二銭銅貨

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コッペリア/オペラ座ガルニエ・バレエ2011舞台撮影

2011-06-25 | バレエ
コッペリア/オペラ座ガルニエ・バレエ2011舞台撮影

2011年上演
作曲:レオ・ドリーブ
振付:パトリス・バール(1996振り付け)
指揮:コーエン・ケッセル
出演:
スワニルダ:ドロテ・ジルベール
フランツ:マチアス・エマン
コッペリウス:ジョゼ・マルティネス
スパランザーニ:ファブリス・ブルジョワ

ドロテ・ジルベールは優雅に大きく美しく、ちょっと小悪魔的な表情と芝居。2幕目の中盤にグランジュテの入る大きな踊りや、スコテッシュな柄のたすきを掛けての高速ステップでの踊りがあって、これが見所。特に高速なステップの中での変形パドブレのような細かな足首の動きが芋虫が逃げて行く様な様子で面白かった。芝居も踊りも良く、お茶目なやんちゃなスワニルダ。シンプルな白の衣裳にピンクの色合いの赤のベルト。村娘達も同様な衣裳でベルトの色が様々に変わる。衣裳はきりりと美しく彼女達の踊りも歯切れ良く美しい。

ジョゼ・マルティネスはちょっと現代風振り付けで昔のアメリカのミュージカルを思わせるような踊り。コッペリウスの奇怪な精神、狂気が良く表現されていた。演出も振り付けも良い。マチアス・エマンは怖いもの知らずで情熱的なフランツ。

演奏は豊かで迫力があった。特に出だしのスワニルダのバリエーションや舞踏会風のワルツが良かった。音楽が良すぎて踊りを見るのを時々忘れてしまう。ちなみにスワニルダのバリエーションの所は村娘との群舞になっていた。

カーテンコールで指揮者の後に出てきたオジさんは振り付けのパトリス・バールだったらしい。

11.06.19 109シネマズ川崎
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蝶々夫人/新国立劇場10-11

2011-06-19 | オペラ
蝶々夫人/新国立劇場10-11

作曲:プッチーニ、演出:栗山民也
指揮:イヴ・アベル、演奏:東京フィル
出演:
蝶々夫人:オルガ・グリャコヴァ
ピンカートン:ゾラン・トドロヴィッチ
シャープレス:甲斐栄次郎、スズキ:大林智子

白無垢。後ろ向きに正座して剣を胸に付き立てて静止する。舞台奥に引かれた障子がサッと開いて子供が現れ出ると、その子供は少し前に進んで母親の最期を注視して静止する。静寂と静止。でもプッチーニの音楽は滔々と流れ、ピンカートン氏の声は遠くにかすかに聞こえている。姿は見えない。丁度そのちょっと後に、瞬間に舞台全体が熱せられたかのごとく白熱に輝いて、蝶々さんはむなしく床に崩れ落ちる。壮絶な子別れの最期の場面。蝶々さんと子供の間には太い輝く光の道が照らし出されている。蝶々さんの決意は侍の魂を思わせ、子供はそれをじっと見ていた。

蝶々夫人のグリャコヴァは声量があって劇場全体に良く届く声だった。所作全般が日本風になっていて、特に正座をきちんとやっているように見えた。幾つかのアリアを正座で歌っていて、「ある晴れた日に」の前半は正座だった。ピンカートンのトドロヴィッチは真面目で端正な感じ、シャープレスの甲斐は美しく輝くバリトンで声量も十分にあって頼もしく、頼りがいのある領事を良く演じていた。スズキの大林は控えめな役作りで地味に徹していた。

動きの少ない演出の中で、ただ一人忙しく幇間風に動き回っていたゴローの高橋淳の芝居が良かった。いかにも太鼓持ちという感じのチョロチョロふらふらした雰囲気が面白かった。かなり渋い演出の中の唯一の滑稽。演出、衣裳は純日本風で違和感が無く日本人にとってはスッキリした芝居だった。衣裳は前田文子。

美術は現代的なデザインで単純、簡素なものだった。全幕で1個のセット。材質は木材の生地をイメージさせる色あいでやはり和風の意匠。坂道が右の地底から円を描くように這い上がってくるのに続いて、さらに階段が同じく円を描くように左側を登って行く。その中間にピンカートン夫人の家がある。階段を登りきった所は長方形の窓のようになっていて、空が見え時々星条旗がはためいている。ちょうど明治維新以降の、日本が近代国家になって行くプロセスをセット上に組んだかのようである。坂の下が維新前の日本、階段を登りきった所が西洋の象徴、その中腹で蝶々夫人の悲劇が描き出されるような感じだ。

演奏は力強く、メリハリのある劇的なものだった。歌手たちの力強さとあいまって全体に強い印象であった。強い決意のもとに自決する蝶々さんの強靭な精神力を印象付ける感じがした。

11.06.12 新国立劇場
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コジ・ファン・トゥッテ/新国立劇場10-11

2011-06-18 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ/新国立劇場10-11

作曲:モーツァルト、演出:ダミアーノ・ミキエレット
指揮:ミゲル A.・ゴメス=マルティネス、演奏:東京フィル
出演:
フィオルディリージ:マリア・ルイジア・ボルシ
ドラベッラ:ダニエラ・ピーニ
デスピーナ:タリア・オール
フェルランド:グレゴリー・ウォーレン
グリエルモ:アドリアン・エレート
ドン・アルフォンソ:ローマン・トレーケル

絶海に浮かぶ孤島のような、小山になったところに、キャンプ場の建屋の「キャンピング・アルフォンソ」がある。右が宿舎で左が売店。売店の売り子がデスピーナ。売店の横にキャンピング・カー。裏が池。本物の水が張ってあって、歌手たちが水着を着て入る。全体の中央部分は小高い頂上で、その周囲に細い小道が付いている。衣裳やセットはパステルカラーで、木や芝草の緑が良く映えて美しい。このキャンプ場は回り舞台に出来ていて、その舞台を回しながら様々な位置で芝居が繰り広げられる。登場人物はリラックスした軽装でキャンプに来ていて楽しそう。

バカンスの休日、日常から逃れてキャンプを楽しむリフレッシュな気分。でも、うらはらに、物語はとてもビター。

ダニエラ・ピーニは美しい。声も美しい。良いドラベッラ。後半のソロは美しく強く楽しくスイングしていて、グリエルモとの二重奏はうっとりと甘くこれも美しい。声質はやや高い音が混ざるピュアな感じのものではなかったが、肉声の美しさを感じる声だった。低音も高音も安定していた。ボルシのフィオルディリージは高音が良く伸びて強いが、やや不安定な感じではあった。フェルランドとの二重奏が美しく印象に残った。

フェルランドとグリエルモは芝居が激しく、テントを作ったり、殴りあったり、歌の途中で斜面を数メートル転がり落ちたり、大変そうだったが、それでも歌は崩れなかった。アルフォンソはトレーケルで長身の安定したバスだった。タリア・オールは活発で元気の良いデスピーナだった。

それ程出番は無かったが、合唱が力強く歯切れ良く、気持ち良かった。

演出の最後はかなり手厳しい。甘くない。今回の演出は全体に厳しいものだったが、本来は甘い愛のささやきに満ちた楽曲であり喜劇であると思う。モーツァルトはアロイジアとコンスタンツェのことを想いながらこれを作り描いたのであろうか?

震災の影響で指揮者キャストに大幅な入れ替えがあった。当初予定は以下の通り。
指揮:パオロ・カリニャーニ
フィオルディリージ:アンナ・サムイル
デスピーナ:エレナ・ツァラゴワ
フェルランド:ディミトリー・コルチャック
    
11.06.05 新国立劇場
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イル・トロヴァトーレ/MET10-11舞台撮影

2011-06-11 | オペラ
イル・トロヴァトーレ/MET10-11舞台撮影

作曲:ヴェルディ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
指揮:マルコ・アルミリアート
出演:マンリーコ:マルセロ・アルヴァレス
   ルーナ伯爵:ディミトリ・ホヴォロストフスキー
   レオノーラ:ソンドラ・ラドヴァノフスキー
   アズチェーナ:ドローラ・ザジック

ルーナ伯爵はホヴォロストフスキーで、気品のある美しい声でボリュームが大きく迫力があった。でも役どころはバカ殿みたいな間抜けな殿様。この人はちょっとズレてるイケメンの役がうまい。

アズチェーナはにが虫を噛み潰したような表情のザジックで、この劇の中枢の魔術的な支柱になっていた。数々の怨念の芝居の積み重ねが最後の絶叫につながっていて、ザジックの芝居がこの公演のキーになっていた。この復讐は単なる復讐劇としての復讐ということでは無く、社会批評としての意味あいも多少感じられた。開幕前に下がっていた幕に苦しげな表情の庶民の顔が沢山描かれていて、この演出には、ちょっとそうした意図があったように思われる。

マンリーコはアルヴァレスで落ち着いたテノールの印象だったが、役の激情がしっかりと表現されていた。レオノーラはラドヴァノフスキーで、やや低い音が混じっているようなソプラノでメゾっぽい感じだった。ややテンポが遅い感じで、若干速いオーケストラのテンポとはズレがあったように感じた。パワーは凄くて他の3人の強烈な音量やオーケストラに負けていなかった。

演奏はキビキビとメリハリがあって強烈な印象だった。ジェイムズ・レヴァイン体調不良のため指揮者は交替でアルミリアートだった。

舞台は回転するもので、場面転換が観客の拍手のうちに行われ、そのためにテンポの速い舞台となった。それにパワーのある4人。あたかも、代わる代わる前で出て大砲を撃ちまくり、草原を疾走する4両の重戦車のようであった。

11.06.03 東劇
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