何かが誰かの生涯を決定付けることがあります。ある映画が大ヒットしたために、主役を演じた俳優が、その作品の呪縛から抜け出せなくなる場合があります。
シシィ三部作と呼ばれる3つの映画で、主役カップル、
フランツ・ヨーゼフ皇帝と
エリーザベト皇妃を演じた
カールハインツ・ベームと
ロミー・シュナイダーも、その役で一躍スターになり、長年そのイメージから抜け出そうと苦闘したのです。
三部作の監督は、2人に巨大な十字架を負わせた責任者と言わざるを得ませんが、他方三部作は、今も愛好されているようです。
以前まだテレビを持っていたころ、三部作がレトロ放送されて、一応、後学のために見ましたが、確かに主役2人が必死で逃げ出そうとしたことが良く分かりました。
数あるYouTubeの中から台詞のないのを選びました。たった3分26秒なのに辟易
シシィ映画から幾つかの場面を抜き取ってつなぎ合わせたもので、何でこんな映画が愛好されているのかな?と不思議なほどですが、思い当たるのは、王子さまとお姫さまが出てくる絵本。これは多分、大人のための絵本として人気があるのでしょう
追記
おとぎ話の絵本のように作られた映画ですが、撮影には大変贅沢に、宮廷のオリジナル家具が用いられています。
映画の中のシシィを御覧ください
フランツ・ヨーゼフとエリーザベトの出会いは本当に、三文小説のようなのですが、それにしても、この三部作は滅茶苦茶に歴史を無視しています。
ロミー・シュナイダーは、その後、フランスへ行き数々の名画に出演、とりわけ、後年
ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「
ルードヴィヒ」では、もう2度と演じないと言っていたエリーザベト役を再び引き受け、陰影のある成熟した女エリーザベトを演じています。
カールハインツ・ベームのその後の映画暦は、優れた意欲的作品に取り組んでいるにもかかわらず、ロミー・シュナイダーほど成功していません。
彼の第二の人生が始まったのは1976年、病気療養のためケニアに滞在し、現地の貧困を体験してからです。1981年エチオピアに支援機関「メンシェン・フュア・メンシェン(人間が人間のために)」を設立、第二の人生をアフリカ支援に捧げています。こうして彼は「皇帝」という殻を破って自己解放したと言えるでしょう。
カールハインツ・ベームは2014年5月29日、86才で世を去りました。
支援機関設立30周年のビデオ

今日の蛇足
カールハインツ・ベームの父はオーストリアの名高い指揮者
カール・ベームで、もちろん息子もオーストリア人ですが、生まれが
ダルムシュタットのため、日本語ウィキでは「ドイツ人」となっています。
英語のエリザベスに該当するドイツ語の女性名はエリーザベトなのですが、日本ではエリザベートと表記するのが圧倒的です。エリーザベトの日本語訳がエリザベートなのだ、と考えても良いでしょう。
ロミー・シュナイダーの私生活は決して幸福ではありませんでした。1982年5月29日の突然の死は、自殺と解釈されることが多いのですが、過労(心労)と睡眠薬の多用による心不全だったようです。カールハインツ・ベームが同じ5月29日に世を去ったのも、不思議な偶然の一致です。