このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
公休の私は、いつものように喫茶店アルファヴィルへ手伝いに来ていた。
市主催の女性向け起業家セミナーを受講したという同じNPO法人なごやかの職員が、カウンターに並んで座った理事長へ感想を話している。
「講師の大学教授が言うには、女性が働くうえで最も大切というか難しいのが男性の理解を得ることです、と。
受講生の女性たちはみなさん、うんうんと頷いてました。
それが、セミナーの終盤、ではどうやって理解を得たらいいのですか？との質問が出たのですが、講師はそれは、、と口ごもるばかりで、うまく答えられなかったんです。」
理事長は思わず失笑した。
アイボリータワーの住人は、風の中に出たことがないからなあ、きみたちを納得させるような答えは持っていなかったか。
理事長は持ってるんですか。
あるよ。彼はこともなげに即答した。
「魅力的な女性になることだね。
セクシーとか、容姿がきれいとか、そういうことじゃないよ、話を聞く者に夢や役割を持たせてくれるかどうか、だと思う。
起業前の、まだ何も持っていないきみの話を聞くうちに、まるでホログラフでも見せられたように、生き生きときみの思い描いている夢が目の前に現れたら、きっと相手は支援したくなるよね。そういう話術を持てば、とても魅力的だ。
あるいは、きみがもし誠実で真摯過ぎて、壁にぶつかったら人の形に穴が開くような女性だったとしたら、相手はそうならないよう力を尽くしたくなるよね。
だから、相手に求めるのではなく、まずは自分の魅力を磨くことだ。ホラ、あのひとのように。」
理事長はクリスマスツリーへ熱心に飾り付けしている、鮮やかなブルーのセーター姿のオーナーを見やった。
