ロック探偵のMY GENERATION

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Scorpions - Wind Of Change

2020-07-26 19:36:16 | 音楽批評


ひさびさに音楽記事です。

音楽ジャンルでは、前回UFOについて書きました。その関連アーティストということで、今回はスコーピオンズについて書こうと思います。

スコーピオンズは、マイケル・シェンカーの兄ルドルフ・シェンカーの率いるバンドです。
マイケルも、ごく一時期ながら関与していたことがあります。

UFOはブリティッシュ・ハードロックですが、シェンカー兄弟はドイツの出身。スコーピオンズも、ドイツをホームとするバンドです。1965年結成と歴史が古く、ジャーマンロックの始祖とも目されているといいます。

スコーピオンズといえば、『ヴァージン・キラー』の、あの物議をかもすジャケ写が思い出されます。
日本でも、今ではもう犯罪になるレベルなので別のジャケ写に差し替えられていますが……まあ、時代ということでしょう。アメリカなんかだと発売当初からかなり問題視されてたそうですが、そういう挑発的な姿勢も、あの当時のメタルバンドならではだったんじゃないでしょうか。


恒例の3DCG。
スコーピオンズということで、サソリです。サソリ自体はフリー素材で、若干手抜きですが……


さて、そんなスコーピオンズですが、最近、彼らにちなんでクモに名前がつけられるということがありました。

この新種を発見したのは、ブラジルのブタンタン研究所というところのクリスティーナ・ランスという研究員。彼女はメタル好きで、発見した4種のクモにメタル系バンドにちなんだ名前をつけました。
そのなかに、デフ・レパード、アイアン・メイデン、アングラと並んで、スコーピオンズも入っていたのです。

もっとも、バンド名ではなく、それぞれのバンド内のメンバーの名前をとっています。
スコーピオンズからは、クラウス・マイネ(Vo)の名をとって、「エクストローディナリアス・クラウスマイネイ」と名付けられました。

いやクモじゃなくてサソリじゃん、という野暮なツッコミはやめておきましょう。

以前、海底生物にメタリカにちなんだ名前がつけられたという話を書きましたが……それと同じ話です。つまりは、スコーピオンズもそれだけの存在とみなされているということでしょう。


ここで、本記事のタイトルとしたWind of Change という歌を紹介しておきましょう。

Scorpions - Wind Of Change (Official Music Video)

旧ソ連のグラスノスチを歌った歌です。

冒頭スコーピオンズはドイツのバンドだといいましたが……厳密にいえば、1965年当時ドイツは東西に分断されていて、その西ドイツ側の出身ということになります。分断国家においては、他国に比べて冷戦構造が肌身に感じられていたことでしょう。

その冷戦末期の80年代、ソ連のゴルバチョフが、一連の改革に着手します。

ペレストロイカ、グラスノスチ……冷戦が終結にむかいつつあった時代。ドイツ分断の象徴である“ベルリンの壁”の崩壊も、間近に迫っていました。

そんななか、スコーピオンズの面々はモスクワを訪問。
そのときの体験をもとにしたのが、Wind of Change です。

  モスクワ川をたどってゴーリキー公園へ
  変化の風に耳を傾けながら
  八月の夏の夜
  行き過ぎる兵士たち
  変化の風に耳を傾けながら
  
  世界は近づきつつある
  考えたことがあるかい
  僕らがまるで兄弟のようになれるなんて
  未来がそこらにあふれているのを感じる
  変化の風が吹いているんだ

  栄光の夜の 魔法の瞬間につれていってくれ
  明日の子どもたちが僕らと夢をわかちあう場所へ

  変化の風が
  まっすぐに吹き付けてくる
  平和のために自由の鐘を鳴らす
  嵐のように
  きみのバラライカに歌わせてくれ
  僕のギターが語りたがっていることを

西側から流れてくるロックが東側の若者たちに自由の空気を感じさせた、ということがよくいわれます。ロックの力が東西の壁を壊した……とまではいいませんが、いくらかでもそういう力にはなったんじゃないでしょうか。
ともあれ、冷戦やその終結を題材にしたアーティストは少なくありません。
スコーピオンズに関していえば、冷戦終結の希望を歌ったこの歌は、バンドにとって最大のヒットとなりました。また、ドイツの音楽史上もっとも売れた曲でもあるそうです。

冷戦終結後の世界史を考えれば、 Wind of Change の歌詞はいくらか楽観的にすぎるかもしれません。

しかし、世界中に“壁”が作られつつあるこの現代にこそ、その壁を超える“変化の風”が必要なんじゃないでしょうか。


  



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