二銭銅貨

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幻の馬

2007-02-28 | 邦画
幻の馬  
1955.07.20 大映、カラー、普通サイズ
監督・脚本:島耕二、脚本:長谷川公之
出演:岩垂幸彦、若尾文子、見明凡太朗、柳永二郎、千田是也

馬と少年と姉さんと北海道の青い空、
ゆったりとした四季。
遠く広がる海岸線、
蒸気機関車の煙、
真っ白な雪と少年たち、
桜吹雪と姉さん。

疾走する馬たち、東京競馬場。
皐月賞、ダービー。
後方から一気にゴボー抜きにするタケル。
速い。
力をためて、グングン行きます。

疾走する馬と同じスピードで走って撮影することによって、
そのダイナミックな競馬のスピード感覚を映像でとらえています。
騎手の目から見たら、競馬のスピードはこんな風に見えるのか。
競馬の馬っていうのは、こんなに速いのかと思った。

馬が主人公の子供・家族向けの優しい映画です。
07.02.25 NFC

夜明け前

2007-02-17 | 邦画
夜明け前  
1953.10.13 近代映画協会、民芸、白黒、普通サイズ
監督:吉村公三郎、脚本:新藤兼人、原作:島崎藤村
出演:滝沢修、小夜福子、乙羽信子、宇野重吉、細川ちか子

歴史教科書のような物語のはこび、
硬くて暗い雰囲気の中、後半に、
パッと花が咲いたように、
乙羽信子は現れて、
子供たちに維新の意味を教えています。

日本の伝統、文化、習慣、考え方を守る国学に心酔する主人公の、
影響を受けた娘の強い意思と、優しい気持ちを、
何かをじっと見つめる眼で表現しています。

木曾の自然と、
木曾の道。
木曾で暮らす人々の生活。
07.02.12 新文芸座

安城家の舞踏会

2007-02-16 | 邦画
安城家の舞踏会  ☆☆
1947.09.27 松竹、白黒、普通サイズ
監督:吉村公三郎、脚本:新藤兼人
出演:原節子、滝沢修、森雅之、逢初夢子、神田隆、清水将夫
   津島恵子

原節子に始まって、
原節子に終わる。

高潔だけれども、人が良くて、世間知らずな滝沢修。
タバコをふかしてワッカを作ることに執念を燃やす、
堕落した長男の森雅之。
ギスギスして、気持ちの不安定な、出戻娘、姉の逢初夢子。
溌剌としていて、現実的、ポジティブな妹の原節子。

しっかりした考えを持って、ぐらぐらしている家族に、
はっきり意見する原節子は、いつもの静かなお嬢様とは違う。
「青い山脈」の時と同じような、
しっかりした意見を持った女性の心を、
自然に演じ出している。

お父様に向かってタックルする原節子。
お父様と一緒にタンゴを踊る原節子。
朝日に向かい、クローズアップの顔いっぱいに、
喜びを表現する原節子。

新藤兼人のトークショーあり。吉村公三郎の思い出について語る。吉村監督の数多くの映画の脚本を手がけたが、直しが全く無かったこと、松竹を一緒に飛び出したこと、巨漢であったこと、陸軍時代は吉村が少尉で、新藤が一等兵であったことなどを語る。安城家の舞踏会は会社側の企画で、実際に鎌倉あたりでにあった華族の没落の話をヒントに、そういう企画が出来たらしい。語りは大変元気で溌剌としていた。歩いているところは、お孫さんが付き添って、とても弱々しそうで、心配になってしまったのですが。準備中の新作の紹介もしていた。驚き。この人94歳で、市川 崑は91歳。
07.02.11 新文芸座

足摺岬

2007-02-15 | 邦画
足摺岬  ☆☆
1954.05.18 近代映画協会、白黒、普通サイズ
監督:吉村公三郎、脚本:新藤兼人、原作:田宮虎彦
出演:木村功、津島恵子、砂川啓介、殿山泰司

どんよりとした空気、
枯れ木の向こうの安田講堂。
見上げる学生達。
戦前の暗い時代、
世の中の烈風、時代の激流。
渦巻く黒い流れに逆らう学生。
セキをしながら傷ついています。

いつも寝床で寝ている子、
脊椎カリエスの子、
世の中のことに興味が尽きない。
カリカリと、ガリ版に字を書く音、
木村功がいつも世話をしている金魚、
お別れに渡されるアンデルセンの絵本。

伊福部昭の重苦しい音楽に乗せて、
寄り添って歩く木村功と津島恵子。
線路脇の道、陸橋、墓場、林、
足摺岬の断崖。

陸橋の上での別れ、
陸橋の上からプラット・フォームの津島恵子を見送る。
2人を引き裂くように列車がホームに進入してくる。
そして、出発した列車の後姿を、
陸橋の反対側に行って、さらに見送る。

この学生が足摺岬に向かうエピソードは少しメロドラマ。
足摺岬では、みんな優しいです。
殿山泰司が薬売りの定番の歌を「オイチニ、オイチニ」と歌います。
薬じゃなくて、この歌で癒されます。
強く生きなくちゃ。
たくましく生きなくちゃ。

この映画は田宮虎彦の短編、
「絵本」「菊坂」「足摺岬」を合わせたシナリオです。
社会派ドラマとメロドラマが合わさっている。
理屈っぽさと情動の同居。
新藤兼人の脚本。

意地悪な特高の刑事が神田隆(安城家の舞踏会の元運転手)、木村功が失敗して部数不足になった印刷物を持って行く先の、大学病院の助手みたいのが芦田伸介。
07.02.12 新文芸座、06.05.03 NFC

暖流

2007-02-12 | 邦画
暖流  ☆☆
1939.12.01 松竹、白黒、普通サイズ
監督:吉村公三郎、脚本:池田忠雄、原作:岸田国士
出演:高峰三枝子、佐分利信、水戸光子、徳大寺伸、斎藤達雄

ニコライ堂の見える窓。
コーヒーショップ。
白と黒に色分けされたデザインのテーブル。
対峙する高峰三枝子と水戸光子。

モダンな病院。
高峰三枝子の自宅の白いピアノ。
高峰三枝子の洋装。
斬新な印象。

ぎん役の水戸光子。
一生懸命な姿。
強く引き締まった気持ち。

啓子役の高峰三枝子。
不安定で閉塞的な心理。
現代的に、理性的に。

洋装の高峰三枝子、
和服の水戸光子。
この二人の協調、競合。

佐分利信は若いけれど、
やっぱりボーッとしています。
女の恋心が、分かるのかしら。

05.12.09 シネスイッチ銀座

ニコライ堂らしき姿が窓から見える喫茶店のシーンは2回あり、最初は高峰(志摩
啓子)と槇芙佐子(堤ひで子)が面談する場面。徳大寺(笹島)と槇の関係を三枝
子が聞き出すところ。

テーブルクロスは左右が白と黒の2色に分けられている。白いテーブルクロス側が
、白いコーヒーカップ、白い帽子、白っぽい洋装の高峰。黒いテーブルクロス側が
黒いコーヒーカップに濃い目の和装の槇。対照的に表現されていて、話が終わると
ニコライ堂の鐘らしき音がする。2回目が高峰と水戸(石渡ぎん)のとの面談。今
度は高峰が水戸と佐分利(日疋祐三)との関係を聞き出す場面。高峰が白側、水戸
が黒側。ここでは、コーヒーカップを手に持って回わしたり、飲んだりするのでコ
ーヒーカップのデザインが白と黒に塗りわけられているのが分かる。コーヒーカッ
プの片側から見ていると真っ黒だったり、真っ白だったりするけれど、回すと白と
黒が逆転したり、白黒の2色が見える。今まで真っ白だと思っていたのが、白黒2
色だったり、真っ黒だったりするというわけ。このシーンでは、座る場所を高峰と
水戸が入れ替わったりする。話が終わって鐘の音がするのは前と同じ。

ピアノで高峰の気持ちを表現する部分がある。徳大寺との決別を決意するところで
はショパンの別れの曲。佐分利への強い思いを表現するところでは、何の曲だか分
からないけれど、自分を思いを全部鍵盤に叩きつけるような強い音。白いピアノの
前に座る高峰の清らかにして、天使のような高潔な人格の表現。

風呂に浮かぶ菊のシーンは、ドキッとするけれど、これに続く香水を付けるシーン
、続いて佐分利との会話のシーンで上気して袂で顔を仰ぐところは、この天使のよ
うな女性のピンクの色をした佐分利への思いが良く出ている。

07.02.11 新文芸座