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二銭銅貨

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ヘンゼルとグレーテル/日生劇場2019

2019-06-29 | オペラ
ヘンゼルとグレーテル/日生劇場2019

作曲:エンゲルベルト・フンパーディンク
指揮:角田鋼亮
演出:広崎うらん、美術:二村周作、衣裳:十川ヒロコ
演奏:新日本フィル
出演:ヘンゼル:郷家暁子、グレーテル:小林沙羅
   父:池田真己、母:藤井麻美、魔女:角田和弘
   眠りの精、露の精:宮地江奈

ボロボロだけど、薄い生地を沢山重ねたバレエのチュチュのようなスカートは水色、兄妹の髪も水色。踊りやすそうな衣裳。踊りながら歌う重唱が楽しい。子供向けの演出。森の中で眠る前の重唱も美しい。最後に出て来る少年少女合唱団の合唱も美しい。魔女の人形の宙乗りもあり、父母が客席に現れる演出もあり、天井から雪ならぬ羽毛が一斉に落ちて来る演出もある。魔女につかまっているおじさんダンンサーズのダンスも面白い。仮面を背中にしょったダンサーとか、3メーターもありそうな巨大な生物とか、たくさんおっぱいをぶら下げているような生物とか、小枝をかき集めて団子にしたような生物とか。眠りの精は船こいで寝てしまうし。つゆの精の傘は破れかぶれだし。そのスカートは芯だけだし。ぼろぼろの衣裳のダンサーはいきなり天使たちになってしまうし。楽しいことだらけ。

序曲、間奏曲ではダンサーのダンスが多用され、出演者の動きもダンス的で、全体にバレエあるいはダンスの公演と言っても良いようなプロダクションだった。ミュージカル的ともいえる。かなり動きの多い演出なので歌手達の負荷は高かったのではないかと想像される。ラストは、音楽が終わったあとで、ダンサーたちにスポットライトが当たり、露の精の持つ魔法の杖が緑に光る演出だった。観客の皆さんを魔法の杖で森の中へご招待ということなのだろうか。あくまでもバレエ的な演出だと感じた。

郷家も小林も美しい声で重唱が良かった。小林はさっぱりとした声でショートカットヘアと子供っぽい笑顔に良くあっていた。強さ控え目な感じ。池田は迫力のあるバリトン。藤井は安定したメゾで、芝居を頑張っていた。魔女は本来メゾらしいけど、本作ではバリトン。角田は芝居が前開で、声も良く出ていた。どう見ても魔女には見えない。変態おじさんだな。宮地は黙役的にでずっぱり、ダンサーだと思っていたら歌いだした。ちょっとだけだったけれど、しっかりとした綺麗な声。

演奏は本格的に美しく迫力のある演奏だった。

楽しい公演だった。

2013年に休憩を含めた90分版として製作され、2015年にフルバージョンに拡大された。今回はその再演。小林沙羅は13年版、もう一つの組の鵜木絵里は15年版、今回は出演していないが15年版に小泉詠子の名がみえる。角田和弘も15年版に名前がある。

19.06.15 日生劇場

サロメ/東京文化会館(二期会)2019

2019-06-23 | オペラ
サロメ/東京文化会館(二期会)2019

作曲:リヒャルト・シュトラウス
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:ヴィリー・デッカー
美術:ヴォルフガング・グスマン
演奏:読売日本交響楽団
出演:サロメ:田崎尚美、ヨカナーン:萩原潤
   ヘロデ:片寄純也、ヘロディアス:清水華澄
   ナラボート:西岡慎介

舞台いっぱいに大階段が広がり、中央に亀裂が入っていて、上手が低く沈んでいる。亀裂の下がヨカナーンの棲家。衣裳美術を含めてモノトーンのねずみ色。唯一、赤いのが処刑人の冠とヨカナーンの首の切り口。登場人物はこの大階段を登ったり降りたり、出たり入ったり、ウロウロ、ウロウロ。

難しい舞台だ。大階段以外何もない。何もない所で芝居するんだから。大変だと思う。空間が広くて緊迫感が出にくい感じ。遠くから見たので歌手の表情とか動きの細かい所は分からなかったこともあり、余計に緊張感が伝わらなかった。意図的ではあったと思うけれど、リヒャルト・シュトラウスのカラフルな色合いと舞台のモノトーンは対照的な感じになっている。そもそも、話のおどろおどろしさと美しく流麗な音楽が対照的とも言える。

舞台の方に意識が行き過ぎていたせいか、演奏や歌唱に関する印象が残っていない。

19.06.09 東京文化会館

ワルキューレ/MET18-19舞台撮影

2019-06-22 | オペラ
ワルキューレ/MET18-19舞台撮影

作曲:ワーグナー、指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:ロベール・ルパージュ
出演:
ブリュンヒルデ:クリスティーン・ガーキー
ジークリンデ:エヴァ=マリア・ヴェストブルック
ジークムント:スチュアート・スケルトン
ヴォータン:グリア・グリムスリー
フンディング:ギュンター・グロイスベック
フリッカ:ジェイミー・バートン

横軸方向の直線を通る任意の曲面について、横軸に直交する方向ににその点の位置でテーラー展開し、その1次係数によって決まる線分でその曲線を近似する。横方向の直線を細かく分割して、その各分割の位置における1次係数の線分を含み、分割の幅をもつ板を設定する。こうすると、一応、任意の曲面を近似表現できるようになる。ごく一般的な曲面近似法であるが、これを実際に舞台上でやるのは大変だ。ルパージュのものも基本的には上記のような考え方に基づくものだが、各分割で使われるものは単純な板ではなく横から見ると菱形のような形をしているようだった。

この近似曲面の上、あるいは下側にプロジェクションマッピングを適用して任意の風景を製作することができる。インタビューによると6台の投影機を用いているとのことで、各画面を一部オバーラップして接続しているらしい。結構アバウトなやり方だけれど、それでもそれらしく見えてしまうのは人間の錯視のおかげで、人間の錯視能力の高さが良く分かる。

それにしても、とてつもない。

3幕のワルキューレの重唱が大きな特徴であり、見せ場であると感じた。女子高生が集まってペチャクチャやる感じが延々と続く感じの重唱曲。「ファルスタッフ」では中年女性の同様な重唱があるが、ワルキューレはちょっとハイトーンで強力。

ガーキーは強いソプラノ。強いだけでなく、柔らかく透明感のある美しい声。ヴェストブルックも強くて美しい声。スケルトンもクリアで美しい。グリムスリーはキレのある強い声。グロイスベックも同様だが、気品のある感じ。バートンは声は強く、芝居は怖い。ヴォータンはフリッカに完全に尻に敷かれていた。

19.05.12 横浜ブルグ13

ねじれた家

2019-06-16 | 洋画
ねじれた家 ☆☆
Crooked House
2017 イギリス、カラー、横長サイズ
監督:ジル・パケ=ブレネール
脚本:ジュリアン・フェロウズ、ティム・ローズ・プライス、
   ジル・パケ=ブレネール
出演:探偵:マックス・アイアンズ
   警部:テレンス・スタンプ
   長男の娘:ステファニー・マティーニ
   前妻姉:グレン・クローズ
   後妻:クリスティーナ・ヘンドリックス
   長男妻:ジリアン・アンダーソン
   次男妻:アマンダ・アビントン
   長男の末娘:オナー・ニーフシー
   乳母:ジェニー・ギャロウェイ

女優の芝居の展示会。少女から年配の女性までの個性的な芝居が楽しめる。

長男の娘は知的だけど、喰えない感じ。ファムファタールかも。
前妻姉は年配女性で鉄の女。頑固一徹でライフルをぶっ放す感じ。
後妻はマリリンモンロー風。馬鹿っぽいけど侮れない。
長男妻は崩れたクレオパトラのような、酔っ払いか?
次男妻は神経質そうで弱そうな、また、そうでも無いような...
長男の末娘はこましゃくれたガキ。やな奴だけど面白そう。
乳母は優しそうで何気ないけど、腹には何かがくすぶっていそう。

男優陣もすばらしいけど、女優陣の殺気にはかなわない。

19.05.04 川崎市アートセンター、アルテリオ映像館

幸福なラザロ

2019-06-15 | 洋画
幸福なラザロ ☆☆
Lazzaro Felice
2018 イタリア、カラー、横長サイズ
監督・脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:ラザロ:アドリアーノ・タルディオーロ
   成長したアントニア:アルバ・ロルヴァケル
   侯爵夫人:ニコレッタ・ブラスキ
   タンクレディ:ルカ・チコヴァーニ
   ウルティモ:セルジ・ロペス

現代イタリアの殺伐とした道路。車が渋滞している中を狼が失踪してくる。何かをなしとげて、何かに向かって激しく走ってくる。

おそらくオリーブの木らしき木の下で、なぜかラザロの瞳から自然とあふれ出てくる涙。夕刻、ざあざあ降りの雨の中で呆然と立っているラザロ。激しく雨に打たれて。将軍のような服をまとったタンクレディと一緒に谷に向かって狼の声で吠えた。何度も。

侯爵夫人の場面ではCASTA DIVAのピアノ曲。侯爵夫人の所にあるオルゴールは後にサギのネタに使われるけれど、これの曲もCASTA DIVA。みんなで高級ケーキを奮発して買いに行く場面では椿姫の乾杯の歌。その他、音楽は主にピアノが使われるがあまり多用されない。全体的に落ち着いた感じ。効果音の中では、風の音が印象的。

信仰と祈り。「ミラノの奇跡」を思わせる。あるいは、1950ごろのネオリアリズモを思わせる映画。ラザロは福音書に登場する人物。

19.05.01 kino cinema 横浜みなとみらい