甘酸っぱい日々

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しずる単独ライブ「風の色を見た」 (20/2/14)

2020-02-14 23:30:00 | 単独ライブ
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しずる単独ライブ「風の色を見た」
20/2/14 19:30~ @ルミネtheよしもと

OPコント
OPVTR
レコーディング
凶悪犯
ダンスレッスン
銀行強盗
ご注文
特別捜査本部
バッタリ
絵描き
EDロール
ED

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しずる単独「風の色を見た」に行ってきました。
毎年恒例となった、村上純さん完全作・演出の冬単独。
へりくつやら、偏見やら、性格の悪さやら、メタに振り切れたネタやら(笑)強烈な個性が溢れている。
そんなコントばかり作っているのに、彼の中心を貫いているのはやっぱり人間愛。
こんなにカッコ悪くて泥臭く生きている人達でも、なんだか可愛くて、愛しくて。
そうやって、巷に生きる人々の、小さいけれど大きな物語を、一つ一つ拾い上げて美しく瑞々しく描き出す。
それがまさに、村上純の作品だという何よりの証左なのだと、改めて感じることとなりました。

本当にいいコントばかりだったのですが、やっぱり最後の「絵描き」は、村上さんが大好きなトレンディドラマ感にあふれていて、
だけど扱う題材はくだらなくて本当に素晴らしかったです。
今回の単独では、村上さんの女装しているコントがこの1本しかなくて、そうして絞っていたのも効果的だったように感じられました。
エンディングトークで、池田さんに「どれだけ宮沢りえさんのマネするの?」と言われていた村上さんだったのですが(笑)、
トレンディドラマ感がすごい女性役、大好きです(笑)
これぞ冬単独!と言いたくなるような作品。

また、今回の単独は何だか、過去のコントのセルフオマージュのような側面があるように思えて。
例えば、「レコーディング」で、ピュアな池田さんが村上さんに言いくるめられていく様子は「枠」を彷彿とさせられたし、
「特別捜査本部」は3年前の村上単独の、リッツとルヴァンの系譜を継いでいますよね(笑)
何より「特別捜査本部」は、「ばかばかしいことを真剣に語り合う」「2人とも変な人でツッコミが入らない」という、
それこそ、レッドカーペットで青春コントやってた頃から彼らがやってきたこと。
それが、何年経っても単独ライブで引き継がれてきているというのが、本当にエモーショナルに感じられました。
……セルフオマージュというのは私が勝手に考えていることなので、ご本人の意図がどうだったかはわからないのですが……(笑)
ただ、もし意図していなくても、受け手の私がそう感じさせられるほど、村上さんのコントの核は強固なのだなあということにも萌えるので、
どちらにしても嬉しいです(笑)

そして、しずるというコンビの面白さについて。
OPコントで優しいお兄ちゃん、1本目でピュアな青年の役をやった池田さん。
ところが、2本目の「凶悪犯」では、一転してサイコパスな犯罪者役。
丁寧な語り口なのに狂っているところが素晴らしく、池田さんにこういう役をやらせたら右に出る者はいないですね。
最初の2本のキャラと一気に変わるという落差もあって、本当に見ごたえがありました。
このコントに限らず、今回の単独は本当に池田さんのキャラが、今までより一層際立って光っているように感じられて。
9つあるコントの登場人物、どれ一つとして似通ったものはなくて、それぞれ人物像がかけ離れている。
本当に別の人物がそこに存在しているように思える。
それを全て違和感なく演じ切る、池田さんの実力のすごさを思い知らされます。
そして、そういう池田さんのポテンシャルを当たり前のように引き出している村上さんも、
相方にどういうことをやらせたら輝くのかということを熟知しているのでしょうね。
毎年毎年、冬単独を見るたびに思うのですが、こうやって全く別のタイプなのに、
お互いがお互いのことを本当によく理解していて、唯一無二のパートナーだというところが、しずるのすごいところだなと思います。

最後に、村上純のこだわりから、「ライブ」というものの意義を感じたという話をさせていただきます。
今回の冬単独後も、村上さんが単独で使っていた曲のセットリストをアップしてくれました。こちら
村上単独の楽しみの一つは、この村上さんの選曲でもありますよね。
今回は、今までよりも一層、コントの内容と幕間の曲の内容をリンクさせてきたように思います。
刑事がテーマの「特別捜査本部」のコントでかかっていたのは、Love Somebody。
前のコントと繋がるコントの前に流れたのは、「繰り繰り返す 繰り繰り返す」という歌詞が印象的な、フレデリックのリリリピート。
雷をテーマにしたコントでは、「天気の子」の主題歌、「愛にできることはまだあるかい」。
これが、曲の前にかかるというのがまたいいんですよね。
それが流れている時には、次のコントがどんな内容かわからないので、思い返してみてそのこだわりに気が付くというのが。
その中でも、特に印象的だったのは2本目のコントの上げ囃子。
King Gnuの「白日」が流れ出し、
『時には誰かを 知らず知らずのうちに
 傷つけてしまったり
 失ったりして初めて
 犯した罪を知る』
まで聞いたところで、モニターに青バックに白文字で、コントのタイトルが浮かび上がるんです。
『凶悪犯』
この流れを体感した時、あまりにも感動して心が震えました。
コントタイトルはもちろん、それに合わせてどの曲を選ぶか、どういう魅せ方をするかまで、
本当に細部までこだわってるんだなって、この一瞬で感じられた。
こういう、心震える瞬間に立ち会うために、私はライブに通ってるんだなと改めて。
近年は、芸人さんがYouTubeチャンネルを開設し、ネタをアップすることが当たり前になってきて、
私はこの流れがとても嬉しく、いつでも見られるのはありがたくて。
でもじゃあ、なぜライブに行くのかって言ったら、こういう、
単発のネタ動画を見るだけでは味わえない体感をしに行きたいからなのだなと思います。

このブログがアップされている日時は単独当日になっていますが、日付を操作していますので、
これを実際にアップしている現在は、3月中旬。
新型コロナウイルスの感染拡大防止の政府方針により、ライブイベントの自粛要請があり、
お笑いライブも軒並み中止になってしまっている頃です。
そのため、私にとっては、このしずる単独が、自粛要請前の最後のライブとなってしまいました。
一体いつこの流れが終わるのかわからなくて、本当に不安で心もとない日々を過ごしていますが、
それは客の立場である私よりも、実際にエンタメをお仕事としている、芸人さんやスタッフさん達の方がさらに深刻な問題ですよね。
最近は、生配信や、過去の映像解放などをしてくださっていて、本当にありがたいことなのですが、
でもやっぱり、ライブ体験というのは、替えの利かないものだと思うのです。
自粛前最後に行ったライブで、そういう体験をしたからこそ、その思いを消えずに大切に持ち続けて行きたいと思います。
村上単独、今年も最高でした。



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