二銭銅貨

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イタリア恋占いの旅/第一生命ホール

2013-12-28 | オペラ
イタリア恋占いの旅/第一生命ホール

原作・演出:牧野真由美
出演:漆原利香子(ウルリカ):牧野真由美
   椿愛菜(椿姫):高橋薫子
   肥後礼人(リゴレット):清水良一
   的場公一郎(マントバ公爵)所谷直生
   船上のピアニスト:瀧田亮子

占い師の身の上話の中で、師匠に首飾りをもらったいきさつを歌に託して歌う歌が、ジョコンダの中のジョコンダの母がラウラにロザリオを捧げて歌うアリアだったりする。そんな風にコンサートの歌の列を無理矢理物語仕立てにしたお芝居。登場人物の名前は特に物語には関係無いようだった。イタリヤ歌曲満載で楽しい。一応、お芝居なので椅子とかテーブルとかの簡単なセットはある。芝居は本格的で、それぞれ役になりきっての熱演だった。

牧野真由美の最初のアリア、ジョコンダの母、チェーカのアリアは美しく、一方でウルリカのアリアはドロドロで、その対照が面白かった。アズチェーナやルサルカの魔女なんかも良さそうだと思った。高橋薫子は情熱的なコロラトゥーラで、アミーナのアリア「ああ信じられないわ」は舞台から客席への階段に座った状態から歌いだす。綺麗で悲しい。清水良一は安定したバリトンで、役柄はひたむきでまじめ。「プロヴァンスの海と陸」はゆっくりと滑らかに歌って美しかった。所谷直生もまじめなテノール。女ごころの歌が高速で軽快だった。瀧田亮子はピアノで、各伴奏のほか、幕間の音楽、確か椿姫の3幕目間奏曲などを頑張って演奏していた。特に嵐の場面の演奏にはリアリティがあって、客席からは清水良一の傘の扱いが面白くて笑いが漏れていたけれども、その必死のお芝居、照明も含めて良かった。

セリフにレチタティーボっぽい所があって興味深いと思った。無理にレチタティーボっぽくしなくても、日本語の生地のままで十分に音楽的だと感じた。

第一生命ホール主催の公演。
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フィデリオ/日生劇場2013

2013-12-08 | オペラ
フィデリオ/日生劇場2013

作曲:ベートーヴェン、演出:三浦安浩
指揮:飯守泰次郎、演奏:新日本フィル
出演:レオノーレ:小川里美、フロレスタン:成田勝美
   ロッコ:山下浩司、ピツァロ:ジョン・ハオ
   マルツェリーネ:安井陽子、ヤキーノ:小貫岩夫
   フェルナンド(大臣):木村俊光

全体的にややギクシャクした感じに思えて、滑らかな感じが無かった。イタリア的なものからするとドイツ的な感じ、また途中にセリフが入るので、それらが原因かも知れないし、別の要因もあったかも知れない。このオペラに慣れていない故なのか、あるいはこれがこのオペラの特徴なのかも知れない。

演奏は後半に迫力があって、普通の交響楽のコンサートのようでもあって良かった。演出は、時期を現代に読み替えたもので、反政府軍かあるいはテロリスト集団に捕えられた市民の開放というような感じになっていた。かなり硬い感じの演出。音楽には合っているように思えた。

小川里美は綺麗なソプラノで強い声。成田勝美は声が苦しそうで不安定だった。何か調子が悪かったのかも知れないが、牢獄の場面ではリアリティがあった。親方役の山下浩司は堂々として迫力があっった。安井陽子は軽快でハキハキとした若い女子。小貫岩夫はメリハリのある軽快愉快な役柄。両者共に歌も芝居も良かった。

合唱には迫力があり、また良く揃って、これがこの公演の一番だった。C.ヴェレッジシンガーズ。

13.11.23 日生劇場
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ピグマリオン/新国立劇場

2013-12-07 | Weblog
ピグマリオン/新国立劇場

原作:ジョージ・バーナード・ショー、演出:宮田慶子
出演:イライザ:石原さとみ、ヒギンズ:平岳大、
   ドゥーリトル:小堺一機、ピカリング:綱島郷太郎

平面的で線の多い白が基調のデザインはやや漫画的。タクシーにも、平面の板に車の絵を書いたものを使って簡素な表現をしていた。最初に登場するコベントガーデンの建物は大きくかしいでいて、これも漫画的と言えなくもない。キャラクターのデフォルメされた性格づけの故か、演出も何となく漫画的な印象に感じた。一方、舞踏会の場面では一転して奥行き感のある豪華なセットが使われ、車も本物のクラシックカーのようなものが出てきて豪華な雰囲気だった。演出や美術も安物っぽい感じと豪華な感じの間に大きな落差をつけて、このシンデレラストーリーを強調しているようだった。全体にメリハリと軽快さが感じられて楽しかった。

石原さとみは元気良くめいっぱいに芝居して、平岳大(ひら・たけひろ)の迫力ある芝居に良くアンサンブルしていた。舞踏会の場面ではイライザと同じように中々うまくやっていた。小堺一機のセリフは落語の語りのようで面白かった。ロンドンの話に落語の雰囲気なので、ややミスマッチな感じがしたけれども、和楽器とオーケストラのアンサンブルのようなユニークさが良かった。綱島郷太郎は安定感がある芝居で、しっかりと主役2人の芝居を支えていた。増子倭文江の家政婦役、倉野章子の母親役はそれぞれピシッと締まって注目された。

ヒギンズの性格づけが、ややマザコン気味で典型的な理学系男子の若造で子供っぽい作り。対するイライザは素朴ながら、ちょっとおませで好奇心の強い文系かあるいは理系でも化学系の女子といった感じ。かたや恋愛における抽象論、一般論、ロジックを問題にし、かたや「私」と「あなた」固有の心の状態が今どうなっているのかを問題にしている。両者の相反する性格間の化学反応やいかにといった感じの芝居になっていた。バーナードショウは当時の上流階級に対する風刺の意味も強く物語りの中に入れていたようにも思えるが、演出の宮田はこのありがちな男女の恋愛感情のすれ違いのディテールに踏み込んでいたようにも思える。バーナードショウの脚本と宮田の演出も、もしかしたらすれ違っていて、ヒギンズとイライザと同じ関係になっていたのかも知れない。

この物語の後、どうなるかは観客まかせだと思うけれど、多分このあとヒギンズはイライザを追いかけて、結局母親と息子の関係と同じようにイライザの尻に敷かれるハメとなり、めでたしめでたしとなるような気がした。

楽しかった。

13.11.17 新国立劇場
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