二銭銅貨

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08歌舞伎座8月/紅葉狩、愛陀姫/歌舞伎

2008-08-16 | 歌舞伎・文楽
08歌舞伎座8月/紅葉狩、愛陀姫/歌舞伎

3部:
紅葉狩(もみじがり)
出演:勘太郎、橋之助、巳之助

 可愛らしい野菊は鶴松で柔らかい薄紫の日本舞踊。きまじめで一緒懸命。山神は巳之助で、こちらはちょっと硬派。緑と白のコーディネートが楽しい山神はアイリッシュの緑とリズムを思い起こさせる。橋之助が維茂(これもち)で堂々たる構えで美しく、勘太郎の鬼女は硬派なお姫様。長い難しい踊りを堂々と見せていた。紅葉美しく、扇子2枚の紅葉の色は良く合い、激しい鬼女と端整な維茂が良く映る。

愛陀姫(あいだひめ)
出演:七之助、橋之助、勘三郎、三津五郎、福助、扇雀

 福助、扇雀のコンビが祈祷師の役。これが狂言回しのようでもあり、舞台の芯のようでもある。あやつり人形のような軽快な動き、奇妙な発声は福助ならでは。そのオレンジの衣裳に、対する扇雀は水色。がっちり福助の動きを受け止める。名前が荏原に細毛。実在の人気占い師のパロディになっていて、「占いとは大衆の望んでいることを見抜いて言うことだ」なる趣旨の風刺のセリフがある。

 良く通る、張りのある声の七之助はアイーダすなわち愛陀姫で、これは舞台の大黒柱。強い気持ちで運命の残酷に立ち向かう。対する相方はラダメスすなわち木村駄目助左衛門(きむラダメスけ)で2枚目。2人の愛の物語だけれど甘い感じは無く、世の残酷、社会の無惨に対して強く抵抗している感じ。

 濃姫役は勘三郎。これは難しい役だ。まさにこの世の矛盾をそのまま体現するような役。まったく姫様の役で無いし、また悩める女性の役でも無い。抽象化された人間の悪循環を体現する役だ。隠れた本当の主役がこの濃姫だ。

 三津五郎は愛陀姫の父役。分かりやすいセリフ回しでこの世の無常を良く表現する。歌舞伎っぽくなくて普通の舞台劇の雰囲気だ。

 美術の一部となる群集の表現も含めて、舞台セットの動きが軽快で楽しい。美術の動きは舞踊のようでもある。神社のセットのブットイしめ縄が人を喰ったようなデザインで楽しい。ガキ大将な感じ。

歌劇アイーダのパロディ。有名な行進曲はそのまま出て来る。
演出は野田秀樹。
観客に若い人多し。

08.08.15 歌舞伎座(2F)

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2 コメント

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愛陀姫って (kaminarilove)
2008-09-15 20:41:17
良くも悪くも野田の芝居だ。20年前から変わってないと言ったら言い過ぎだろうか。ラスト、2人の魂と思しきものが飛んだが、わたしの周囲では笑いが起こった。悲劇の終焉に笑いはまずいだろう。
愛陀姫 (二銭銅貨)
2008-09-17 00:35:10
コメントありがとうございます。確かに最後の風船を飛ばすところは笑ってしまいました。劇全体に悲劇的な印象が少なくて、むしろ悲劇のパロディのような感じがしました。そもそも本物のアイーダを知りませんし、野田さんの演劇も知らないので、単純にそういう印象を受けました。

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