ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

アフリカと中国(9)~まとめブログ

2013-07-22 07:30:17 | アフリカ情勢
このシリーズも9回目を迎えた。さすがにこれだけ夕食にトウショウメンがつづくことに健康面での危惧が芽生える笑。ということで、そろそろまとめに入ってみようと思う。


わたしは政治学者でも、研究者でもジャーナリストでもない。中西部アフリカを仕事のフィールドとする実務屋だ。そこに深い洞察もアカデミズムもない。だが9回に及ぶエッセイは、実務者、生活者の視点から眺めたアフリカと中国の一面は素人なりに捉えていると思う。

話があちらこちらに飛びつつ、今日まで続いてきたこのコラム。総括するとどういうことになるのか、まとめてみた。


まず、中国のプレゼンスがアフリカにおいてきわめて大きく、重大なマグニチュードをもったものである、という点。ここに疑いの余地はない。

付け加えておきたいのは、中国は歴史上古くから、そして重層的にアフリカに浸透してきたということ。昨日、今日、金を目当てに入ってきたのではない。冷戦の世界構造、超大国と対峙した第三世界の連帯、そして新しいパートナーシップ。相互の関係は長く、そして深いものであるということ。

(就任後、周金平主席の横顔を報じるJeune Afrique No.2714号、2013年1月)


次に、中国とアフリカ、中国人とアフリカ人の間には、信頼と不審、好意と反感、ポジティブインパクトとネガティブインパクト、相反する評価と感情が同時に入り交じっているということ。故に中国の存在やイメージが、きわめて多面的で、一様でなく、見方によって異なるということ。中国待望論、中国ひとり勝組論、中国脅威論、嫌中論、様々な評価があって、それらはそれぞれ正しい面があり、どれかで断定するのは間違っている。

また、アフリカの国の中でも、中国とのつきあい方が多様であるということ。わたしは、旧共産主義国で、イデオロギー、運命を中国と共有してきた国では、特別の関係がすでに構築されてきたと再三述べてきた。他方、中国との付き合いが急激に深まりつつある対中「新興国」では、「チャイナ・インパクト」の化学反応がまだ進行中だ。どのような性質の物質が生成されるかは、もう少し見ていかなければわからない。さらに、現在でもアフリカの中には中国と国交をもたない国も4カ国ほど残存している(ブルキナファソ、ガンビア、サントメ・プリンシペ、スワジランド)。

さらに、その関係も変化しつつあるということ。第五話第六話第七話でコンゴ・中国間の投資・借款計画、いわゆる「コントラ・シノワ」についてお話しした。はじめは中国、コンゴとも相思相愛となり、深い関係を短期間で構築した。しかしそのうち、コンゴは中国が本当に信頼に足るパートナーであるのか、疑念を抱くに至る。他方、中国もコンゴが一筋縄では行かない国であることを理解し始める。2013年5月に、このコントラ・シノワが事実上ブロックされる事態となった。先に述べた、IMF・世銀始め国際社会からの圧力で圧縮された契約。資源の見返りだったはずのインフラ開発に関し、政府保証が持たなくなったことが原因のようだ。ここからが、本当の意味での関係構築になるだろう。

一件、同じような道筋を、半歩早く歩んできたのがアンゴラだといわれる。アンゴラで起きたことは、数年後、コンゴで再現される、との評論も耳にすることがあった。しかしアンゴラは歴史上、中国との付き合いを知ってきた国であり、わたしにはコンゴとは状況が異なるように思える。


最後に。日本のマスメディアでは、なぜかいつも中国との対比においてアフリカが語られている。アフリカは中国にやられた、アフリカで中国に圧倒される日本、というような報道を再三目にしてきた。なぜそのような矮小化された世界観で報じられてしまうのだろうか?なぜ日本と中国の二次元世界に議論をもっていきたがるのか?わたしには全く理解できない。

確かに、ビジネスベースでは食い合いの世界という面もあるだろう。街には中国製品があふれる。中国企業が商圏を広げれば、その分、残りのパイは少なくなる。

伝統的西側ドナー、フランスの公的援助でも、中国企業が受注するようなケースが増えており、このことには一様に警戒感が示される。また最近では中国のゼネコン、商社などの企業が日本を含む外国の政府関係機関を訪問し、何か仕事はないかとご用聞きに来ることもしばしばである。

しかしそれはどちらかというと市場の競争での話であり、また日中二国間の取り合いではない。もっとマルチな話だ。

政府や国との付き合いにおいてはどうか。アフリカにとって中国と日本は二律背反の選択ではない。確かにアメリカと中国、伝統的西側先進国と中国、どちらに軸足をおくべきかについては、ある程度、アフリカ諸国に態度表明が迫られているといっても過言ではないかもしれない。そして中西部アフリカでは、いくら影響力の凋落があるとはいえ、フランスがそれらを超える、絶対的なものとして存在している事実がある。

しかし日本はどうか。アフリカにとっては、中国とも日本とも仲良くしたい、というのが本音である。東洋の二つのエキゾチックな国。似て非なる国。それぞれの強さと弱点をもった国。アフリカは、中国も、日本も、なのだ。そしてアフリカの開発にとって選択肢が増えるということは、いいことなのだ。

(ベストセラー‘La Chineafrique'。中国が利するままのアフリカ、というニュアンス。もともとはフランスの利益のために進めてきた対アフリカ政策を揶揄する'Francafrique'が原語。絶妙なタイトルだ。)



追伸:
あしたからは落ち着いて、麺がのびないうちに、おいしくトウショウメンをたべられるぞ!と思ったものの、当面、トウショウメンは健康上、しばらくお休みである。

(「アフリカと中国」、いったんおわり)


刀削麺シリーズ「アフリカと中国」
第一話 こと始め
第二話 冷戦が作った関係
第三話 中国の戦略
第四話 資源国との付き合い
第五話 コンゴのコントラ・シノワ(前編)
第六話 コンゴのコントラ・シノワ(中編)
第七話 コンゴのコントラ・シノワ(後編)
第八話 日常に見る中国


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2 コメント

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Unknown (アチェケ娘)
2013-07-23 08:53:36
どこの記事だか忘れてしまいましたが、TICADⅤの開催直後に、「アフリカは、日本側(に付く)か中国側か?」というような、タイトルの記事(仏語)を見つけました。二国の援助方法について比較がされていたのですが、読んだ後にすっきりしない違和感が残りました。その時には気付きませんでしたが、今思うと「何故、日本と中国が比較されるんだろう」という疑問が深層心理に働きかけていたのかもしれません。もう一度、気持ちを新たにこの記事を読みたくなりました。確か(JA)??

さて、本日JAの発売日(*^_^*)!バナバナを探している暇はなかったので(笑)、本屋さんで購入しました。1875Fcfaなりー!
あれ? 手間賃を上乗せされちゃいましたかね??
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Re:Unknown (ンボテ)
2013-07-23 12:59:39
そうなんです、日本と中国、選択を迫っているわけではないですからね。アフリカの国はどっちも選択肢にすればいいんです。

あ、今日買ったんだね!やるな、アチェケ娘!では今週の遅読みJAは、ンボテにかわりアチェケ娘がお送りします!笑
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