ロック探偵のMY GENERATION

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LOVE JETS「宇宙大シャッフル」

2018-08-29 13:20:47 | 音楽批評
先日、さくらももこさんの訃報にかんする記事で、忌野清志郎との共作曲「宇宙大シャッフル」に言及しました。

せっかくなので、今回は、音楽批評記事としてその「宇宙大シャッフル」について書こうと思います。

歌っているのは、LOVE JETS。

清志郎はいろんなバンドやユニットをやっていて、そのいくつかをこのブログでも紹介してきましたが、LOVE JETSもその一つです。
“宇宙からやってきた謎の三人組”という設定があるそうですが、声を聞けば清志郎だというのは誰でもわかるので、タイマーズが覆面バンドというのと同じぐらい有名無実です。

「宇宙大シャッフル」は『ちびまる子ちゃん』のエンディングに使われていたんですが、これをアニメの曲に使うというのがすごいですね。


  ぼくらが見てた夢は 流線型にシルバーの
  カッコ良すぎる未来 宇宙旅行に行こうぜ
  月にだって住めるぜ


という未来への希望から歌は始まりますが、そこからは次のような歌詞が続きます。


  ブッ壊れたビルを 月が見てるよ
  爆破された街で ネコがないてる
  何やってんだ人類 どうしたんだ未来

  死んだママの横で ボクが笑うよ
  逃げられない闇を ハトが飛んでく
  ふざけんなよ人類 遅すぎるぞ未来


2003年に発表されたこの曲には、2001年の同時多発テロと、そこから戦争に突き進んでいく世界の残響があります。詞を書いたのはさくらももこさんなわけですが、同じ頃にキヨシローが発表したアルバム『GOD』のモチーフに通ずるところがあるように思えます。


  血の流れた砂を 風が運ぶよ
  引き裂かれた場所で 花が揺れてる
  どうなってんだ人類 話が違うぞ未来

  21世紀なら なんでも出来るはずだろ?
  アースエナジー 炸裂させるんだ
  銀河系を巻き込もうぜ
  天才メガネ君も 巻き込もうぜ
  宇宙大大大大シャッフル


夢のような未来図と対極にある悲しい現実……
それはさらに、キヨシローが武道館の完全復活祭でみせたあの「愛しあってるかい?」にもつながっているんじゃないでしょうか。
せっかくなので、その伝説的なMCを文字おこししておきましょう


  ここには平和がいっぱいだ
  でも 世界じゅうを見渡すと 戦争や紛争もいっぱいだ
  テロや 飢えた子供たちもいっぱいだ
  どうしていつまでも みんな仲良くできないんだろう  

  OK、今日はもうこんなにごきげんな夜なんで
  みんなに聞きたいことがあるんだ
  みんなに聞きたいことがあるんだ

  最近世の中は殺伐としてるけど
  21世紀になってもうずいぶん経つけど
  全然世界は平和になんないけど
  今夜みんなに聞きたいことがあるんだ
  武道館ベイベー 聞きたいことがあるんだ 
  ――愛しあってるかい?


忌野清志郎ファンならご存じのとおり「愛しあってるかい」と問いかけてオーディエンスが「イエー」と答えるというのはキヨシローの定番MCですが、これだけの尺で伴奏つきでやるのはたぶんかなり珍しい例だと思います。
厚見玲衣さんのキーボードの音色がすばらしく、完全復活祭にふさわしい「愛しあってるかい」でした。
キヨシローが60年代ラブ&ピースを一つのルーツに持っているというのは以前も書きましたが、RC活動休止ごろから、キヨシローはだんだんとそのルーツに回帰していっているように思えます。「宇宙大シャッフル」も、その一環かもしれません。まあ、歌詞を書いたのはさくらももこさんなわけなんで、もしかしたら、この共作曲がキヨシローのその後に影響を与えてるということなのか……だとしたら、さくらももこという人はあらためてすごいですね。


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