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ニジェールで農耕民と牧民が衝突〜農耕民と牧民(5)

2016-11-05 07:30:30 | アフリカ情勢
11月1日、ニジェールのタウア州の閑村で農耕民と牧民が衝突。これまでの報道では20人が死亡し、43人が負傷。一部の農家は焼き討ちにあった。国際メディアが伝えている。

事件は同日朝。とある家畜を連れた牧民が、収穫期を迎えた農地に来るや、家畜が穀物畑を方々で荒らし始めた。この襲撃を受けて農耕民が応戦、「白兵戦」が繰り広げられた。その激しさは例がないほど(rare violence très barbare)だという。

事態は治安部隊の介入で沈静化。バズーム内務大臣は当事者への冷静を呼びかけるとともに、暴力には法の裁きが下るであろう、と述べている。


サヘル地域における農耕民と牧民。水や牧草地にも乏しい厳しい自然の地で、長い歴史の中、共存と闘争を繰り返してきた。そしてその対立の今日的意義は大きく変わりつつある。

という話を、ンボテブログでも過去シリーズで書かせてもらった。

農耕民と牧民
第一話 サヘルであやぶまれる共存関係
第二話 追い込まれる牧民たち
第三話 社会の変容と暴力的過激主義
第四話 風評「やつらはジハーディスト」

かつては家畜という大きな富を持つ放牧民と、手段を持たない農耕民では、明確な社会的地位の差があった。ところが近代化の過程で「開発」が進むと、定住化、農業開発、土地の権利、水利権など新しいトレンドの中、農耕民の社会的地位が向上。開発の主人公はいつしか農耕民となり、放牧民は周辺領域に押しやられていってしまう。


気候の厳しいサヘル地域。食糧危機が常態化しているばかりではなく、昨今の気候変動の影響はさらに大きく、農耕地と牧草地、水資源などの面で、農耕民と牧畜民が対峙するのが日常となった。この構造はマリのお話の時にも詳しくご紹介した。ニジェールでは農耕のハウサ、ザルマと、放牧民であるプールが対峙する。

この構図はアブデラマン・シソコ監督の映画、「TIMBUKTU」に出て来る印象的な「決闘のシーン」、アマドゥとシェダーンの荒野の対決がよく物語っている(上述引用記事)。

(決闘後の夕日のシーン、映画「Timbuktu」より)



そしてマリ中部では、プール系などの放牧民の急進派の一部が暴力的過激主義に傾倒しつつあるとの指摘がある。イスラム系武装勢力「マシーナのカチーバ」(旧FLM)はその代表である。上述記事で触れたマリ中部での農・牧民衝突のきっかけは、農耕民が牧民を「テロリスト」呼ばわりしたことがきっかけであったとされる。伝統的な対立は今日的な解釈に変質しつつある。


先般、マシーナのカチーバと協力関係にあるとされる母体組織、アルサール・ディーンが「一方的停戦を宣言」したと報じられている。さてこれは本当の話か?マリ中部で内製化されつつある暴力的過激主義との関係は?牧民と農耕民の関係は?

話はマリに飛んでしまったが、国境のない農耕民と牧民のお話。また次回へ続く。

(つづく)

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