ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

農耕民と牧民(2)~追いこまれる牧民たち

2016-05-11 07:30:01 | アフリカ情勢
前回、コートジボワール北東部で発生したコミュ二ティー間の衝突について述べた。そして農耕民と牧民の対立が、サヘル地域全体の問題となりつつあることを紹介した。

(前回の記事)
農耕民と牧畜民(1)~サヘルであやぶまれる共存関係

その関係がなぜ今問題となっているのか?あまり一般化することはできないのかもしれないが、これまでンボテがアフリカで関わってきた中で目や耳にし、体感してきた最大公約数をまとめてみたい。


サヘル地域では、長い歴史の中で定住の農耕民と移動放牧民の間の諍いと調停が繰り返され、しかし全体としては調和を目指しながら共存が図られてきた。

西アフリカ内陸部で広範な地域をその生活領域としてきた牧民。地域によって部族や呼び名はかわるが、主にプール系が多くを占め、広域に広がっている。家畜は財産であり、また高い移動性と生活領域から広域に影響力を及ぼしてきた。歴史的には社会階層でも、経済的にも優位な地位にあったという。

しかし19世紀の植民地支配以降、宗主国による開拓、開発が進行する。農業の開発は、土地の農地への固定化を意味し、近代的土地使用の概念につながっていった。また乾燥帯が占めるサヘル地域において、水の消費と水の利用権の調整が図られていくことになる。牧民から見れば、開発は農耕民に利するものであるばかりか、回遊できる放牧の範囲や水利用が制約されていくことになる。


独立後の開発政策は農業開発、灌漑施設の建設、主に定住農耕民をターゲットとしたコミュニティ開発など、その傾向に拍車がかかる。歴史的に優勢を保ってきた移動牧民層は、いつしか開発の外に置かれることとなり、社会的、経済的にも農耕民と地位が逆転していく。そして政府は、伝統的な放牧を「遅れた」営牧スタイルであると定義し、畜産業の近代化、牧民の定住化などを志向するトレンドになりつつあるように見受けられる。

その経緯と政策がよく見られたのが前回記事のアラサン・ワタラ大統領の演説、赤字部分なのである。


そういえば昨年ンボテがトークイベントを担当したイスラーム映画祭。モーリタニア出身のアプデラマン・シソコ監督による'Timbuktu'(邦題「禁じられた歌声」)の一シーンでは、主人公、トゥアレグの牧民キダーンが漁師のアマドゥと、決闘を行うシーンが出てくる。原因は水辺に水を飲みに来た牛が、漁網を激しく破ったことから、アマドゥがこの牛を槍で殺してしまう。これに対する復讐だった。

脈々と歴史が流れるニジェール川のほとりで起きた一つの事件。今日述べたような背景が思い出されるシーンであった。

(決闘は終わった。水に沈んだアマドゥを背に、岸辺に引き返していくキダーン。映画'Timbukutu'より。)


(つづく)

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