二銭銅貨

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愛染かつら

2006-10-30 | 邦画
愛染かつら  ☆☆☆
1938.09.15 松竹、白黒、普通サイズ
監督:野村浩将、脚本:野田高梧、原作:川口松太郎
出演:田中絹代、上原謙

新編総集編
これは4本を1つにしたもの。全部見たい。

「花も嵐も踏み越えて、行くが男の生きる途、
泣いてくれるな、ほろほろ鳥よ、月の比叡を独り行く。」
というのは「旅の夜風」。愛染かつらのトレードマーク。

「可愛いいおまえがあればこそ、つらい浮世もなんのその、
世間の口もなんのその、母は楽しく生きるのよ。」
という、「悲しき子守唄」も良いです。
最後に、看護婦姿の田中絹代が、切々と歌います。
苦しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、
絶望したこと、希望を持ったこと、すべてをひっくるめて、
人々に感謝して、感謝の気持ちをこめて歌います。
吹き替えだとは思いますが。

娘役の小島和子も健気で可愛い。
田中絹代はママちゃんと呼ばせます。

上原謙を見送りに駅まで急ぐ田中絹代。
タクシーの中で焦っているシーン、
本当に焦ります。はやく。
でも、駅では列車は出てしまいます。
すれ違いの始まり。
物語のはじまり。
恋のはじまり。

寺のかつらの木に写る上原謙の面影。
せつない思い出。
つのる恋。
焦る気持ち。
絶望、あきらめ。
希望。

希望はあるのか?
幸せはあるのだろうか?
05.11.12 NFC

お嬢さん乾杯

2006-10-27 | 邦画
お嬢さん乾杯  ☆☆
1949.03.09 松竹、白黒、普通サイズ
監督:木下恵介、脚本:新藤兼人
出演:原節子、佐野周二、佐田啓二

ぐるぐる廻る社交ダンス。
目まぐるしく、華麗に、リズミカルに。
恋も、仕事も、人生も、
軽快に、目まぐるしく、いそがしく。

超まったり、おくゆかしすぎの原節子。
いつもの通り、お嬢様。
没落寸前の名家のお嬢様。
おとなしくて、
いつも下を向いていて、
恥ずかしそうにして、
話すのもやっとで、
肩も体も恥ずかしそうで、
身も心も恥ずかしく、
声も恥らい、
人生を恥らう。

あけっぴろげで、品の無い佐野周二。
自動車の修理工だけど、
時流に乗ってビジネスは快調。
佐野周二を兄貴と呼んでいる佐田啓二は子分格。

育ちは水と油。
この2人、
どうなることやら。
うまくいくのか?
軽快な喜劇調で、元気良く、
明るくテンポ良く展開して行きます。

最後のクライマックスは、原節子が、
これまでのおしとやかさをかなぐり捨てて、
本性をあらわします。強い気持ちがグッと出てきます。
列車に間に合わなければと急ぐのです。

と、そこで愛染かつらの「旅の夜風」がテンポ良く流れます。
軽快ですね。
05.12.4 シネスイッチ銀座、80年代 銀座並木座?

恋の花咲く・伊豆の踊り子

2006-10-25 | 邦画
恋の花咲く・伊豆の踊り子  ☆☆
1933.02.02 松竹、白黒、無声、普通サイズ
監督:五所平之助、脚本:伏見晁、原作:川端康成
出演:田中絹代、大日方伝、小林十九二、若水絹子

田中絹代が元気。
本来、川端康成が原作ですから、
美しく、はかない物語なのだろうけれども、
この映画は、
元気な、恋の花咲く伊豆の踊り子です。

最後の港の場面でも、
悲しい場面なんですが、
どういうわけだか、
溌剌とした雰囲気がしています。

伊豆の明るい日差しを歩く、
芸人一行、
森の緑と、伸びやかな空と、優しい雲、
豊かな田畑に、
ゆったりとした人々。

明るさが命の名画だと思う。
05.12.11 シネスイッチ銀座

応援団長の恋

2006-10-24 | 邦画
応援団長の恋  
1939.12.01 松竹、白黒、普通サイズ
監督:野村浩将、脚本:野田高梧
出演:田中絹代、岡譲二、飯田蝶子

純粋で、男気のある岡譲二はバンカラな学生。
応援団長。
飯田蝶子は下宿のおばさん。
娘が田中絹代。
健気で、元気で、お転婆で、それでいて、ちょっと、
はにかみや。

初恋なのか、何なのか。
無邪気で、
若さあるれる、
健気な物語。

結構、悲しい話もあるんです。
05.11.6 NFC

簪(かんざし)

2006-10-23 | 邦画
簪(かんざし) ☆☆
1941.08.26 松竹、白黒、普通サイズ
監督・脚本:清水宏、原作:井伏鱒二 「四つの湯槽」
出演:田中絹代、笠智衆、斎藤達雄、日守新一、三村秀子、川崎弘子
横山準、大塚正義

軽い喜劇性の、健全な映画。
戦前というよりは、日米開戦ちょっと前の作品ですから、
軍国主義の影響をかなり受けていたのであろうと思う。

映画の中では、体操の場面が出てくる。
そういったところが無闇に健全ぽい。
洗濯ものを干している田中絹代、
体操している田中絹代、
笠智衆におぶさっている田中絹代、
そもそも田中絹代の相手役が笠智衆ですから、
とにもかくにも、健全を絵に描いたような映画で、
そして、その健全が強く印象に残ります。

大きな木立の列が並ぶ街道らしきところを、
木漏れ日に時折、キラリキラリと照らし出されながら、
巡礼の団体らしき人々の、
ユラリユラリと歩んでくる、
冒頭の行列のシーン。

最後の、田中絹代が淋しげに番傘を日傘がわりに差して、
登り道を歩むシーン。

その2つが何故か印象に残っています。
奇妙な映画です。
05.12.4 シネスイッチ銀座