二銭銅貨

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タイス/MET08-09舞台撮影

2009-01-21 | オペラ
タイス/MET08-09舞台撮影

作曲:ジュール・マスネ、演出:ジョン・コックス
指揮:ヘスス・ロペス=コボス
出演:ルネ・フレミング、トーマス・ハンプソン、ミヒャエル・シャーデ

一本の長い棕櫚の木が天に向かって立ち、空は濃紺の青。左にタイスとアタナエルの2人、右に鈍く白に佇む修道院。中央は川なのか床が大きく2つに割れてその間が深く黒い闇になっている。その床は黄色味の薄茶で、ゆったりとしたうねりを持った木造と思しきスロープ。超然として静寂、哲学的な印象の舞台。ほんのちょっぴりの2人の蜜月とタイスの修道院への入門の場。静けさと安定。そして悲劇の始まりを清々とした美術が演出する。

この床は全編に活躍する。表面に細かい波目の凸凹が削られていて砂漠の風紋を表しているのだが、歩くとミシミシ音が鳴るし、木の硬さがあるので砂漠の柔らかい感じが出ていない。しかしながらそれには大きな川を渡る木造の太鼓橋のような感じがあって、何かそのほうが、瞑想的なこの物語を語るのにふさわしいのかも知れない。

幕間にタイスの瞑想曲があり、コンマス(デビッド・チャン)が独奏。彼のクローズアップが続き、終了時には観客から大拍手。子守唄のような優しさがあって、それでいてせつない。途切れないバイオリンボウの長い動き。

理屈っぽい歌詞、情熱的な歌い手、クールな美術、豪華な衣装、豊かで多彩な音楽、重厚な演奏、実直なコンマス。

マスネの豪華絢爛だったり、重厚だったり、甘くせつなかったりする多彩な音楽が楽しかった。

09.01.16 東劇
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はたらく一家

2009-01-18 | 成瀬映画
はたらく一家  ☆☆
1939.03.11 東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:成瀬巳喜男、原作:徳永直
出演:徳川夢声、本間敦子、生方明、大日方伝

太平洋戦争の2年前、軍国主義の時代を反映した、
まじめで実直な家族の物語。
貧乏で経済的に立ち行かない日本の、
貧乏で苦しい家族の物語。

爺さん婆さんと乳飲み子と、
幼い兄妹の上に4人の兄弟、
それに父母の大家族。
3人の兄と父が働き手で、
長兄と4番目の弟は進学希望だが、
資金的にそれが難しい。
今とは逆で、昔は進学したくても、
できなかった時代である。
2階で、何度も何度もでんぐり返しする兄弟の姿が象徴的で、
活力と将来の希望を感じさせる。

全体に軍国主義のトーンが薄く広く背景に感じられるけれども、
素朴な家族の物語だ。

08.01.03 ラピュタ阿佐ヶ谷
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08国立劇場12月/源平布引滝/文楽

2009-01-05 | 歌舞伎・文楽
08国立劇場12月/源平布引滝/文楽

源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)

義賢館の段(よしかたやかた)

葵御前の頭が美しい。端正で汚れなく、ぼーっと光輝いて白につやがのる。あたりの空気を浄化するかのような放射。じっと見つめるその眼が理知的で優しく曇りがない。良く出来た人形の頭だと思う。遣うのは清十郎。所作も衣装も美しく姿勢も良い。

勘十郎が木曽先生(せんじょう)義賢。源平の頃の侍のものすごさ、迫力を一杯一杯に表現していた。

矢橋の段(やばせ)

小まんを和夫。けなげな、男まさりの若い女性を小気味良く遣う。

竹生島遊覧の段(ちくぶしまゆうらん)

小まんの平泳ぎ。熱烈に応援したくなる。岩にしがみつく小まん。息も絶え絶え。本当にきつそう。
がんばれ小まん。がんばれ、がんばれ。小まんがんばれ。
けなげ。本当に純真で献身的だ。

九郎助内の段(くろうすけうち)

歌舞伎では実盛物語と呼ばれる部分。実盛のじっとこらえているところが印象的。実盛は玉女。

08.12.13 国立劇場
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