二銭銅貨

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コジ・ファン・トゥッテ/国立音大2015

2015-10-31 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ/国立音大2015

作曲:モーツァルト、指揮:山下一史
演出:中村敬一、演奏:国立音楽大学オーケストラ
装置:鈴木俊朗、衣裳:半田悦子
出演:フィオルディリージ:高橋広奈、ドラベッラ:中川香里
   フェルランド:渡邉公威、グリエルモ:山口義生
   ドン・アルフォンソ:大川博、デスピーナ:竹内伶奈

高橋はやや甘味のある綺麗なソプラノで25番を美しく歌った。中川は高い声のメゾで天然な感じの芝居だった。高橋とは似た感じの声でアンサンブルが美しく響いた。渡邉は良く声の出るテノール。山口は一所懸命な感じのグリエルモだった。竹内はレティタティーボが美しくアリアも芝居もハキハキとしていた。堂々と余裕の舞台だった。大川はドシッとした声と芝居で迫力があり、この芝居の通し柱になっていた。

舞台は概ねクリーム色の壁や柱の飾りと若干の家具からなるシンプルなものだったが、舞台一杯を使って大きさを感じるものだった。衣装は美しくあでやか。フェランドとグリエルモの変装後の衣装も本格的なものだった。演出はオーソドックスで演奏会形式に近い、アリアや重唱を重視したものだった。合唱隊は並んで元気良く行進する感じ。存在感があった。オーケストラも元気よく、素直に美しく演奏している感じがした。

15.10.18 国立音楽大学講堂大ホール

フィガロの結婚/昭和音大2015

2015-10-21 | オペラ
フィガロの結婚/昭和音大2015

作曲:モーツァルト、指揮:ムーハイ・タン
演出:マルコ・ガンディーニ、演奏:昭和音楽大学管弦楽団
美術:イタロ・グラッシ、衣裳:アンナ・ビアジョッティ
出演:フィガロ:ワン・リーフー、スザンナ:中桐かなえ
   伯爵:シェン・インコン、伯爵夫人:石岡幸恵
   ケルビーノ:丹呉由利子
   マルチェリーナ:ルー・ジンシュウー
   バルトロ:ヤン・イー、バジーリオ:工藤翔陽
   バルバリーナ:伊藤香織、アントーニオ:小田桐貴樹
   ドン・クルツィオ:高橋大

ワンは迫力のあるバリトンで、声はやや柔らかく少し修飾がある。中桐は強い声の元気良いスザンナ。シェンはややおっとりした感じの伯爵。石岡は声の綺麗な強いソプラノで堂々とした態度、芝居、歌だった。女王のような伯爵夫人。ルーは芝居っけのある落ち着いたマルチェリーナで最後のアリアを頑張って歌った。工藤は声の綺麗なテノールで、指揮棒を振り回す演出が特徴のバジリオを上手く演じた。安定した歌と芝居だった。

演奏は厚みがあって迫力のある演奏だった。プロダクション自体は2012年の藤原歌劇団の公演のもの。一部の歌手は上海音楽学院との交流プロジェクトによる招へい歌手。ワンはプロ、他は学生。

15.10.11 テアトロ・ジーリオ・ショウワ

ボエーム/洗足学園2015

2015-10-20 | オペラ
ボエーム/洗足学園2015

作曲:プッチーニ、指揮:松下京介
演出:小澤慎吾、演奏:SENZOKUオペラ管弦楽団
美術:車田幸道
出演:ミミ:嘉目真木子、ロドルフォ:澤原行正
   ムゼッタ:田川聡美、マルチェロ:岡昭宏
   ショナール:望月一平、コリーネ:片山将司

嘉目は声が低いソプラノで声量がある。器楽的な声でドイツ的なオペラが合いそう。セリフ的な部分や重唱の部分もしっかりと声が出ていて、声はドイツっぽいけど歌はちゃんとイタリアになっていた。澤原は透明感のある美しいテノール。田川はハキハキと元気が良い。岡は迫力と安定感のあるバリトンで良く声が出ていた。望月は安定したバリトンでショナールっぽい明るい芝居が良かった。片山は低い声が良く出ているバスで、「古い外套よ」をゆっくりと大地を踏みしめるように歌って大拍手だった。

美術はオーソドックスにベリズモ的な、あるいはネオ・リアリズモ的な、暗くて重厚な厚塗りの油絵のような質感のものだった。それほど予算はかけていないとおもうけれど、3場面とも別々に作成されたしっかりした美術だった。演出もオーソドックスで、ミミの悲劇がしっかりと描かれていた。男性陣の歌や芝居の個性が良く出ていた故か、4人のボヘミアンの友情が印象に残る舞台だった。

オーケストラの演奏は、良くイタリアの歌を歌っていたように思う。特に「私の名はミミ」にはイタリアオペラの空気が強く感じられた。

文化庁委託事業の「平成27年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」、主催は文化庁と洗足池学園。

15.10.16 洗足学園、前田ホール

フィガロの結婚/芸大2015

2015-10-19 | オペラ
フィガロの結婚/芸大2015

作曲:モーツァルト、指揮:ステーファノ・マストランジェロ
演出:直井研二、演奏:藝大フィルハーモニア
装置:川口直次、衣裳:西原梨恵
出演:アルマヴィーヴァ:青木海斗、ロジーナ:品綾野
   スザンナ:横森由衣、フィガロ:白石陽大
   ケルビーノ:山下裕賀、マルチェッリーナ:吉田貞美
   バルトロ:長谷川顯、バジリオ:川上晴央
   ドン・クルツィオ:持齋寛匡、バルバリーナ:藤井冴
   アントニオ:谷友博

始まりは白い壁の部屋が舞台装置になっていて、中盤には、この壁を半分無くして外の景色、緑深きヤシの木と紺の背景が見えるようにする。最後は全部取り除いて、室内だったところに庭風の植え込みを並べることで外の雰囲気を出していた。壁の白、外の紺、ヤシの緑と樹の黄色がかった茶の色のアンサンブルがスッキリととして気持ち良かった。演出は物語に忠実で、アリアや重唱を重視したもの。皆がリサイタル風にしっかりと歌を歌った。多重唱でも誰がどこを歌っているのかが良く分かるので、まるでボーカルスコアを舞台上に展開しているかのような演出だと感じた。たとえば、村娘の2人も前に出て来てしっかり歌ったので、これが実は魔笛の童子のような美しい重唱であることも良く分かった。

青木は上品な感じのバリトンだが、芝居ではスケベ爺の悪辣さを出していた。品は美しいクリアな声でロジーナのアリアにふさわしい。教会音楽のような、美しく清らかで優しいアリアになった。横森は元気良くハキハキしてスザンナらしいソプラノ。白石は迫力と安定感のあるしっかりしたバリトンで堂々と、手慣れた感じでフィガロを演じた。山下は低い声が美しいメゾ。しっかりした「恋とはどんなものかしら」を歌って大拍手だった。藤井のバルバリーナも元気が良く、アリアをしっかり強く歌った。川上は、ちょと鼻にかかったような声に特徴があり、それがバジリオの役にぴったりだった。芝居も堂々とコミカルに演じて印象に残るバジリオとなった。最後のアリアもしっかりと歌った。吉田の芝居も良かったが、最後の超絶的なアリアを気迫で歌い切った。谷のアントニオは存在感のある歌と芝居で、これはご馳走。

衣装は豪華で美しい。特にロジーナの衣装には複数のもがあって、これにはデザイナーの気合いが感じられた。

演奏については、序曲は上品な音に感じた。本編では歌とのアンサンブルを重視していた様に思う。

このオペラはフランス革命の数年前の作品なので、フランス革命を連想させる。舞台の白亜の屋敷の白や外の景色の紺がフランスの伝統的な色、トリコロールのうちの2色を連想させ、最後のフィナーレは革命の民衆への賛歌のようにも思えた。

15.10.03 芸大奏楽堂

ダナエの愛/東京文化会館(二期会)2015

2015-10-18 | オペラ
ダナエの愛/東京文化会館(二期会)2015

作曲:リヒャルト・シュトラウス 、指揮:準・メルクル
演出:深作健太、演奏:東京フィル
装置:松井るみ、衣裳:前田文子
出演:ダナエ:林正子、ミダス:福井敬、ユピテル:小森輝彦
   ポルクス:村上公太、メルクール:児玉和弘
   クサンテ:平井香織
   ゼメレ:山口清子、オイローパ:澤村翔子
   アルクメーネ:磯地美樹、レダ:与田朝子

福井は全力で歌って美しく清涼な感じの声をホールいっぱいに響かせた。こうしたワーグナーっぽいオペラに合う声だと思った。小森のユピテルは美女に囲まれてデレデレするやや下品な感じの神様だったが、悪辣な感じの場面ではその声と合わせて、実はとんでもない大悪党の迫力を見せていた。福井との重唱に迫力があり、聴きごたえのある公演となった。林は声量のある美しいソプラノで安定している。4人の王女のアンサンブルが良く引き締まっていて、この人たちがこのオペラでは重要だと感じた。ちょうど魔笛の3人の侍女の役割だ。

オペラの前半は合唱が多用されるが、舞台装置の横壁と天井に密閉された空間のせいなのか。かなりの迫力を感じた。ユピテルの登場シーンでは天井と壁の間に隙間が出来て、そこから階段が突き出て来るサプライズのある演出だった。最後は破壊された街をイメージした美術となって、防護服のメルクールがガイガーカウンターを持って出て来るので核兵器の使用を想像させる。その後、メルクールは医者の扮装に変わる。これは年老いたユピテルの主治医のイメージ。破壊された都市の上空に常にうっすらとスモークがあって、そこにかすかに照明をあてて不穏な雰囲気を出していた。最後にミダスが野菜を入れたリュックを担いで帰って来るところは戦後の買い出しを連想させるものだった。

「金」と「愛」の対立関係を題材にしたものだが、年老いたユピテルを通して、老人問題もテーマにしていたようだ。「若者」と「年寄」の関係。何も言わずに消え去る年老いたユピテルが印象的だった。

衣装では4人の王女のものが面白かった。頭髪が茶色のキノコの傘のようになっていて、縦の波模様の茶色のズンドウのワンピースだ。楽しい衣装が鮮烈だった。

演奏はしっかりとしていて、分厚さを感じる迫力のある音だった。

15.10.04 東京文化会館