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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

武満徹のビートルズ

2007年07月12日 | CD・DVD・カセット・レコード
 一昨日、友人たちと入ったレストランでは、BGMにビートルズのアルバム「リボルバー」が流れていた。個人的には、ビートルズの最高傑作だと思うアルバムである。月並みではあるが、このアルバムの中で最も好きな曲は、《Here There and Everywhere》。
 数年前、この曲の武満徹のギター編曲があることを知った。さっそくギタリスト、セルシェルのビートルズ名曲集を購入した。若き日の荘村清志のために編曲された《ギターのための12の歌》(1977)の一曲として編曲された《Here There and Everywhere》は、ギターのさまざまな音色とビートルズのやさしい旋律が織りなす最高傑作である。
 武満徹を知ったのはいつの頃だっただろう?高校に入ってからは「今日の音楽」シリーズには行き続けていたし、池袋文芸座が生活の一部だったために、その頃は現代音楽の大作曲家として、また映画音楽の大家として、学生服の私は、客席や舞台の上に立つ武満の横顔を行く度に拝んでいた。まさに武満徹は私にとって雲の上の存在だった。
 武満が現代音楽と映画音楽以外にポピュラー音楽を作っていたことを知ったのは、小室等「武満徹ソングブック」を武満亡き後に購入してからである。恥ずかしながら、「ベ平連」時代のフォークソング、高石友也《死んだ男の残したものは》の作詞が谷川俊太郎と知っていても、作曲が武満であることを知らなかった。
 ピアニスト高橋アキの弾く《Golden Slumbers》、セルシェルのギターが奏でる《Here There and Everywhere》、《Yesterday》、そして《Michelle》。どれをとっても武満にとってビートルズが特別な存在であったことを感じさせる。私は作曲家でもなければ、編曲家でもない。でも小手先だけの技術だけでは、こんな編曲ができるわけはないのだ。彼のビートルズを聴くたびに思う。今は亡き大作曲家武満徹と、ちっぽけな民族音楽学者の私に共通していることがもしあるとすれば、それはビートルズのやさしいメロディーを心から愛していたこと。もちろん比較するのもおこがましいことであるが・・・。