二銭銅貨

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蝶々夫人/新国立劇場(日本オペラ振興会)2014

2014-07-12 | オペラ
蝶々夫人/新国立劇場(日本オペラ振興会)2014

作曲:プッチーニ、演出:粟國安彦
指揮:園田隆一郎、演奏:東フィル
出演:
蝶々夫人:佐藤康子、ピンカートン:ステファノ・セッコ
シャープレス:牧野正人、スズキ:牧野真由美
ゴロー:松浦健

扇型の大きな出島の絵が舞台奥の遠景として用いられ、天井側に大きな格子でできた欄干のようなものが3層あって、その下にリアルな感じの日本家屋のセットがある。桜が3本程度で日本庭園風の緑が多い。下手に小さい離れ、上手に母屋でその間を小さな廊下が結んでいる。下手手前に欧州風の椅子とテーブルがある。これは2幕目で1幕目も同様な感じの家屋の外の庭をセットにしたもの。

蝶々さんの出だしのコーラスでは、花町の女たちの行列が登場する。先頭に赤い着物の禿が2人、その後に舞妓さん風の桜色の衣裳の人たち、さらに芸者風の人たちと続く。禿以外は傘を手にしている。

衣裳はすべて本格的に見えるもので、蝶々さんは1幕目でお色直しがある。小部屋に入るとシルエットで着替えのシーンが陰で移り、そのあと白無垢の着物になる。ちゃんと帯を締めているので、多分、着物を2重に着ていたのではないかと思われる。

演出は演劇的だった。日本語のセリフが無いのでサイレントの日本映画を観ているようだった。所作も美術も日本的でかつリアル、緻密だったのでそんな印象だった。プッチーニの音楽を背景にして映画を撮ったらこうなるというような感じの演出。ケイトが家から出て行くところで奥に蝶々さん、中間にスズキ、手前にケイトで一直線に並ぶ構図がある。ここで音楽が一瞬静止する。音の静止がクライマックスを構成する劇的な場面だった。

最後は移動用2枚折の衝立の向こう側で身を処した蝶々さんが、ピンカートンの「バタフラ~イ~」の叫びのあと、衝立ごとこちらに向かって倒れこむ。ベリズモオペラを思わせるような、古い日本映画を思わせるような、終わりだった。

佐藤康子は安定した強いソプラノ。蝶々さんの意思の強さが良く出た芝居だった。ステファノ・セッコは強力で明るいイタリアっぽいテノール。牧野真由美は安定した強いメゾで、歌も良く芝居もいい。てきぱきと鋭い芝居は頼りになるスズキを良く表現していた。松浦健は軽快な芝居。

演奏はしっかりと強く美しく安定していて、とても良かった。

06月26日ゲネプロ
蝶々夫人:山口安紀子、ピンカートン:笛田博昭
シャープレス:谷友博、スズキ:松浦麗、ゴロー:小宮一浩
   
山口安紀子は強いソプラノ。笛田博昭は安定感と声量のある強いテノール。松浦麗は低く安定した声で、芝居も良かった。

良いプロダクション。日本式スタンダード。

14.06.29 新国立劇場、オペラパレス
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鹿鳴館/新国立劇場13-14

2014-07-05 | オペラ
鹿鳴館/新国立劇場13-14

作曲:池辺晋一郎、指揮:飯森範親
演出:鵜山仁、原作:三島由紀夫、演奏:東フィル
影山:与那城敬、朝子:腰越満美、季子:谷口睦美
顕子:幸田浩子、清原:宮本益光、久雄:鈴木准、草乃:与田朝子

谷口の低く安定した強いメゾと、与那城のやや毒を含む迫力のある声が良かった。腰越は強く美しく、幸田は高音に透明感があって美しい。宮本と鈴木は真面目な雰囲気で役柄に良く合っていた。

音楽は壮大な雰囲気で物語も含めてかなり大型なオペラを目指して作られた作品のようだった。演奏はくっきりはっきりしたメリハリのある迫力を意識した演奏だった。

美術は舞台上に回転したり移動したりできる大きな丸い台を設置したもの。衣裳を含めてモノクロの色調で地味な感じだった。衣裳は豪華で、美術は簡素。舞踏会のシーンは無く、その代わりにお面を被ったりしている一般民衆の踊りがあった。

14.06.22 新国立劇場、中劇場
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