二銭銅貨

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ナブッコ/新国立劇場12-13

2013-06-12 | オペラ
ナブッコ/新国立劇場12-13

作曲:ヴェルディ、演出:グラハム・ヴィック
指揮:パオロ・カリニャーニ、演奏:東京フィル
出演:
ナブッコ:ルチオ・ガッロ
アビガイッレ:マリアンネ・コルネッティ
ザッカリーア:コンスタンティン・ゴルニー
イズマエーレ:樋口達哉、フェネーナ:谷口睦美

新国立劇場の舞台がショッピングモールになっている。不動産の稼働率向上をはかるべく、空き時間の舞台スペース有効活用を目指して、商業施設として利用しているらしい。結構、客が入っていて盛況のようだ。都庁に近いオフィス街なのでかなりの高級ショップが入っており、お客さんもビジネスパーソンが多い。ねずみ色が基調でオープンしたての施設らしくすべてがピカピカで美しく新しい。デザインが精緻だ。地階、1階、中2階、2階とあって、エスカレータが1階と2階をつなぎ、さらに上へつながっていてる。今日は、エスカレータにトラブルがあるのだろうか、止まっている。

ナブッコの序曲が始まると、突然モールでダンスが始まる。フラッシュモブ(特にEメールを介して不特定多数の人間が公共の場に突如集合し、目的を達成すると即座に解散する行為)なのだろうか。ショッピングバッグを頭に載せたり、拝んだり、変な形をした奇妙踊りが続く。やがて、合唱からナブッコが始まる。オペラフラッシュモブだ。

そうこうするうちに、天井からロープで降りてきた2-3人を含め、十数人のテロリストがモールの人々に襲いかかり始めた。これもオペラフラッシュモブの一環なのか、あるいは本物なのか、どちらなのだろうか。ショッピングモールはメチャメチャに壊されて、破壊され、ぼろぼろになってしまう。人々は人質になった模様だ。現代の捕囚。中間で幕が降りて来て休憩になる。どうもこれは本物のテロではなく、フラッシュモブでもなく、単なる普通のオペラ公演だったようだ。良かった。拍手が盛大に送られた。

コルネッティのパワーが強烈に会場に鳴り響き全体を支配している。まるでアビガイッレの王位簒奪。東フィルのアンサンブルが負けそうだ。それでいて、音は自在に動いて安定している。ガッロは堂々としたドラマチックで強い声。コルネッティとの強力な重唱も歌が良く絡み合って印象的だった。ゴルニーは安定したバスで落ち着いている。樋口は硬質でしっかりした感じのテノール。声が良く出ていて美しい。谷口も良く声が出て安定していた。

演奏はそれぞれの楽器、弦、木管、金管、ハープなどの音が良く聞こえて、それぞれに美しい。特に金管がヴェルディっぽい感じ良い。序曲や「行けわが想いよ」は、総ての音をしっかりと聞かせるような、ゆっくりとした印象だった。「行けわが想いよ」の最後のハーモニーが、ゆっくりと長いデクレッシェンドで美しく、微かに、消え入るように会場に響いた。

13.05.25 新国立劇場
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