ときたま、表紙で買ってしまう本があります。以前紹介したのは「
日々のコヨーテ」でした。
今回の本も、表紙に強力な吸引力があります。その吸引力は、一見「へたれ」に見える仔犬の姿にあります。
タイトルは直訳すれば「飼い主の歳月」ですが、サブタイトルに「行儀の悪い犬を飼う幸せについて」とあるので、内容の魅力が漂ってきます。ドイツ・アマゾンで187のユーザー・コメントがあり、そのうち155が5星で絶賛しています
この仔犬(女の子)はルーナという名前で、今は体重40キロ、体高65センチの熟女です
紹介欄には
家柄:古い乱闘貴族
性格:ギャーッ
母親:シェパード(未婚の母)
父親:さすらいのならず者(素性不明)
などとあります。
著者は本書の中でルーナを、しばしばマダム(子供でない女性への敬称)と呼び、繰り返し「乱闘ねずみKrawallmaus」と呼んでいます。ジュッセルドルフ郊外に住む5人家族とともに幸せな歳月を送っているので、基本的なしつけは十分で家庭的な気立ての良い犬さんに違いありません。しかし極めてハイテンションの犬さんで、毎日、著者との散歩のたびに色々騒動が起こるようです。
本文は、まるで文章で描かれた漫画のようで、ずっと笑いっぱなし
ドイツ語だけですが、
日本アマゾンでも扱っているようです。
前書きの「この本の利用法」が愉快です。
急ぎの読者へ:どんどん拾い読みしてください。
しつけの参考書を探している方へ:全然参考になりません。慰めがあるだけです。
検事さんへ:現場と事件と人間と犬の類似性は偶然ではなく不可避的なものです。あらゆる人物や犬は、実際とは全く違って描かれているので、ルーナでさえ時々「私たちは本当に存在するのだろうか」と疑っています・・・
犬の皆さんへ:味の良い本ですから、ハムと呼んでも結構です・・・洗濯機の後に隠したり、庭に埋めるのもよいでしょう・・・細かく噛みちぎるのも結構。原料はパルプなので、日頃愛用の木切れと同じような味がします。
もちろん、著者は数々の犬の躾参考書を読み、ネットフォーラムを訪ね歩き、ルーナと一緒に様々な「しつけコース」に参加しています。しかし、著者の思いは次の言葉に集約されていると言えるでしょう。
飼い犬の気持ちを正しく読み取ることが大切だと言われるが、私にはルーナの気持ちを正しく読み取ることができない。逆にルーナは、いつも私の気持ちを正確に読み取っているようだ・・・
どこかの本屋さんでの著者による朗読会の模様
大笑いの声から、内容の愉快さがわかります。こんな面白い本が翻訳されないのは、あるいは、内容が土地柄と密着していたり、ドイツ語でないとジョークにならない部分もあるからかも知れません。
著者のブログ:
Krawallmaus(ドイツ語)