元気出る
アフリカに行く時、二つの選択肢があった。
一つは「エア・インディア」で、インドの首都ニューデリー経由。
もう一つが「パキスタン国際航空」で、パキスタンの首都カラチ経由だった。
そして、僕は後者を選んだ。運賃が安いから。
後に聞いた話だが、南回りで安いのは、「パキスタン国際航空」と「エジプト航空」。
成田を出ると、香港・バンコクと止まり、カラチで飛行機を乗り換える。
カラチからはドバイ経由でアフリカ・ケニアの首都ナイロビまで、トランジットを含め、20時間余り。
成田空港から機内に乗り込む。
まず、僕のシートのリクライニングが壊れていた。倒れたまま、元の位置に戻らないのである。
カラチまで、何人ものCAに「離着陸の歳、席を元に戻せ」と言われたが・・・それは不可能!
香港からは出稼ぎ帰りらしい、大きな荷物を持ったおじさん・おばさんが大挙して乗り込んで来た。機内の匂いも変わる。
運賃が安いので、「出稼ぎ列車」の様な感覚で、「パキスタン国際航空」は使われている様だ。
機内は喧騒に包まれ、僕の前で騒ぎが起きた。
座席がダブルブッキングされていた。
出発の時刻が迫る。
CAさんの席にダブルブッキングされて騒いでいた乗客たちが座り、飛行機はCAさん達が立ったまま離陸した。
この飛行機は「ボーイン737」。かつて、日本でもよく使われていた機材。多分、どこかの航空会社の「お古」なのだろう。
バンコク国際空港に着陸した時、アタマの上から非常時に使う「酸素呼吸器」がバラバラと降って来た。
パキスタンはイスラム圏の国。
「エニイ・アルコホリックドリンク?(お酒はありますか?)」
と豊かな口髭を蓄えたパーサーに僕が訊くと、
「ノー!」
と一言、冷たい返事。
もちろん、飛行機を乗り換えるカラチ国際空港にもアルコール飲料は全く無い。
カラチからドバイ。砂漠の中の空港に飛行機は砂煙を上げて着陸した。着陸の際、機体が一回バウンドして、再び滑走路から浮き上がったのがジェットコースターに乗っている様で怖かった。
ドバイ。ドアが開くと、日本人は一斉に走り出す。全力疾走!
何故?ビールが飲みたいからだ。ここドバイの空港。飛行機が給油している間に乗客が出られるスペースに「ビアスタンド」がある。
ここまでアルコールを我慢して来た僕ら日本人はスタンドに「子犬の様に」群がる。
みんな日本を出発してから久しぶりに美味しいビールが飲めて幸せそうだ。
「子犬たち」はしっぽを振っている。
少しほろ酔い気分でいると、飛行機はナイロビ国際空港に向かって、高度を下げていった。
さて、今まで乗って、いちばん良かった航空会社は?
南米ブラジル・リオデジャネイロに行った時の「ヴァリグ・ブラジル航空」。
成田を出て、ロサンゼルスで給油し、同じ飛行機が南米リオデジャネイロに向かう。所要24時間。時差12時間。「午前」と「午後」が替わるだけだから、時計の針を調整する必要の無い、遥か遠い場所。
まず、アルコールが無料で飲み放題。機内食も南米特産の中身の詰まった高級ステーキが出る。アメリカのステーキとは一味も二味も違う。これに赤ワインがすごく合うのだ。
アメニティーも充実。アイマスクにスリッパ。寝る時の「U字型空気枕」。歯磨きのセット等々。
もちろん、エコノミー席でのサービスの話。
24時間も飛行機に乗っていると、これらのサービスはとても嬉しい。
難を言えば、僕は背が高いので、前の席との距離がもう少しあれば最高だったが。
いずれにせよ、飛行機に乗った瞬間から「旅」は始まる。
僕は毎回、ワクワクドキドキしながら、機内へと入って行き、「新たな旅」を始めるのである。
いつも、席は「CAさんの前」を指定。足が伸ばせるから。