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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説に見る、CO2削減25%宣言

2009年09月09日 | 5大紙社説
民主党・鳩山由紀夫代表が7日、地球環境フォーラムで「温室効果ガスを、2020年までに、90年比25%削減する」と、内外に公言した。
これに対して5大紙は9日までに、賛否両論・期待と不安を社説で論評した。
概要は次のとおりである。

■タイトル
★肯定派
・朝日新聞:「25%削減」―実現へ説得力ある道筋を
・毎日新聞:25%削減目標 米中動かす戦略も大事
★否定派
・産経新聞:25%減表明 どう実現するかの説明を
・読売新聞:CO2削減目標 25%のハードルは高過ぎる
★中間派
・日本経済新聞:低炭素社会への積極策で経済成長を

■肯定的主張
★朝日:温暖化対策で、日本は変わる。そんな確かな予感を世界に抱かせる次期首相のメッセージである。こうした方針は欧州諸国と足並みをそろえるものであり、先進国が結束して高い目標に取り組むことも促すだろう。慎重論が根強い議会を説得しているオバマ米大統領にとっても、追い風になるのではないか。
★日経:92年に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)が採択されて以来続いている温暖化の国際交渉で、日本の政治家の言動に、これだけ注目が集まったのは初めてだろう。
★毎日:これまでの政府の対応には、日本の未来社会をどういうものにするのかのビジョンが欠けていた。民主党は低炭素社会のビジョンを示すことが肝心だ。それを国民が共有することによって、「25%減」のコストを、未来への投資と受け止めることができるのだ。

■懐疑的主張
★朝日:重ねて強調したいのは、日本にとって「90年比25%減」という目標はそう簡単に実現できるものではないことだ。産業界からの反発は必至だ。様々な負担増が予想されるなか、国民からの異論もあろう。
★産経:国民は民主党がどのようにして、これだけの削減を実現しようとしているのか知らされていない。そもそも25%のすべてが真水(正味の削減)なのか、それとも排出量取引などの経済手法を併用するのかさえ説明されていないではないか。
国内産業界の負担は計り知れないものがある。環境と経済の両立を目指すにしても景気回復の出はなをくじかれてはたまらない。
★日経:海外からの賛辞の一方で、国内では産業界の一部がこの数字に強い懸念を表明している。省エネが進んだ日本では、排出削減の過大な目標は、産業の活力をそぎ、暮らしを圧迫するという主張である。
この内外のギャップを埋めなければ、新政権の環境政策・環境外交は成功しない。
★読売:それにしても、「90年比25%減」は妥当なのか。今後、国内議論が活発化するだろう。05年比に直すと30%減の削減率に当たり、米国の14%減、欧州連合(EU)の13%減より大幅に高い。
高い削減目標より、現実的な施策で世界の排出削減に貢献する。それが日本がなすべきことだ。

■矛盾の改善指摘
★朝日:ガソリン税などの暫定税率廃止や高速道路の無料化など、排出削減に逆行しかねない政策の賢い見直しも忘れないでもらいたい。
★産経:日本が突出して高い削減率を示すことにどういう意味があるのだろうか。25%削減で、国民の生活と国の経済が疲弊しても世界全体では1%減に薄まってしまう。なおかつ、努力をしない国が経済的に潤うという不条理な状況さえ生まれかねない。

■鳩山予定政権への注文
★朝日:どのようにこの目標を達成していくのか、新政権は国内排出量取引市場や地球温暖化対策税などの具体策を早急に詰める必要がある。そのうえでロードマップをつくり、ひとつずつ着実に実行していくべきだ。
★産経:地球温暖化問題は「環境冷戦」の側面すら持っている。各国の国益がかかった厳しい交渉なのである。理想を現実の鏡に照らして物事を進めるのが政治ではないか。「友愛精神」だけでは通用しない世界である。日本が重い削減義務を背負い込んだ京都議定書の二の舞いだけは避けたい。
★日経:日本政府が25%減を目標として掲げるならば、そうした中印の姿勢に強く変更を迫る有力な根拠となる。鳩山代表が何度も条件を付けたように、米中印を含めて主要排出国がすべて参加する枠組みが、25%削減の大前提である。数字の独り歩きは厳に戒めなければならない。
★毎日:日本だけが高い目標を設定しても地球規模の温暖化防止が実現できないことも確かだ。講演で鳩山代表は、日本の国際社会への約束の前提として、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」を挙げた。
 世界最大の排出国である米国と中国はもちろん、インド、ブラジルなどの新興国も削減しない限り、気候の安定化は望めない。日本の積極的姿勢を全員参加の呼び水にできるよう、民主党は策を練ってほしい。

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