俳優の渡辺文雄さんが亡くなられて、一年が経った。僕は渡辺さんと二年半、番組を御一緒させていただき、その間、何度か、番組のディレクターやスタッフの人達と渡辺さんを交え、お酒を飲みに行った。渡辺さんも僕も「映画」の話が好きで、五時間も六時間も赤坂の居酒屋で語り明かした。
渡辺さんに聞いた映画の話で面白かったものを一つ。木下恵介監督作品に出ていた時の事。暑い夏だった。監督は何が気に入らないのか、夕方近くになってもなかなか本番にならなかった。主演の女優さんも着物の前を少しはだけて、暑さを我慢し、待機していた。その時、突然、木下監督が主演の女優さんに、「川の土手に上がれ!」「思いっきり走れ!」「止まって、右を見るんだ!」と叫びながら指示した。
そのシーンが、映画が完成してみると「最高に泣けるシーン」になっていたそうだ。
木下監督は、「日本の風景・・・」、特に「雲」を撮るのが上手かった。とても、面白い話だと、僕は思った。
渡辺さんは本当に博識だった。
今、日本に欠けている、いろんな大切な事をご存知で、僕もその幾つかを教えて頂いた。
去年の告別式の日、青山斎場は、カンカン照りの暑さだった。家族の方の配慮で、渡辺さんの御棺に花を入れさせて貰った。とても優しいお顔をされていた。その時、僕は号泣した。涙が後から後から出てきて、止まらなくなった。会社の上司がそっと僕の肩を触ってくれたのを憶えている。優しい「心」を感じた。
あれから、もう一年。時の経つのは速いものだ。



渡辺さんに聞いた映画の話で面白かったものを一つ。木下恵介監督作品に出ていた時の事。暑い夏だった。監督は何が気に入らないのか、夕方近くになってもなかなか本番にならなかった。主演の女優さんも着物の前を少しはだけて、暑さを我慢し、待機していた。その時、突然、木下監督が主演の女優さんに、「川の土手に上がれ!」「思いっきり走れ!」「止まって、右を見るんだ!」と叫びながら指示した。
そのシーンが、映画が完成してみると「最高に泣けるシーン」になっていたそうだ。
木下監督は、「日本の風景・・・」、特に「雲」を撮るのが上手かった。とても、面白い話だと、僕は思った。
渡辺さんは本当に博識だった。
今、日本に欠けている、いろんな大切な事をご存知で、僕もその幾つかを教えて頂いた。
去年の告別式の日、青山斎場は、カンカン照りの暑さだった。家族の方の配慮で、渡辺さんの御棺に花を入れさせて貰った。とても優しいお顔をされていた。その時、僕は号泣した。涙が後から後から出てきて、止まらなくなった。会社の上司がそっと僕の肩を触ってくれたのを憶えている。優しい「心」を感じた。
あれから、もう一年。時の経つのは速いものだ。


