢いのある元気の良いものだった。フルートやホルンなどの管楽器の演奏が美しく良く響いて聞こえた。

12.02.19 東京文化会館
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