甘酸っぱい日々

面白くても何ともならない世界で 何とかしようとする人達のために

「うるう年!!」  3月8日  神保町花月『殺し屋一家の誕生日会』

2009-03-11 23:41:51 | 神保町花月
このお芝居に最初から最後まで共通するキーワードは、もうこれしかないと思います。
「カッコイイ!!」

本当に、何から何までカッコイイお芝居でした。
まずオープニングがもうステキ!!
全員でダンスなのですが、その中で一人ひとり自分の武器を持って立ち回る、メインとなる場面がありまして。
もう全員かっこよかったのですが、特に
銃をバンバン撃っていき、最後に自分を撃って倒れる太郎(川口さん)
機関銃をぶっぱなす爺さま(池谷さん)
ムチを振り回すたま子(工藤さん)
刀でバシバシ斬っていくひかる(野田くん)
この4人が本当にかっこよかった!!
オープニングだけでも来た価値がありました。
やっぱり2回見ればよかった……
やっぱり犬さんがコント広場で「手売り持ってます。売れてないんで」って言った時に、2回行くって決めればよかった……
本当に惜しいことしました……。
このダンスだけでもどこかで配信してください!(いっつもこんなこと言っております)


最初に、全体的なストーリーについての感想を書こうかな。

私、オコチャ作品を見るのは初めてだったのですが、正直に言ってこんなにすごいものを見られるとは思っていませんでした。
笑いどころもたくさんあるし、演者のよさを引き出しているし、アドリブの余地も設けているし。
そして何より、根底にある思想とかメッセージみたいなものが驚きでした。
ピク兄演じる、お祭り男・和義が言っていた、
「今世で悪い事をしたって実感できれば、来世は同じ間違いをしないだろ?」とか、
「来世、幸せにします!!」とか。
たま子が言っていた、「終わりしか知らなかったのに始まりを知ってしまった」とか。
こんなことを考えているのか!!と本当に驚き。
そしてそれが抵抗なく入ってくるのは、クサすぎないセリフと、演じ手の力量が、がっちり噛み合っているからなんだなって思いました。すごいや。

「生かし屋」の設定にしてもそう。
ごんぞうが生かし屋と何か関わりがあるんだろうな、とか、生かし屋は殺し屋を殺す人なのかな、とかなんとなく考えていましたが、そんな私の想像の遙かに上をいく考えにやられました。
生かし屋って名前だけ聞くとかっこいいし、殺し屋と対立する正義の味方なのかなと思うのに、まさか殺し屋より残酷なんて。
「生かし屋って聞いたことある?」というセリフを、散々太郎や爺さまに言わせておいて、こちらの想像力をかき立てたところで裏切るんだもん。
期待以上です。

そして、ここからはストーリーと演者さんの感想ごちゃまぜになってしまうのですが。
私はやっぱり押見さんに弱いようです。
押見さんのセリフ一言ひとことが、ぐっと刺さる感じがしました。
最後にごんぞうに「お前のこと一生恨みながら、上手いピザ作り続けてやるよ」。
「復讐からはなにも生まれない」
まさかこんな強いメッセージ性があるとは思っていなくて。
だいぶかみ砕いてしまって、私はオコチャさんの伝えたかったことを理解できているのか疑問ではありますが……。
もちろんこの場面のセリフとっても好きだったのですが、実はこれよりもぐっときたところがありました。
殺し屋一家が、とりあえず今後のことが決まって一件落着……というところに、単身乗り込んでいく青木。
そして、「先輩の人生は平凡なんかじゃなかったんだ!!」という感じで叫ぶシーン。
これがもうダメ……一番泣きそうになったところでした。
いちいち引き合いに出したりするのもどうかと思うのですが、籠の城の時のウミネコとかぶって仕方なかったんです。
平凡な人間が一人死んだところで、とバカにしている一家に怒りをぶつける青木が、
ヤツガシラは規則を守らなかったんだからしょうがないよ、と言うヤマシギとモズに「ヤツガシラが何の罪を犯した!」と詰め寄っているウミネコに見えて仕方なかったんです。
「先輩の人生は平凡なんかじゃなかったんだ」=鳥の声を聞いた後の、「ヤツガシラはこの声を好きだって言ったんだ」
みたいな。
(私本当に最近記憶力が衰えてきて、セリフの一字一句全然合っていないと思います。申し訳ないです)
で、ここでオープニングの話に戻るのですが。
オープニング、そして劇中でも、武器を持って迫ってくる一家に、ピザの切れ端で立ち向かっていった青木。
全て見終わった後に感じたことなんですけど、「ペンは剣よりも強し」という言葉を思い出しました。
話の通じない一家に対して、自分の思いをぶつけて立ち向かっていく。
銃に対して、全く勝ち目のないピザの切れ端だけど、実は本当に強いのはピザの方だったんじゃないかって。
そんなところの象徴だったんじゃないかって考えてみました。
本当にオコチャさんがこう思っていたのかはわかりませんが、ここまで私に考えさせてくれる、色々含みを持たせて、終わった後までわくわくさせてくれる、そんなこの本が好きです。


それじゃ、演者さんについての感想を少しずつ。
まず川口さん!
私はスーツ×銃って、それだけでカッコイイ☆となるのですが、さらにそれに加えて長男ってところがもう……(うるさい)
トークでオコチャさんが、「川口は長ゼリフとかあった方が燃えると思うから」と、長ゼリフを書いた理由を説明していましたが(笑)、本当に長ゼリフよかったです!!
ワンサイドラブの時から、川口さんの落ち着いた感じの演技が好きだったのですが、今回はそれがさらに生かされていた感じがしました。

中須さん!
ふざけるところも狂ったところも本当にステキ!!
「復讐……」に対しての、たった一言「うるっせぇ!!」
すごい迫力でした。
毎回ドキっとして、これは一体どういう意味なんだろうと、最後まで気になりました。

池谷さん!
今までの神保町で、私は完全に怒りの演技をしている池谷さんを見たことが、あまりなかったかも。
怒りながらもちょっと迷っていたり、切なかったり。
なので、毒を入れられたとわかった後に家族を問いつめる爺さまの演技が、もう好きすぎました!!
「あぁ!?」にキュン☆(笑)
全体を通して、喜怒哀楽が激しい役だったですよね。
中でも特に、一家の人生を最初から狂わせてしまったことに後悔するところは胸が痛くなりました。
そして最後、ごんぞうに心を壊されてしまった時、中須さんの「上手に仕上がってる」という笑顔の残酷さも相成って、鳥肌ものでした。

で、今回のMVPは野田くんじゃないでしょうか!!
和服の野田くん本当にカッコイイ!!
トークでも言われていましたが、もともと、かなり役柄的にかっこいいんですよね。
ただ、この役柄を演じきったのは、野田くんのあの淡々としたしゃべり方と、魅力のある声ならではだな~と。
感情がどんなものかよくわからなくて、感情を知りたいと思うがために家族を殺そうとまでして。
結局感情がどんなものなのか、はっきりわかったわけではないけれど、最後は家族みんなの思いを優先させるために、自分が殺し屋という悪い部分を一手に背負う。
とってもかっこよくて、でも同時にとっても切なかった。
本当にハマり役だったんじゃないでしょうか!

この後も一人ひとりについて語っていきたいのですが、本当にキリがなくなりそうなので……
ただ、このお話がすごいと思ったのは、全員に見せ場があったというところだと思うんです。
全員が話の中核にいて、全員がいなければいけない存在だったこと。
そして、その自分に与えられた役割を演じきっていたこと。
だから素晴らしいと思いました。


あとは気になったところを少しずつ!!

・中須さんと池谷さんが二人でつんつんやってる所が楽しすぎた!(笑)

・とっしーさんが本当によかった!!

・足速いアピール最高!!
 川口さんの「そらそうなるわな」っていうツッコミ込みで大笑いしました(笑)

・押見さんの短パン……見慣れないからなのかなんなのか、似合わないなぁ~!(笑)

・中盤のダンス笑ったぁ~!!
 中須さんが最高です(笑)

・今回のタイトルは、中須さん演じるごんぞうのセリフから拝借しました。
 ごんぞうが、聞こえてくる「復讐……」という謎の声に対して、「うるっせぇ!!」と叫ぶところ。
 (この声は、後に死んでしまったごんぞうの親の声だとわかるのですが)
 叫んだ後、太郎にどうした?と聞かれたとき。
 「うるう年!!って言ったんです」
 「2月29日っていう文字が見えたんです」
 もう苦しくなるくらい笑いました!!(笑)


それでは、カーテンコールのトークを少し。
脚本のオコチャさんも来てくれました☆

・野田「2050個ボケれてよかったです」
 オコチャ「本当に2050個ボケてたんだとしたら大抵滑ってた」

・工藤さんと伊藤さんに対して、
 中須「笑いとりすぎ」

・かわいくなっちゃう伊藤さん

・今までのオコチャ作品に全て出ているピク兄。
 ピク「三谷幸喜作品における西村雅彦みたいな感じで」
 ちょっと照れるオコチャさん(笑)

・途中で足が腱鞘炎になったらしい村上さん(笑)
 押見「どに腱鞘炎になる要素があるの?」
 村上「ダンスで……」
 押見「みんなやってるよ!」

・池谷「市村正親ばりの」
 わかる~!!(笑)
 押見「池谷さん、役作りでヒゲ伸ばしてたんですよね。
     でもヒゲが薄いから全然わからない…(笑)」

・客だしの時に全然話しかけてもらえない中須さん(笑)
 6日がお誕生日で、その日だけだったと。
 しかも川口さん曰く、その日に話しかけたお客さんも「中須さん!!おめでとうございます☆」という感じではなく、
 「中須さんおめでとうございますー(棒読み)


こんな感じのトークでした。


お話としては現実的にはありえないようなお話なのに、登場人物一人ひとりの、気持ちの揺れ動きや苦しさが伝わってきて、
絶望的な終わりなのに、何故か見終わった後そんなに重苦しい気持ちにはならなくて、
お話もかっこよくて、ダンスもかっこよくて、
とっても、とっても!満足した舞台でした。

グラッチェ、グラッチェ、グラッチェ!!
素敵な時間をありがとうございまッチェ!!

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みよん)
2009-03-12 22:13:48
はじめまして…
いつも、ブログ拝見させていただいてましたが…すみません。

私も「殺し屋一家…」3/8に観ました。
ブログ読んで「私とおんなじこと思っている人いた!!」と思ったらいてもたってもいられず…(笑)
私も2回行けばよかったと…。とても大満足した舞台でした。DVD化にはならないそうで…ちょっと残念です(涙)
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みよんさんへ☆ (夏実)
2009-03-14 23:51:34
はじめまして!
コメントありがとうございます☆

私も、同じことを思っていらっしゃる方がいて嬉しいです!
殺し屋一家、本当に満足の舞台でしたよね~。
千秋楽だと、どうしてもその後に見ることは出来ないので残念ですよね……
最近なかなかDVD化がされていないので、ぜひしてほしいのですが…神保町にメール送ってみます(笑)

いつもご覧になって下さっているようで、ありがとうございます!
ただ一人言をつぶやいているようなブログなので、だらだらしていて申し訳ないのですが…
また気になるところがありましたら、ぜひお気軽にコメント頂けると嬉しいです♪
ありがとうございました!
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