二銭銅貨

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09-10全日本フィギュア

2009-12-30 | フィギュア・スケート
09-10全日本フィギュア

女子シングル

浅田真央:1位
決闘に赴く前の戦士、侍のような気迫。高度な精神、場を支配する緊張。ラフマニノフの鐘。太い、ずぶとい太刀を思わせるフリー。素晴らしいコリオグラフ。出だしのトリプル・アクセルは成功。ショートは仮面舞踏会で、優雅で素早く元気が良い。大きな動き。エキジビションはカプリース(パガニーニ)で扇子を持ったまま優雅に踊る。切れが良く、姿が良い。堂々とした女性の表現。

鈴木明子:2位
ループのランディングのバランスが悪く、その直後にコケる。しかしコケた後の後半は吹っ切れたかのように元気が良い。庶民的なド根性スケーティング。最後のステップは何でも来いの感じ。やけのやんぱち。ウエストサイドストーリィの炸裂。和製ナタリーウッドは一所懸命、不良になっていた。

中野友加里:3位
ストラヴィンスキーの火の鳥のコスチュームが燃えるオレンジと赤でド派手。ルッツを失敗した以外はほぼ完璧。スピードも落ちない。ショートはオペラ座の怪人でこれもほぼ完璧。それでも鈴木明子に小差で負けた。今までの不振もあってか、オリンピックの選には漏れたが、世界選手権には出られる。悔しいだろうと思う。切符が4枚あれば良いのにと思う。本当にそう思う。

安藤美姫:4位
ショートはモーツァルトのレクイエムで深刻な流れが大きな体格で良く表わされていた。紫が基調の衣装。フリーは黄色主体の衣装でクレオパトラ。トラ柄で超ハデ。ショートとフリーの前半はスピードがあって切れもありパワーも感じられる、良いすべりだったが、フリーの後半はスタミナが切れたのか、ちょっと勢いが感じられない。ジャンプにも若干のミスがあった。エキジビションはレクイエムで完璧。情が良く出ている。

グランプリシリーズの活躍でオリンピック出場は内定済み。

村上佳菜子:5位
再び山田先生の飛び道具。速い、強い、高い。スケーティングがうまくて姿勢も良い。表現力もある。最初のルッツが抜けたけれども後はほぼ完璧。すごい。こんな生徒が続々と出て来るなんて、山田先生自身が進化しているのかも知れない。

村主章枝:7位
ルッツを2個失敗。それでもフリップからダブルトウ、ダブルトウの3連続を飛び執念を見せる。思えば、出られなかった長野の時からもう12年。多分その頃に3歳くらいだった子と、今リンクで勝負しているわけだから凄いと思う。その気迫と執念が素晴らしいです。

スコア:
合計 ショート(技術, 構成, 減点) フリー(技術, 構成, 減点)
1浅田 204.62 69.12 (36.84, 32.28, 0) 135.50 (67.90, 67.60, 0)
2鈴木 195.90 67.84 (37.80, 30.04, 0) 128.06 (65.78, 63.28, -1)
3中野 195.73 68.90 (38.70, 30.20, 0) 126.83 (63.55, 63.28, 0)
4安藤 185.44 68.68 (36.80, 31.88, 0) 116.76 (52.12, 64.64, 0)
5村上 176.61 60.28 (33.80, 26.48, 0) 116.33 (59.77, 56.56, 0)

男子シングル

高橋大輔:1位
フリーはLa Strada、「道」。「道」に出て来る道化師を演じる。途中のステップの冒頭にちょっとだけ綱渡りのフリが入る。この綱渡りは、映画では道化師の若者が登場する重要な場面のものだ。この若者には天使の意味合いがあって、空中で綱渡りをしていたものが、唐突に下に降りて来て、ジェルソミーナに話かける。空から降りて来た天使。

最後のステップは大きく深く強くエッジを刻み込み、それはあたかもこの物語の慟哭を氷に刻みつけているかのようだった。この最後のステップは、この道化師が最期を遂げる断末魔の直前を意味しているのかも知れない。トリプルアクセルは2度成功。クワッド・トウはNG。他にもジャンプのミスがあった。「道」の表現は完璧だった。コリオグラフが良い。

織田信成:2位
チャっプリンの映画主題歌のメロディー。チャップリンの扮装で登場。コミカルなステップと高度なステップの両立、アンサブルが見事だ。コリオグラフが良い。ジャンプのミスが若干あった。クワッド・トウはNG。トリプルアクセルは2度成功。

小塚崇彦:3位
スピードがあってワイルドな感じ。ジャンプのミスが若干。クワッド・トウはノートライ。トリプルアクセルは2度成功。ショートはジミーヘンドリックス。早いテンポで追いかけるのが大変そう。頑張ってなんとか食いついてリズムに乗っていた。

スコア:
合計 ショート(技術, 構成, 減点) フリー(技術, 構成, 減点)
1高橋 261.13 92.85 (51.20, 41.65, 0) 168.28 (79.98, 88.30, 0)
2織田 244.30 79.60 (42.70, 37.90, -1) 164.70 (85.00, 80.70, -1)
3小塚 236.13 80.54 (43.04, 37.50, 0) 155.59 (75.89, 79.70, 0)

2009.12.27 大阪、なみはやドーム

或る夜の殿様

2009-12-27 | 邦画
或る夜の殿様 ☆☆
1946.07.11 東宝、白黒、普通サイズ
監督:衣笠貞之助、脚本:小国英雄
出演:長谷川一夫、山田五十鈴、進藤英太郎、飯田蝶子、高峰秀子
   大河内伝次郎、志村喬

浮世絵の美人画から、
そのまま出て来たような山田五十鈴は、
おみつで、
それはそのまま野崎村のおみつのようであった。
物語は全く異なるけれど役どころとしては、
高峰秀子がお染め、
長谷川一夫が久松。

明るく活発な元気印のおみつを山田五十鈴が所狭しと演じていて楽しい喜劇。役者がそろって芝居が豪華。骨格のしっかりした脚本。戦後間もなくにしては出来のいい美術。飯田蝶子の下品さが高度だ。それに志村喬と進藤英太郎の2人が、負けじと品性の無さをぶつけあう。

母性をくすぐる書生の長谷川一夫、
美青年だし、
一目惚れの山田五十鈴は気持ちがどうにもならない。
貯金通帳も何もかも、
すべてあらゆるものを投げ出して、
彼を助けてあげたい。
面倒をみたい。
総てをあげたい。
強いおみつの気持ち。

窓ガラスにじっと額を打ち付けて、
つらい気持ちを、
悲しい気持ちを、
辛抱する、
おみつ。

長谷川一夫のほほの傷がすこし見えるが、ほとんど気にならない。いい役者だと思う。

09.12.20 神保町シアター

ヘンゼルとグレーテル/グラインドボーン2008舞台撮影

2009-12-25 | オペラ
ヘンゼルとグレーテル/グラインドボーン2008舞台撮影

2008年上演
作曲:フンパーディンク、演出:ロラン・ぺリ
指揮:大野和士
出演:ジェニファー・ホロウェイ、アドリアーナ・クチェロヴァー
   ヴォルフガング・アプリンガー=シュペルハッケ

ホロウェイはヘンゼルで元気のいいズボン役。クチェロヴァーはかわいいグレーテルで、こちらも元気一杯。元気良い悪がき兄妹の話。普通の演出では悪がきでは無いんだと思うけれども、この演出だとそんな感じ。クチェロヴァーの膝頭の傷やふくらはぎの傷が痛々しいけれど、そんなのは関係ない。気にならない。元気に、はしゃぎまくるのだ。

シュペルハッケの魔女は秀逸。オバさんオジさんな、変な感じの衣装で大笑い。面白すぎて、その退場の場面はちょっと悲しかった。もっと、じめじめと、あの2人の兄妹をいじめてやれば良かったのに。悪さばっかりしていそうなあの悪ガキ2人を。もっと懲らしめなくちゃ。結局あんなことになってしまって、あの2人は全然、懲りて無いし、反省も全くしていないぞ。

09.12.23 川崎アートセンター/アルテリオ映像館

地獄

2009-12-24 | 邦画
地獄 
1960.07.30 新東宝、カラー、横長サイズ
監督・脚本:中川信夫、脚本:宮川一郎
出演:天知茂、沼田曜一、三ツ矢歌子

前半は普通のドラマ。
とは言っても、そのストーリーはかなりハチャメチャで、
無理が通れが道理が引っ込むといった感じの、
無理矢理いろいろなエピソードを、
適当にでっちあげて、くっつけた感じ。
ナンセンス・ギャグの映画なのかと思ってしまうほどのもので、
もしかしたら本当にそうなのかも知れない。
ナンセンス・ギャグだと思えば、
納得の脚本である。

後半は地獄ツアーというか、
地獄を題材にしたお化け屋敷ツアーの雰囲気。
今からすると、ちゃっちいセットなのだが、
当時としてはかなりがんばった
特殊撮影や特殊な美術だったんだろうなと思う。

面白いんだか、面白くないんだか、良く分からない。
何なんだ、これは・・・

09.12.12 神保町シアター

東海道四谷怪談(中川信夫)

2009-12-23 | 邦画
東海道四谷怪談(中川信夫)☆☆
1959.07.01 新東宝、カラー、横長サイズ
監督:中川信夫、脚本:大貫正義、原作:鶴屋南北
出演:天知茂、若杉嘉津子、江見俊太郎、北沢典子、池内淳子

乾いた、湿り気の無い印象が画面から伝わる。
いくぶん荒削りな感じの美術の故か、
あるいは室内セットの持つ閉塞感か、
音響にも何か乾いた感じがあるように思えた。
もしかしたら天知茂の故かも知れない。

冒頭は、
田んぼの泥沼のクローズアップに始まって、
カメラは左に移動しながら、
2人の侍と1人の奉公人を追っかけて、そして、
伊右衛門との出会いから斬り合いまでを、
今度は右に移動しながら追いかける。
少ないカット割りで一気に見せる。
それをリアルなロケでなくて、
歌舞伎の舞台のような人工的なセットの中でやる。
リアルな部分とリアルで無い部分が奇妙に混ざって、
何かちょっとアンバランスで、不思議である。
この映画全体がそんな感じだった。

人々の怨念がこの映画の主題なのだろうか。

09.12.12 神保町シアター