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ワクチン由来のポリオウイルス(VDPV)の報告数、VDPVの分類

2015-06-20 | Vaccine トピックス

Update on Vaccine-Derived Polioviruses — Worldwide, January 2014–March 2015
June 19, 2015 / 64(23);640-646

既に分かっていること
遺伝子学的に相違のあるワクチン由来のポリオウイルス[vaccine-derived polioviruses (VDPVs)]がポリオウイルス調査で同定されており、生物学的な性質は野生株のポリオウイルスと区別がつかない。
ポリオワクチンの接種率を向上させることでVDPVが広がることは阻止できるが、長期的な免疫機能低下に関連したVDPV感染のリスクは経口ポリオ生ワクチン(OPV)を使用する限り避けられない。

今回の報告における追加事項
VDPVの流行は2014年半ば以降に落ち着いている。
最近のアフガニスタン、チャド、ソマリア、イエメンでのVDPVの流行は明らかに止まっており、ナイジェリアでの大きな流行も止まりつつある。
主なVDPVのウイルスは2014年6月にパキスタンで報告されたのが最後であるが、2015年になってもVDPVの新たな出現による小規模な流行は報告されている。
新たにマダガスカルや南スーダンで小規模の流行の可能性が示唆されている。
9つの新たな免疫不全によるVDPV感染が7つの国で報告され、急性弛緩性麻痺症例やB細胞免疫不全の患者におけるVDPVの積極的調査から分離されている。
2006年以降、97%以上のVDPVがポリオウイルス2型となっている。

公衆衛生施策に与える影響
 VDPVの流行はOPVの高い接種率によって予防可能である。
一方で、OPV使用を止めれば免疫不全者での感染も予防される。
WHOは世界的に持続するVDPV type2に対して、下記のような新たな政策により対応することとしている。

  1. 3価OPVの使用を中止し、ウイルスの1型と3型を含む2価OPVに2016年4月から移行する
  2. 2型のウイルスの免疫を獲得するために、全世界で1回以上のIPV接種を導入する(2015年度中の予定)
  3. 流行に備えて単価のOPV(特に2型)を備蓄する
  4. 急性麻痺、ポリオウイルスの調査を確立し、流行に備える
  5. 免疫不全者で長期化するVDPV感染に対する抗ウイルス薬の開発を推進する

FIGURE 2. Circulating vaccine-derived poliovirus (cVDPV) cases detected worldwide, by serotype and year, January 2000–March 2015*

 

* Data through March 2015, as available by June 15, 2015.
Alternate Text: The figure above is a bar chart showing the number of circulating vaccine-derived poliovirus cases detected worldwide, by serotype and year, during January 2000-March 2015.

 

VDPVの分類関連の記事
Update on Vaccine-Derived Polioviruses --- Worldwide, July 2009--March 2011
July 1, 2011 / 60(25);846-850

VDPVは、ヒトに麻痺性ポリオを引き起こし、持続的に循環する能力を持っている。
VDPVは生物学的にWPVに類似し、長期間複製する能力があり、伝播する能力をもつ遺伝学的特性があるという点で、ワクチン関連性ポリオウイルス(VRPV)の大半とは、異なる。
ポリオウイルスは毎年約1%づつ遺伝子が進化しているため、対応するOPV株と1%以上核酸の塩基配列(通常は、主要ウイルス表面抗原[VP1]をコードするゲノム領域をシークエンシングすることにより、判定します)が異なっているVRPVは、OPVを一回投与された1人もしくは複数の人の体内で少なくとも1年以上の間複製され続けてきたと推定される。OPV接種者においてワクチン株の複製が4-6週間続くのが通常の期間である。

ポリオウイルスの血清型はType1,2および3が存在する。
体内から分離されたポリオウイルスは、対応するOPV株とVP1領域を比較したときの相違の度合いを基準に下記の3つのカテゴリーに分類される。
1) VRPV(type1および3において1%未満の相違、type2において0.6%未満の相違) 
2) VDPV(対応するOPVと比較してtype1およびtype3において1%を超える相違、type2において0.6%を超える相違) 
3) WPV(他のいかなるワクチン株から由来したと言える遺伝学的証拠がない)

VDPVはさらに下記のように分類される。
1) 地域社会においてヒト―ヒト伝播を起こしたという証拠が存在するcVDPV 
2) 免疫不全に関連するVDPV(iVDPV)。VDPV感染が長引いている原発性の免疫不全患者から分離されたもの。
3) 不明確なVDPV(aVDPV)。免疫不全かどうかが明らかではない者から臨床現場で分離されたものか、汚水から分離された発生源が明らかではないもの

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