二銭銅貨

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ホフマン物語/新国立劇場(二期会)2013

2013-08-18 | オペラ
ホフマン物語/新国立劇場(二期会)2013

作曲:オッフェンバック、演出:粟國淳
指揮:ミシェル・プラッソン、演奏:東京フィル
出演:
ホフマン:福井敬、ミューズ/ニクラウス:加納悦子
リンドルフ他:小森輝彦、オランピア:安井陽子
アントニア:木下美穂子、ジュリエッタ:佐々木典子

安井陽子似の2足歩行ロボットはとても出来が良い。人間らしい動きが少しできている。人形の歌「生垣には、小鳥たち」は美しく、はかなくて、それでいて楽しい。ラ、ラ。ラ、ラ。ロボット固有のぎこちなさや無機質感が少なく、感情を持った生き物のよう。歌は高音がはっきりと聞こえ、安定している。音符の動きが見事で、これは多分スパランツァーニ先生の完璧なコーディングによるものであろう。音声合成の出来も良い。素晴らしさが驚異的。それにしても「生垣には、小鳥たち」が楽しい。元気が良い。一緒に自分も機械人形になってしまいたい。ラ~ラ、ララララララララ、ラ~ラ、ララララララララ、ラ~....

あれは安井陽子似のロボットなどではなく、安井陽子だったのかも知れない。歌の後は大拍手が長く鳴り響いた。

美術はやや大振りな過去と現代と未来が入り混じったシュールっぽいもの。薄緑色のガラスを多数使ったようなジュリエッタの場面で登場するセットが印象的だった。演出はオーソドックスで歌を重視し、あまりむやみに芝居をしない構成だった。衣裳は3人のソプラノのものが良く、オランピアはお人形さん的な赤の丈の短いドレス、ジュリエッタは亀甲の柄の帯を縦に長く使ったようなゴージャスな和風ドレス、オランピアは丈の長い、裾の大きな青の豪華なドレス。それぞれの役に良く似合っていた。

福井はマラソン・ランナーのように最初から飛ばして、終盤少しあぶなかったけれど、なんとか最後まで声を持たせてエネルギッシュだった。安定していて良い歌。加納も安定していて、芝居がしっかり決まっていた。小森もゆったりとした感じの迫力あるバリトン。舞台を支える力を感じた。安井はハッキリとくっきりしたコロラトゥーラ。「生垣には、小鳥たち」が軽快な軽い歌などではなく、むしろ超絶的な曲であることを印象付けた。大拍手。佐々木は安定して伸びのあるパワフルなソプラノ。加納と一緒のホフマンの舟歌では、緩やかに優しくベニスの運河のさざなみのごとく静かに歌って心地良いリズムだった。木下は豪華で美しい装飾的な声。良く通るパワーのある声。まさにディーバ。アントニアそのもの。ディーバなら、「歌うと死ぬ」とか言われてもあんな風に歌ってしまうだろう。ディーバにとっては、「歌わないことこそが死」なのだから。でも大丈夫。カーテンコールでは木下はまだ生きていて、私達はまたあの声を聴く事ができると分かりました。よかった。

ナタナエル役のテノールの新海康仁はいい声が出ているように思えて注目された。アントニアの父親のクレスペルの斉木健詞のバスも良く安定した声が出ていた。

演奏は優しく滑らかでおおらかな感じ。この物語に合っていた。ゆったりとしたリズムの感覚は幸せな感じの気分だった。

歌が一杯。豪華な幻想も盛りだくさん。楽しかった。

13.08.03 新国立劇場

魔笛/新国立劇場オペラ研修所試演会2013

2013-08-17 | オペラ
魔笛/新国立劇場オペラ研修所試演会2013

作曲:モーツァルト、演出:カロリーネ・グルーバー
指揮:天沼裕子、演奏:原田園美、星和代(ピアノ)
出演:タミーノ:岸浪愛学、パミーナ:原璃菜子
夜の女王:清野友香莉、ザラストロ:清水那由太
弁者:小林啓倫、侍女:林よう子、飯塚茉莉子、藤井麻美
パパゲーノ:村松恒矢、パパゲーナ:種谷典子
モノスタトス:菅野敦、武士:伊藤達人、松中哲平 

小さな舞台の中央にベッドが1台。芝居が始まるとベッドの下から蛇の青緑に輝くタイトな衣裳の女性がぬめっと出て来てベッドに寝ている男ににじり寄る。這い寄って来て、やがて覆いかぶさって、喰い付きそうになると漸くタミーノも気がついて、冒頭タミーノの歌を歌いだす。

2組の若い男女の恋愛や人生にスポットを当てて、障害や困難を乗り越え成長して行く姿にフォーカスした内容に短く絞り込んだ短縮版。女王の第2のアリアやパパゲーノの最初のアリアはカット。その代わりにパパゲーノが修行の場面でちょっとだけ即興でその2曲を歌った。童子もなしで自殺を試みる場面もなし。一方、3人の侍女はタミーノを妖艶に誘惑しまくる役柄。タミーノとパパゲーノはやや草食系でおとなしく、パミーナ、パパゲーナの2人のほうが積極的で肉食系。オペラの最後で、パミーナの衣裳が蛇色に変わり、実はパミーナがこの蛇女だったと分かるようになっている。劇中ではおとなしめだったパミーナもじつは積極的だったというのだ。弁者は杖をついて丸いサングラスをした盲目の役柄で印象的だった。

物語の最後で女王組とザラストロ組の両方が全滅する。若者2組が生き残るという設定で、人類社会における世代交代の波を表現する構成になっていた。若者が頑張り、それをベテランが支援するというか、若者に試練を与えて鍛える意味で、ベテランが若者にとっての障害だったり壁だったりもするということか。やがて若者が巣立つ時にはベテランもそのミッションを終えてこの世を去る、というようなメッセージかと思えた。

タミーノの岸浪はまじめな感じのテノール。パミーナの原は素直な感じの強いソプラノ。女王の清野は第1のアリアが安定して落ち着いた感じだった。ザラストロの清水、弁者の小林、侍女の藤井の3人の低音組の声が良く通って迫力があった。清水は堂々としたバス。小林は重い金属的なバリトン。藤井は安定したメゾで芝居も流暢な感じだった。

13.07.28 新国立劇場、小劇場

夜叉ヶ池/新国立劇場12-13

2013-08-16 | オペラ
2013-08-16 / オペラ

夜叉ヶ池/新国立劇場12-13

作曲:香月修、演出:岩田達宗
指揮:十束尚宏、演奏:東京フィル
出演:白雪:岡崎他加子、学円:黒田博
晃:望月哲也、百合:幸田浩子
鉱蔵:折江忠道、与十/初男:加茂下稔、万年姥:竹本節子
鯉七:高橋淳、鯰入:峰茂樹、弥太兵衛/蟹五郎:晴雅彦

1幕目は静かに始まって、2幕目はやや活動的。少しどんちゃん騒ぎのような雰囲気だった。村の普通の人々と妖怪達と2種類の登場人物が出てくる幻想的で面白い作品。数人のダンサーに透明な水色のかぶりものを付けさせて表現する湖の水や洪水がそれらしく見えて印象的だった。鯉と蟹と鯰の3人の衣裳、芝居が面白くトゥーランドットのピンポンパンのようだった。

岡崎は率直な強いソプラノ、幸田は和服が良く似合う美しい優しいソプラノ。黒田は堂々としていて、望月は情熱的。高橋が前の公演で健康上の理由で交代していたので心配だったが元気そうだった。加茂下はいつものようにノリノリで楽しく、晴の蟹も面白くて良かった。

美術は特に村の場面の作りが良くて、頑張っているなと気持ちが伝わった。

13.06.30 新国立劇場、中劇場