二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

ドン・パスクワーレ/ハーモニーホール2024

2024-08-26 | オペラ
ドン・パスクワーレ/ハーモニーホール2024

指揮:山本達郎
演出:古川寛泰
演技アドバイザー:大塚ヒロタ (テアトロ コメディア・デラルテ主宰)
ピアノ:松岡なぎさ
合唱:「ハーモニーホール座間 オペラ合唱ワークショップ」参加者
出演:
ドン・パスクワーレ:岡野守
マラテスタ:小野寺光
ノリーナ:中井奈穂
エルネスト:井出司
公証人:星田裕治

岡野はしっかりと安定した声。痩せていて小柄、ひょろひょろで頼りない、元お坊っちゃまかと思われるような世間知らずな感じのするドン・パスクワーレを好演した。とぼけた芝居がとても良かった。小野寺は深くて大きい芝居と声。芝居全体を支える屋台骨。岡野との早口の二重唱はしっかりと決まった。早口の二重唱の最初、岡野が歌い出す時にドン・パスクワーレから取り上げた鉄砲の処置に困って、それを指揮者に預ける場面があった。中井は綺麗な声のソプラノで声も芝居も堂々としていた。マラテスタからbrava,bravaと絶賛されるsemplicetta(素朴な女の子)のポーズの所では定番のポーズながら何度も笑いを取っていた。井手はエネルギッシュなエルネスト。パワー全開で歌った。ちょっと声がカスレ気味になる場面もあったが最後まで歌いきった。セレナータもノリーナとの二重唱も全力だった。芝居は情熱的な感じ。

演奏はピアノ一台。セレナータは舞台裏でのギター伴奏。もともとこの場面はエルネストによるマンドリンのような楽器での弾き語りを想定していたのではないかと思った。序曲は指揮者単独か、あるいはピアニストとの連弾だったのか、わからなかったが、ややゆっくりめに始まり、メリハリのある力強い演奏。本編の演奏も力強い印象だった。

合唱は大人数で、舞台を所狭しと動き回って埋め尽くした。一方で、2回目の合唱のピアノの部分ではかなりの時間静止するような演出もあった。

装置はほとんど無く、舞台奥にカーテンがあって、ここから歌手が出入りする。

3人が召使いがかなりコミカルな芝居をした。特にエルネストを好きな若い男性の召使いは道化師っぽい感じでおもしろかった。

8月からハーモニーホールは改装のため休館する。それが原因かどうかは分からないが、300人規模の小ホールでの公演だった。

24.07.21 ハーモニーホール、小ホール
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シチリアの晩鐘/アーリドラーテ歌劇団2024

2024-08-26 | オペラ
シチリアの晩鐘/アーリドラーテ歌劇団2024

作曲:ヴェルディ
指揮:山島達夫、演出:木澤譲
振付:能美健志、石井竜一

演奏:テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・オーケストラ
合唱:テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・コーラス
出演:
エレナ:中村真紀
アッリーゴ:藤田卓也
モンフォルテ:小林啓倫
プロチダ:東原貞彦
ダンステアトロ21、井上バレエ団

天井から吊り下げられた数枚の移動可能な雲の形の板以外は舞台装置が無く、プロジェクションマッピングによって若干の背景を作り出していた。舞台装置がミニマルである代わりに合唱団と舞踏は人数が多い。舞踏はバレエとダンスがそれぞれ10人づつ位で、交互に、あるいは合同で30分くらいのバレエ音楽シーンが演じられた。

中村は声量があり太い声。藤田は高音が目立たなかったが中低音は安定した声量のある声。小林は迫力のあるやや丸みを帯びた金属的な声で、引き締まった歌で舞台を締めた。東原は安定したバスで声量もあって安心して聴けた。舞台を下で支える感じ。

演奏はきちんと真面目な感じ。

シチリアの晩鐘は、シチリアの晩祷、シチリア島の夕べの祈りとも訳される。

24.06.23 新国立劇場、中劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デイダミーア/二期会2024

2024-08-26 | オペラ
デイダミーア/二期会2024

作曲:ヘンデル
指揮:鈴木秀美、演出:中村蓉
装置:原田愛、衣裳:田村香織
演奏:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ(NBO)
合唱:二期会合唱団
出演:
デイダミーア:清水理沙
ネレーア:田中沙友里
アキッレ:渡辺智美
ウリッセ:武藤あゆみ
フェニーチェ:室岡大輝
リコメーデ:水島正樹

装置はシンプル。単純な形の箱型の部屋があって、その中と前や上の2階部分で芝居が行われる。大道具としては1から2メータ程度の大きさの、カラフルな積み木の様なものが様々に組み合わされて使われて、様々な情景を表現されていた。衣裳はギリシャ・ローマを思わせる服装を現代風にアレンジしてデザインしたもの。

歌手は綺麗でクリーンな声の人が多かった。ソプラノとバスしか居ない公演だったので、歌手の特徴の違いをあまり感じなかった。演奏はピリオド楽器による控えめなものだったので特に歌手の声量が問題になるような場面はなかった。

ダンサー6人がほぼ出ずっぱりでダンスをしたり黙役の芝居をしたりで大忙しだった。歌手もダンスに動員されていて、ミュージカルの様な雰囲気だった。ヘンデルの音楽の特にアップテンポな部分は調子がいいのでミュージカルっぽい演出が合うのかも知れない。演出はダンスの振付家。

合唱は舞台に立たず、オケピの中や観客席の横などからオーケストラと一緒に演奏する感じになっていた。

24.05.26 めぐろパーシモンホール 大ホール
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ドン・パスクワーレ/スカラ座2024

2024-08-26 | オペラ
ドン・パスクワーレ/スカラ座2024

作曲:ドニゼッティ
指揮:Evelino Pido'
演出:Davide Livermore
装置:Davide Livermore, Gio Forma
衣装:Gianluca Falaschi
演奏:スカラ座
合唱:スカラ座
出演:
ドン・パスクワーレ:Ambrogio Maestri
ノリーナ:Andrea Carroll
マラテスタ:Mattia Olivieri
エルネスト:Lawrence Brownlee

幕が上がるとドン・パスクワーレの母親の葬式の場面が現れて序曲が始まる。しばらくするとドン・パスクワーレがウトウトし始め、夢の中で彼の過去が再現される。子供時代、青年時代、壮年時代、いずれも女性と仲良くしようとする場面で母親が現れてそれをぶち壊す。序曲の各部分ごとにそれぞれの場面をあてはめて、旋律の雰囲気に合わせて演出していた。

舞台は前面に屋敷の壁があって、これが上にあがると部屋が現れる。太い柱が何本かある豪華な部屋だ。部屋の中に額縁があって、そこに母親の顔の動画が映されている。ノリーナとのやり取りが始まると不機嫌な顔になったりする。この部屋はダイナミックに動いたり回転したりする。

床に動く歩道の様なものがセットしてあり、舞台の様々な場面で人やものが移動するシーンを効果的に作り出していた。

「あの騎士の眼差しは」の所では本物のオープンカーが登場し、歌の後半ではこれが4本のワイヤーで上に持ち上げられ、ノリーナはそれに乗ってコロラトゥーラを空を飛びながら披露する。背面にはサンタンジェロ、バチカン、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂などを空から見た映像が映される。

その後のマラテスタとの重唱はファッションショー風に展開する。ドレスを着たモデル数人が動く歩道の上を並んで、歌に合わせて歩く。モデル達はそれぞれ歌詞に出て来る単語に合わせた衣裳を身に付けていて、そのそれぞれが単語が書かれたプラカードを掲げている。歌の最後でプラカードがひっくり返り値段のような数値があらわれた。

you tubeに数年前に撮影されたと思われる映像がアップされている。この映像の出所はRosa Feoraのブログらしい。ブログによるとこれは2018年5月にスカラ座で新制作されたもので、キャストはノリーナがRosa Feora、エルネストがRene Barberaで、ドン・パスクワーレとマラテスタとは本公演と同じ。これによると、まず最初にノリーナが、Nuova Collezioneのカードを掲げ、モデル達は左から順に、
Semplicetta (単純)
Ba Gridare (叫ぶ)
Ba Pianger (泣く)
Fiera (誇らしく)
Mesta (悲しく)
のプラカードを掲げている。
それらが退場すると、次に
Zitella (独身女性)
Bricconcella (おてんば)
Collo torto (首を傾け)
Bocca stretta (口をすぼめる)
が出て来る。
最後にプラカードがびっくりかえる場面では、
Bricconcella 8000 Lire
Zitella 12000 Lire
Semplicetta 5000 Lire
Fiera 7500 Lire
Collotorto 10000 Lire
Boccastretta 11000 Lire
の値札に変わる。

2幕目冒頭のエルネストのアリアは夜更けの人数の少ないターミナル駅の前で歌われた。エルネストは大きな風船を持っており、歌の緩から急への転換の際にそれをバチンと割った。

最後の場面は遊園地風。背景に多数のブランコがくるくる回る乗りものらしきものが映っている。上からブランコが4つ降りてきて、皆がそれにのる。ブランコは空中に引き揚げられ、最後の合唱、重唱は空中で歌われる。ただし、ドン・パスクワーレは重すぎて一人持ち上がらない。ちょと残念な気持ちのドン・パスクワーレの所へ亡霊となった母親がやって来る。この最後の成り行きは母親にとっては嬉しい展開。母親がドン・パスクワーレの手を握って幕となる。

演奏は豪快。舞台も豪快。合唱は、最初のprest, prestは、いまいち迫力が無かったが、2つ目の合唱は迫力があった。

ドン・パスクワーレもマラテスタも美しい声で声量も十分ある。エルネストは真面目な感じの芝居で声は美しかった。ノリーナは透明感のある美しい声で、軽いコロラトゥーラ。明るく活発で強いノリーナだった。

軽快で豪快、大胆不敵なプロダクションでメチャメチャ楽しかった。また見たい。

24.05.11 スカラ座/ミラ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カバレリア・ルスティカーナ、道化師/コッチャ劇場2024

2024-08-26 | オペラ
カバレリア・ルスティカーナ、道化師/コッチャ劇場2024

作曲:マスカーニ、レオンカバッロ
指揮:Fabrizio Maria Carminati
演出:Matteo Mazzoni
装置:Matteo Capobianco
衣装:Roberta Fratini
演奏:Filarmonica Italiana
合唱:Schola Cantorum San Gregorio Magno
出演:
サントッツァ:Cristina Melis
トゥリッドゥ:Zizhao Guo
アルフィオ:Marcello Rosiello
ルチア:Giorgia Gazzola
ローラ:Mariangela Marini

ネッダ:Alessandra Adorno
カニオ:Gustavo Porta
トニオ:Marcello Rosiello
ペッペ:Christian Collia
シルビオ:Andrea Piazza

サントゥッツァは高音がよく出て綺麗な声。トゥリッドゥは気迫が感じられる強い声。ルチアは安定した強い声で、毅然とした芝居が良かった。アルフィオは気品のある声で、芝居も紳士的な感じ。声も響きが美しく、オーケストラに負けない声量がある。ローラは安定感のある美しい声。

カニオは声量があって、芝居も歌も全力でがんばっていた。ネッダは安定感のある綺麗な強い声。芝居の動きにメリハリがあって良かった。明るく楽しいキャラクターを演じた。トニオはアルフィオと同じ歌手。特に出だしの口上はクリアに歌って気持ちが良かった。ペッペは綺麗な声で控えめな芝居。シルヴィオは安定感があって高音が美しい。

合唱は迫力のある綺麗な声。演奏は弦楽の美しい響きが印象に残った。やや、急ぎ足の演奏に感じられた。

舞台上のセットは岩場風の崖に横穴が3つほど開いたもの。上手には岩場が2個ある。ここに色々な映像をプロジェクションマッピングして様々な場面を作り出していた。

教会の合唱場面では舞台裏での合唱に合わせてマリア像を先頭にした行列が舞台を横切る。合唱団は庶民的な衣裳で上手から出てくると舞台全体に並び、祈りながら合唱する。敬虔で神聖なイメージが強く伝わって来た。間奏曲は岩場の上でローラとトゥリッドゥが逢引しているシーンを背景に明るくロマンチックに演奏された。

最後の場面は決闘場面を見せる事なく、トゥリッドゥの死体がルチアとサントッツァの前に運び込まれる。ルチアはサントッツァをはねのけるようにして怒りをサントッツァに向ける。そしてトゥリッドゥの上に突っ伏して嘆き悲しむ。

パリアッチは同じ舞台セットで、海辺の岩場をイメージしたプロジェクションマッピングが使われた。最初の口上では、子供達が会場中央の通路前方に集まってそれを聴くという設定だった。サーカス一団は小船に乗って下手からやって来る。その後は、小船は上手に固定される。

ネッダのアリアの後のネッダとトニオのやり取りの重唱が良かった。ネッダとシルビオとの重唱も良かったし、ネッダとカニオとのやり取りも良かった。

最後のトニオのセリフ、La commedia e finita! が会場に劇的に響いた。

24.05.10 コッチャ劇場/ノバラ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする