ネイティブディメンションズでは意匠設計、構造設計、温熱設計を私が行っています。
専門分野ごとに分かれて、分業とするのが一般的だと思います。会社も普通そうですし。
分業する理由は作業の効率化の為ですが、住宅設計において意匠、構造、温熱が分業される事は一概にそれが正しいと言いきれません。
昨日の記事の通り、日本の在来軸組工法は構造の柱や梁がそのまま意匠としても見せる事ができますし、むしろ見せた方が意匠を最大に活かせます。
つまり、構造を意匠に活かすためには、意匠と同時に進めると効率がよくなり、かつ、構造を意匠として一番美しく表現できます。
寺社仏閣が非常に美しいのは、棟梁が設計していたからで、それを思えば当たり前の事ですね。現代では、設計は建築士が行わなければいけませんので、建築士が意匠と構造を理解する必要があります。(建築士とは、設計士だけではありません。大工さんが建築士の資格を持っている場合もあります。どの立場でも、建築士は意匠と構造を理解するという意味です)
さて、最近の在来軸組み工法は、柱と柱の間に筋かいでなく構造用合板を張り付けるケースが増えています。
ツーバイフォー工法の影響です。
柱や梁、筋かいなど、線の部材で各方向からの力に対して耐える在来軸組工法に対して、壁面や床面の様な面の部材で各方向からの力に対して耐えるのがツーバイフォー工法の特徴です。
実際に、片筋かい(45×90)と構造用合板の片面張りでは構造用合板の方が壁倍率が大きいですから、ツーバイフォー工法で使われる構造用合板を在来軸組工法でも用いればより地震に強くなるという安直なイメージから在来軸組工法でも使われる様になりました。
しかし、ツーバイフォー工法が耐震性に優れているのは、構造用合板を使っているからではありません。
ツーバイフォー工法の最大の特徴は、間取りを考える際に構造について守らなければいけないルール(耐力壁線区画)があり、それを考えながら作業するからです。
そうです。一番最初に話した事と同じように、ツーバイフォー工法は意匠と構造を同時に考えながら設計する工法なんです。
ですから、在来軸組工法がツーバイフォー工法から学ぶべきことは、構造用合板ではなく、耐力壁線区画であり、かつてツーバイフォー工法の設計を行っていた私は、この考えを取り入れたプランを在来軸組み工法でご提案し、それを構造計算にて確認しています。
話は変わりますが、木造住宅の寿命を語る際に法隆寺がよく引き合いに出されます。
法隆寺が現存しているから木造は丈夫と簡単に解釈されていますが、やはりそれは意匠と構造が同時に考えられていたからじゃないでしょうか。意匠と構造が分業にて設計される事が多い現代の木造住宅とはすこし意味合いが違うと思います。
意匠だけで考えられた間取りに建築基準法を満たすように筋かいを割り振るのと、構造計画を取り入れながら考えられた間取り。
構造計算により同等の耐震性にすることは可能ですが、意匠に組み込まれた構造は、そこに佇む「間」の美しさがあり、その建物をいつまでも残したいと思う気持ちがその建物の寿命に繋がります。
それがかつての棟梁に変わる現代の設計者の技量だと思います。
そして、ミニストックはその構造の美しさが充分に感じ取れる「間」にする事ができました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます