甘酸っぱい日々

面白くても何ともならない世界で 何とかしようとする人達のために

SIX GUNS(メトロンズ第0回公演) 「KASAMATSU」

2019-08-25 23:30:00 | ライブ感想♪
***
SIX GUNS「KASAMATSU」
8/24 17:00~
8/25 12:00~、17:00~
@渋谷ユーロライブ

作・演出 中村元樹
出演
しずる(村上純、池田一真)
ライス(田所仁、関町知弘)
サルゴリラ(赤羽健壱、児玉智洋)
***

SIX GUNSの「KASAMATSU」、2日間3公演最高に楽しませていただきました。
渋谷駅からの坂を上って、ユーロライブに行って、
公演を見て思い切り笑って、坂を下って渋谷駅に戻って、
お友達とご飯を食べに行って語り合って、
それを繰り返した3公演。
あまりにも幸せすぎて、思い出すだけで泣いてしまいそう。
まさに「夢」のようにあっという間でした。

約80分のお芝居一本勝負。
この6人は、長年一緒にやってきた経験値が違うから、やっぱり抜群に息がぴったりだ。
もちろん神保町で見ていた時からそう思っていたけれども、今回はそれをさらに感じました。
その人間が自然に存在しているかのようにナチュラルに演じるなんて、彼らにとっては当たり前。
それ以上に、テンションの上げ方、スピードのかけ方、プレッシャーの緩め方。
そういう、感情の波まで事細かに合わせているところに、徹底したこだわりと、演技に対しての妥協を許さないプライドを感じます。

そしてなんと、この公演はYouTubeで無料で全編公開してくれているというすごさ。本当に嬉しいです。
3公演、この大好きな6人の公演を目に焼き付けようと思って必死に記憶に刻み付けていたのですが、
それでも何度も楽しめることは本当に嬉しい。ありがとうございます。
ということで、見て頂くのが一番ですが、一応私の視点でまとめたあらすじもアップしてみます。

メトロンズ 第0回公演「KASAMATSU」


・・・
物語は、あるペンションで殺人事件が起きてしまったことから始まる。
大雪で電話線は断線し、救助が来てくれるのは3日後。
暇を持て余し、重苦しい雰囲気でUNOをしているオーナー(児玉)、
高校時代の同級生だった3人組の麻木(田所)・山村(村上)・大河内(赤羽)、そして探偵の花田(関町)。
気まずい空気に耐え切れず、オーナーは言った。
「花田さん、ちょっと、早すぎたかもしれませんね…。犯人、言い当てるの。」
そこには、殺人犯の桃川(池田)が、手をロープで縛られた状態で座っていたのだった………。
ペンションの中では様々な問題が起き、対立を繰り返す。
しかし、桃川は段々とひとりひとりの心の緊張をほどき、自分の味方にしていく。
探偵の花田は、周りの4人が段々と桃川に言いくるめられていく様子を見て、
彼にサイコパステストを行い、本物のサイコパスだということを証明してみせた。
桃川が殺した、隣の部屋の女性は、オーナーと一緒にこのペンションを経営していたのだが、
実はオーナーからお金を騙し取っていた詐欺師だった。
オーナーは、ペンションの経営も悪化し、殺人事件が起きてしまったこの宿には、さらにお客さんも来なくなるだろう、
仕方がないからもう自分を殺してくれ、と桃川に頼む。
しかし、桃川はそれを断り、3人と一緒にペンションを立て直す案を考え始める。
最初は非協力的だった花田だが、話し合いの内容に耐えかねて、自ら案を出した。
こうして6人は、みんなで和気あいあいとペンションの立て直し案について話し合いを始めるのだった……。

暗転して場面が変わると、そこはプロレスの試合会場。
レフェリー(池田)と、覆面レスラー(関町)、
そしてその覆面レスラーに技をかけられているレスラー、カサマツ(児玉)。
カサマツは意識が朦朧としている中、レフェリーに話しかける。
「桃川さんはどうですか?」
レフェリーは、カサマツを叩き起こして言う。
「桃川?誰だよそれ!」
え?ペンションの立て直しはどうなった?混乱するカサマツ。
そしてやっと認識する。自分は今試合中で、技をかけられて意識が遠のいていた。ペンションでの出来事は全て夢だったのだ……
「夢、長っ!!」
・・・

雑なのですが、とりあえず全体の流れをまとめてみました。
これだけ書くとすごくシンプルな話に思えてしまいますが、本当のカオス、そして物語の山場はこの後からなんですよね(笑)
初日に見終わった後に思ったのは、「どんな人でも楽しめる」ということでした。
とにかく笑えればなんでもいいという方も、ガッツリしたお芝居を見たい方も、
斬新なものを期待している方も、起承転結のストーリーをしっかり見たい方も、
そして、ナンセンスな笑いを求めている方も。どんな方でも楽しめると思う。
私がこの人達に求めているのは、まさにそういうことなんですよね。
「お笑い」を見に行っているというのはもちろんだけど、
やっぱりこの6人のことを、神保町花月本公演とかでずっと見てきたから、シリアスなシーンの演技にも全幅の信頼を置いていて。
だから、欲張りだけど、そういう緊張感あるシーンも見たいなって思ってたんですよね。
なのでKASAMATSUは、その通りのことをやってくれたのがすごく嬉しかった。
私が喜ぶことと、みんながやりたいって思ってくれることが、無理なく一致してるっていうのが嬉しかったです。
笑いのパートは涙が出るほど笑いまくりました、本当に面白い。
それなのに、シリアスなシーンに急ハンドルを切っても、
全員が一気にその空気に切り替えられるのこそ、この人達の魅力。
本当に最高だった。

ここからは、私の解釈を書いてみたいと思います。
これが、作者の意図なのかというと、多分違うのですが(笑)、
とりあえず、自分の感じたことをメモしてみたいと思います。
プロレスラーのカサマツは、試合が終わった後、トレーナー(田所さん)に「お前、落ちてるときに笑ってたぞ。夢でも見てたのか?」と聞かれる。
カサマツはちょっと間を置いた後、「全然覚えてない」と笑う。
……でも彼は、本当に夢を覚えていないのかな?
私は、カサマツが最初に夢から復帰した時に、レフェリーに「桃川さん」と呼び掛けていたことから、覚えているんじゃないかと思っている。
そして、他にも、覚えているんじゃないかなと感じられる理由があって。
カサマツは、プロレスの試合中に意識が飛びかけている。
もしかしたら、プロレスラーとして再起不能なケガをしてしまうかもしれない。あるいは、本当に死んでしまうかもしれない。
彼はそんな、死の淵で夢を見る。
夢に出てくるオーナーは「ケガをして前の仕事を辞め、もう一つの夢だったペンションのオーナーを始めた」と言った。
そのことから、カサマツが見ているのは、自分のやりたいことであり、
そして自分がもしかしたらこれから進むかもしれない、あるいは進んでいたかもしれない未来だと考えられる。
そう考えると、カサマツが落ちそうになるたびに見ている夢は全て、カサマツがやってみたい仕事、なりたい自分なのではないだろうか。
ペンションのオーナー、競技かるた……官能小説家?(笑)
死の淵でいろいろな夢を見て、いろいろな自分の可能性を想像して。
もしプロレスラーを辞めたら、どうする……?
何度も落ちそうになりながらも、最後には試合に勝つことができたカサマツ。
トレーナーに言われて、一瞬夢のことを思い出す。
もしこの試合で大きなダメージを受けていたら、再起不能なケガをしていたら、引退して他の夢を追いかけていたかもしれない。
でも、カサマツはその夢を振り切るようにして笑って、「全然覚えてねえや」と言ったんじゃないかな。
そして、その瞬間に他の自分になる可能性を捨て、プロレスラーとして生きていく覚悟を決めたのかな、なんて。私はそんな風に感じました。
……と、長々書いてしまったのですが、多分作者の意図とは違うと思います(笑)。
今回に限らず、物語というのは、それを受け取る側のコンディションにも左右されることが多々あると思っていて。
簡単に言うと、私自身が今、転職や人生に悩んでいるので、そんなメッセージを感じ取ってしまったのかな。
でも、どんな風に楽しんでもいいという、器の大きさごと、この作品の良さにも感じます。
とはいえ、裏話トークライブみたいなのがあって、あの部分はどういう意味だったのかとかを教えてくれるような機会があれば、ぜひ行きたいなと思ってしまうのですけどね(笑)。

そういえば、カサマツが何度もダウンしそうになる中、レスラーのボラドール(?)にリングに連れ込まれ、ダウンしてしまう実況の村瀬アナウンサー(赤羽さん)。
初日は村瀬アナの夢の転換は、カサマツの夢と同じように青い照明だったと思うのですが、2日目昼からは赤い照明で転換していました。
目が見えないお母さんに、様々な風景を描写していた幼少期の村瀬くんは、もっとうまく表現できるようになりたくてアナウンサーを目指したのかな。
カサマツの夢は「これから起こりうるかもしれない未来」だけど、村瀬アナは「過去からつながる現在」を表していた。
そんな、カサマツと村瀬アナの夢の違いが、照明によってわかりやすくなったのかなと思います。
他にも、初日が終わって、バッサリとカットされたシーンもあり、本番が始まってもさらに改善していいものを見せようという、その心意気が嬉しかったです。


今回の物語を貫くテーマは、やはり、交代で一人ずつ桃川を見張っていた時にオーナーが語っていたことだと思います。
このペンションの名前の由来となった小説の一部。
「わたしがこれから語ろうとするさまざまな真実の事柄は、みんな真っ赤な嘘である」。
ペンションのシーンは、現実のシーンだと思って見ているけれど、実際には全てプロレスラー・カサマツの夢の中。
「今みなさんが御覧のシーンは全て真っ赤な嘘ですよ」ということを、すでに観客に暗示していたということなのかな。
そしてその次に続くオーナーの、「この小説は全ての嘘を優しく肯定してくれる。自分のペンションもそんな存在になれたらいい」というような言葉も好きでした。
カサマツの荒唐無稽な夢も、全てがこの物語の中では肯定されていたね。

そしてこの「嘘を優しく肯定してくれる」という言葉は、今回のこのKASAMATSUという舞台全体にも言えることのように感じています。
今回の公演を見たお客さん達は「何だよ、夢オチだったのかよ!」と怒るのではなく、
それぞれに好きなシーンや、込められた意味を自分なりに考察・解釈して楽しんでいる。
全ての嘘を何よりも優しく肯定しているのは、何よりも私たち自身なのかもしれませんね。
ただその一方で、「なんだよこの作品、夢オチって何だよ、どこからどこまでがホントなのかウソなのかわかんないじゃないか」と思う方も、もちろんいらっしゃると思う。
私は初日公演のエンディングトークが忘れられなくて。
アンケートをぜひ書いてくださいという流れで、田所さんが
「どんなことでも書いていいです。意味わからなかったら、わからないって書いてもいい」という感じのことをおっしゃっていて。
私は、それにすごく感動した。
自分達が面白いと思ったものを自信をもって提示しつつ、観客の感性も否定しない田所さん。
そのバランス感覚に、改めてこの人についていきたいなと思わされたのでした。

初日の公演後に、これからこのメンバーで、「メトロンズ」という劇団のような形で活動していくという
神保町花月で毎月公演されていたSIX GUNS。
私はそんなに行けたわけではないけれど、毎回本当に楽しかった。
3組のそれぞれのコントと、毎回5~10分ほどのユニットネタが見られて、すごく充実していました。
その形式で続けて行ってほしいなという思いもあったのですが、彼らが新しく大きな挑戦を始めたこと、
そして私にとってそれがとても好みの内容であったことから、これからもずっと見続けて行きたいなと思いました。
最高の夏の思い出、一夜の真夏の夜の夢のような3公演をありがとう。


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