
新春恒例の宮中行事である「歌会始の儀」が13日、皇居・宮殿であり、天皇、皇后両陛下や皇族方が詠まれた歌が披露された。今年の題は「野」で、一般応募の2万205首から入選した10人の歌も詠み上げられた。
天皇陛下は、栃木・那須の御用邸に滞在中、「邯鄲(かんたん)」という鈴虫に似た昆虫の美しい鳴き声を聴こうと皇后さまたちと外に出た1999年9月の情景を詠んだ。皇后さまは、都心にありながら自然豊かな皇居・御所での暮らしを感慨深く振り返り、歌にした。
皇太子さまは、山梨県の笠取山の水源林で見た水の流れの行方に思いをはせ、雅子さまは長女愛子さまに草花の名前を教えながらご家族3人で那須を散策した喜びを歌にした。【山田奈緒】
天皇陛下
邯鄲(かんたん)の鳴く音(ね)聞かむと那須の野に集(つど)ひし夜(よる)をなつかしみ思ふ
皇后さま
土筆(つくし)摘み野蒜(のびる)を引きてさながらに野にあるごとくここに住み来(こ)し
皇太子さま
岩かげにしたたり落つる山の水大河となりて野を流れゆく
皇太子妃雅子さま
那須の野を親子三人(みたり)で歩みつつ吾子(あこ)に教(をし)ふる秋の花の名
秋篠宮さま
山腹(さんぷく)の野に放たれし野鶏(やけい)らは新たな暮らしを求め飛び行く
秋篠宮妃紀子さま
霧の立つ野辺山(のべやま)のあさ高原の野菜畑に人ら勤(いそ)しむ
眞子さま(秋篠宮家)
野間馬(のまうま)の小さき姿愛らしく蜜柑(みかん)運びし歴史を思ふ
佳子さま(秋篠宮家)
春の野にしろつめ草を摘みながら友と作りし花の冠
常陸宮妃華子さま
野を越えて山道のぼり見はるかす那須野ヶ原に霞たなびく
入選者(年齢順)
岐阜県 政井繁之さん(81)
如月(きさらぎ)の日はかげりつつ吹雪く野に山中(さんちゆう)和紙の楮(かうぞ)をさらす
東京都 上田国博さん(81)
歩みゆく秋日(あきひ)ゆたけき武蔵野に浅黄(あさぎ)斑蝶(まだら)の旅を見送る
長野県 小松美佐子さん(80)
宇宙より帰る人待つ広野には引力といふ地球のちから
千葉県 斎藤和子さん(71)
筆先に小さな春をひそませてふつくら画(ゑが)く里の野山を
東京都 平田恭信さん(68)
手術野(しゆじゆつや)をおほふ布地は碧(あを)み帯び無菌操作の舞台整ふ
東京都 西出和代さん(64)
父が十野菜の名前言へるまで医師はカルテを書く手とめたり
仙台市 角田正雄さん(62)
積み上げし瓦礫の丘に草むして一雨ごとに野に還りゆく
新潟市 山本英吏子さん(42)
友の手をとりてマニキュア塗る時に越後平野に降る雪静か
東京都 鴨下彩さん(17)
野原ならまつすぐ走つてゆけるのに満員電車で見つけた背中
新潟市 杉本陽香里さん(17)
夏野菜今しか出せない色がある僕には出せない茄子の紫
召人の歌
久保田淳さん
葦茂る野に咲きのぼる沢(さは)桔梗(ぎきやう)冴えたる碧(あを)に今年も逢へり
選者の歌
篠弘さん
書くためにすべての資料揃ふるが慣ひとなりしきまじめ野郎
三枝昂之さん
さざなみの関東平野よみがへり水張田(みはりだ)を風わたりゆくなり
永田和宏さん
野に折りて挿されし花よ吾亦紅(われもかう)あの頃われの待たれてありき
今野寿美さん
月夜野(つきよの)の工房に立ちひとの吹くびーどろはいま炎(ひ)にほかならず
内藤明さん
放たれて朝(あした)遥けき野を駆けるふるさと持たぬわが内の馬
佳作者(年齢順、敬称略)
秋田県、浦部昭二(89)▽宮崎市、赤崎敏子(86)▽和歌山県、山田千代子(82)▽青森県、三戸源治(77)▽山口県、吉国建(75)▽静岡県、後藤悦良(73)▽京都府、高橋かつみ(71)▽群馬県、岸和夫(71)▽大分市、長野幸一(71)▽愛知県、家田操(69)▽茨城県、岩熊啓子(67)▽新潟市、相沢初美(67)▽埼玉県、橋本久子(67)▽甲府市、入倉久美子(66)▽香川県、上久保忠彦(65)▽金沢市、北西佐和子(64)▽岐阜県、江尻恵子(63)▽石川県、上農多慶美(59)▽名古屋市、松浦晴男(58)▽東京都、高橋嘉恵(38)▽新潟県、安達亮太(16)
来年の題は「語」
宮内庁は来年の歌会始の募集要領を発表した。題は「語」で、歌に「語」の文字が詠み込まれていれば、「物語」のような熟語でも「語る」のように訓読しても良い。
1人1首で未発表の歌に限る。半紙に毛筆が原則。半紙を横長にして、右半分に題と短歌、左半分に郵便番号、住所、電話番号、氏名(ふりがな付き)、生年月日、性別、職業を書く。病気などのため代筆の場合は、理由と代筆者の氏名、住所を別紙に記入して添える。点字による応募も可能。海外からの応募の場合は、用紙や筆記用具は自由。
宛先は「〒100-8111 宮内庁」とし、封筒に詠進歌と書き添える。9月30日までの消印有効。詳細は宮内庁ホームページでも確認できる。
(http://mainichi.jp/articles/20170114/ddm/012/040/068000c#csidxeec3e174a34ba25a8559d3d56c8bbc0)
もうそろそろかなって思っていたら、昨日でした。

秋篠宮佳子内親王殿下の「春の野にしろつめ草を摘みながら友と作りし花の冠」
入選者の東京都西出さん「父が十野菜の名前言へるまで医師はカルテを書く手とめたり」
東京都鴨下さん「野原ならまつすぐ走つてゆけるのに満員電車で見つけた背中」
新潟市杉本陽さん「夏野菜今しか出せない色がある僕には出せない茄子の紫」
が、目にとまりました。私は素直な歌が好きなようです。

来年こそと思う。「野」は見たときからダメと思ったけど、「語」なら、、、挑戦してみましょうか、、。
できるかなぁ。

3890号