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HIV/AIDS and the road to Rome

2011-07-20 | HIV
HIV/AIDS and the road to Rome
Lancet No. 9787 2011/7/16

7月17-20日にかけて第6回AIDS学会カンファレンスがローマで開催されにあたっての特集号。

無作為化第三相試験2つ(original articles)
新しいARTによる治療改善と治療選択の拡大に関する最新の情報が、カンファレンスにおける注目点となるだろう。
治療歴のない患者に新しい非核酸系逆転写酵素阻害剤であるrilpivirineを組み合わせたレジメンがefavirenzと同様に安全で効果があるため第一選択薬として推奨されるとする論文。
rilpivirineはウイルス学的失敗率が高いもののefavirenzよりも副反応がずっと少ないため第一選択薬としての価値が高い。


南アフリカのKwazulu Natal地域における人口動態学調査によって、同時多数のパートナーではなく、人生の平均パートナー数がHIV感染リスクの増加と関連していることを示した報告。
→ 結果を受けて、同時多数のパートナーが流行地域で問題とならということにはならない、ハイリスク集団で感染が増加すると初期には感染の原因となるかもしれない。
→ 同時多数のパートナーを持つ。同時であろうがなかろうが、パートナーの数を減らすことが重要であるというシンプルで明瞭なメッセージを強調すべき。


抗ウイルス薬を用いたHIVの予防も注目を集めていて、カンファレンスの焦点になる。
実際に、治療中の患者は感染が起こりにくく、抗ウイルス薬を使用している人が増えることによる予防の利点が指摘されている。
カンファレンスではCD4に関わらず、HIVの性感染を予防するため別のタイプのウイルス感染のあるパートナーを持つHIV陽性者の治療を推奨するWHOの新たなガイドラインが発表され、多くの議論を呼ぶだろう。


予防は、実際の診療で遂行されることが重要であることはこれまでも強調されてきた。
なかなか進まない予防対策のひとつに母子感染予防があるが、WHOのガイドラインで母子感染予防にCD4数の評価が必要であることが、小児感染の排除という目標の障壁となっている。
マラウィはCD4数を測定する施設が不足しているため、全てのHIV陽性の妊婦に生涯に渡って抗ウイルス薬を提供することを決めた。
これらはWorld Reportで詳細に述べられることになるが、このような大胆な公的政策を取ったマラウィは称賛されるべきである。


最も大きな問題は経済的な制限がある中で、治療提供を拡大していくことである。
WHOとUNAIDSが推進するTreatment 2.0は治療レジメンの最適化、診断の簡素化、治療が必要な人に治療を提供できる分配システム等のHIVプログラムの刷新と効率化に取り組んでいる。
抗ウイルス薬を用いた予防がHIV感染の制御に繋がるだろう。
科学的な実証が差別や偏見等の障壁のある現実に結びつくことが、このような取り組みが実を結ぶ。
平等と人権の精神が全てのHIV/AIDSプログラムの根底に必要となる。


http://download.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140673611611069.pdf

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